「タックスヘイブン」という言葉を、日本の税法は使っていません。条文が使うのは「外国関係会社」と「租税負担割合」です。
税率の低い国に会社を置くこと自体を禁じる規定はありません。条文が見るのは、その会社が誰に支配されていて、実際にどれだけ税を負担しているかです。
条文が使う語
租税特別措置法第66条の6第2項第1号が「外国関係会社」を定義しています。
一 外国関係会社 次に掲げる外国法人をいう。
イ 居住者及び内国法人並びに特殊関係非居住者……及びロに掲げる外国法人(イにおいて「居住者等株主等」という。)の外国法人に係る次に掲げる割合のいずれかが百分の五十を超える場合における当該外国法人
続く(1)〜(3)が、株式等の保有割合、議決権の保有割合、請求権の保有割合を挙げています。直接保有と間接保有を合計して判定します。
50%超だけではありません。同号ロは「居住者又は内国法人との間に実質支配関係がある外国法人」を挙げています。持分がなくても外国関係会社になり得ます。
同項は、この外国関係会社をさらに特定外国関係会社(2号)、対象外国関係会社(3号)、部分対象外国関係会社(6号)などに分けています。
誰に合算されるか ── 10%
外国関係会社かどうかと、誰の所得に合算するかは別の基準です。同条第1項第1号は「内国法人の外国関係会社に係る次に掲げる割合のいずれかが百分の十以上である場合における当該内国法人」を挙げています。
50%超は会社の側の基準、10%以上は株主の側の基準です。混同しやすいところです。
租税負担割合 ── 2つの水準
租税特別措置法第66条の6第7項が、合算課税を適用しない場合を定めています。
一 特定外国関係会社 特定外国関係会社の各事業年度の租税負担割合(外国関係会社の各事業年度の所得に対して課される租税の額の当該所得の金額に対する割合として政令で定めるところにより計算した割合をいう。……)が百分の二十七以上である場合
二 対象外国関係会社 対象外国関係会社の各事業年度の租税負担割合が百分の二十以上である場合
| 区分 | 合算されない租税負担割合 |
|---|---|
| 特定外国関係会社(2項2号イ〜ニ。ペーパー・カンパニー、事実上のキャッシュ・ボックス、財務大臣が指定する国・地域に本店を有する会社) | 27%以上 |
| 対象外国関係会社(2項3号) | 20%以上 |
同じ会社でも、どちらの区分に入るかで基準が違います。
そして、この2つを外れても終わりではありません。同条第8項・第10項が、部分対象外国関係会社(2項6号)について、配当・利子・使用料などの受動的所得だけを合算する仕組みを置いています。その適用除外は同条第12項で、①租税負担割合20%以上、②部分適用対象金額等が2,000万円以下、③所得に占める割合が5%以下、のいずれかに該当する場合です。
見落とすと事故になる点 ── 租税負担割合は国名では決まらない
租税負担割合は、その会社の各事業年度の実績で計算します。「政令で定めるところにより計算した割合」と条文が書いているとおりです(租税特別措置法施行令39条の17の2)。所得の金額がない場合や欠損となる場合の扱いは、同条第2項第5号に別に定められています。
法定税率が20%を超える国に置いた会社でも、優遇措置や損金算入の違いで、その事業年度の租税負担割合が20%を下回ることがあります。「タックスヘイブンではない国だから大丈夫」という判断は、条文の構造と合いません。
ただし例外もあります。2項2号ニは、租税に関する情報の交換への協力が著しく不十分な国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域に本店等を有する外国関係会社を、それだけで特定外国関係会社としています。
合算する所得がなくても、申告書への添付義務が生じる
同条第14項。
第一項各号に掲げる内国法人は、当該内国法人に係る次に掲げる外国関係会社の各事業年度の貸借対照表及び損益計算書その他の財務省令で定める書類を当該各事業年度終了の日の翌日から四月を経過する日を含む各事業年度の……確定申告書に添付しなければならない。
対象は、租税負担割合が20%未満の部分対象外国関係会社(一定のものを除く)・対象外国関係会社と、27%未満の特定外国関係会社です。
合算する所得が出ていなくても、書類の添付義務は別に生じます。この義務も、名宛人は第1項各号の内国法人です。
実務で迷いが生じるところ
- 50%超は誰の持分を合計するのか。「特殊関係非居住者」の範囲と、間接保有割合の計算方法が政令に定められています
- 持分がなくても対象になるのか。「実質支配関係」という概念があります(2項1号ロ)
- 租税負担割合はどう計算するのか。分母・分子ともに「政令で定めるところにより」です
- 特定外国関係会社と対象外国関係会社は、どこで分かれるのか。2項2号・3号の要件を見ることになります
- 実態のある事業会社なら合算されないのか。2項3号イ〜ハの要件(いわゆる経済活動基準)を満たしても、部分合算課税が残ります
- 個人が海外に会社を持っている場合はどうか。居住者にも同種の制度があります
- 合算された後にその会社から配当を受けたらどうなるか。二重課税の調整規定があります
海外に会社を作る前と、作った後では、打てる手が変わります。設立の設計段階でご相談ください。
根拠条文
- 租税特別措置法第66条の6(内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例。条文に見出しはありません)
- 租税特別措置法第66条の7(合算された所得に係る外国税額の控除等。条文に見出しはありません)
- 租税特別措置法第40条の4(居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例。条文に見出しはありません)
- 租税特別措置法第66条の8(合算後に受ける配当等の調整。条文に見出しはありません)
- 租税特別措置法施行令第39条の17の2(外国関係会社に係る租税負担割合の計算)
- 法人税法第23条の2(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)
個別の判定には持分関係と各事業年度の実績の確認が必要です。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










