合算される金額の名前が適用対象金額です。現地の決算書の利益とは、別物です。
条文の骨格は2段
租税特別措置法第66条の6第2項第4号。
適用対象金額 特定外国関係会社又は対象外国関係会社の各事業年度の決算に基づく所得の金額につき、法人税法及びこの法律による各事業年度の所得の金額の計算に準ずるものとして政令で定める基準により計算した金額(以下この号において「基準所得金額」という。)を基礎として、政令で定めるところにより、当該各事業年度開始の日前七年以内に開始した各事業年度において生じた欠損の金額及び当該基準所得金額に係る税額に関する調整を加えた金額をいう。
2段です。
1. 基準所得金額を出す(政令で定める基準による計算)
2. そこから欠損金と税額の調整をして、適用対象金額にします
第1段 ── 基準所得金額。まず計算方式を2つから選ぶ
基準所得金額の計算には2つの方式があります。
| 方式 | 条文 | 出発点 |
|---|---|---|
| 本邦法令方式 | 措令39条の15第1項 | 決算に基づく所得を、日本の法人税法・措置法の例に準じて計算し直す |
| 現地法令方式 | 同第2項(選択) | 決算に基づく所得を、本店所在地国の法人所得税に関する法令の規定により計算する |
2項はこう書き出します。
法第66条の6第1項各号に掲げる内国法人は、前項の規定にかかわらず、……当該外国関係会社の本店所在地国の法人所得税……に関する法令(当該法人所得税に関する法令が二以上ある場合には、そのうち主たる法人所得税に関する法令)の規定(企業集団等所得課税規定を除く。……)により計算した所得の金額……をもつて……政令で定める基準により計算した金額とすることができる。
「することができる」です。選択です。そして一度選んだ方式を変えるには、事前の承認が要ります。
10 ……第一項の規定の適用を受けた内国法人が……第二項の規定の適用を受けようとする場合又は……第二項の規定の適用を受けた内国法人が……第一項の規定の適用を受けようとする場合には、あらかじめ納税地の所轄税務署長の承認を受けなければならない。
「あらかじめ」です。申告のときに変えることはできません。
本稿は1項(本邦法令方式)を前提に説明します。
本邦法令方式の計算(措令39条の15第1項)
条文の式は「(1号+2号)−(3号+4号+5号)」です。柱書にはもう1つの式が括弧書きで置かれており、1号が欠損の金額である場合は「2号−(欠損の金額+3号+4号+5号)」と読みます(結果は同じ引き算です)。
| 号 | 中身 | 扱い |
|---|---|---|
| 1号 | 決算に基づく所得の金額を、日本の法人税法・措置法の例に準じて計算し直した所得金額(又は欠損金額) | 加算の起点 |
| 2号 | 当該各事業年度において納付する法人所得税の額 | 加算 |
| 3号 | 当該各事業年度において還付を受ける法人所得税の額 | 控除 |
| 4号 | 子会社から受ける配当等の額 | 控除 |
| 5号 | 一定の部分対象外国関係会社に係る調整額 | 控除 |
1号がこの制度の中心です。現地の決算書をそのまま使うのではなく、日本の法人税法の例に準じて計算し直します。ただし条文は多数の条を除外しており、たとえば法人税法23条(受取配当益金不算入)、23条の2(外国子会社配当益金不算入)、57条(欠損金の繰越し)などは適用しません。欠損金の繰越しは、次の第2段で別に扱うからです。
移転価格の調整も入ります。1号の括弧書きは、その外国関係会社と日本の親法人との取引に措法66条の4第1項(移転価格税制)の適用がある場合、その取引が独立企業間価格で行われたものとして計算するとしています。
そして、式はここで終わりません。同条3項が、さらに控除対象配当等の額を差し引きます。
……外国関係会社の各事業年度につき控除対象配当等の額……がある場合には、……政令で定める基準により計算した金額は、第一項又は前項の規定にかかわらず、これらの規定により計算した金額から当該控除対象配当等の額を控除した残額とする。
1項4号の「子会社」に当たらない、他の外国関係会社からの配当を拾う規定です。海外子会社が何層にもなっている場合、同じ所得が上と下で二重に合算されるのを防ぎます。「かかわらず」で始まり「とする」で終わる、義務的な規定です。
4号の「子会社」は25%・6か月
4号の括弧書きは、控除される配当等の額の相手方(子会社)をこう定めます。
- 発行済株式等に占める保有割合、又は、議決権のある株式等に占める保有割合のいずれかが25%以上(化石燃料採取業に係るイ・ロの要件を満たす外国法人は10%以上)
- かつ、その状態が配当等の支払義務が確定する日以前6か月以上継続していること(その日以前6か月以内に設立された法人は、設立の日から)
「議決権の数の割合」ではありません。条文は「発行済株式等のうちの議決権のある株式等の数若しくは金額のうちに……占める割合」と書いています。なお、みなし配当(法人税法24条1項の事由)に係る一定の配当等の額については、基準日がその前日になります。
そして重要な除外があります。「その受ける配当等の額の全部又は一部が当該子会社の本店所在地国の法令において当該子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている配当等の額に該当する場合におけるその受ける配当等の額を除く」。支払側で損金算入される配当は、控除できません。
この控除には手続要件があります。同条9項は、1項4号(及び2項17号)による控除について、当該各事業年度に係る確定申告書に当該金額の計算に関する明細書の添付がある場合に限り控除するとしています。ただし書があり、添付がなかったことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において明細書の提出があったときは、この限りでないとされています。
なお同条8項も、1項1号の計算で一定の損金算入をするには明細書の添付を要するとしています(同じくただし書あり)。列挙されている規定に限られます。法人税法33条(資産の評価損)、42条〜52条(圧縮記帳・引当金等)、措法43条・45条の2(特別償却等)、57条の5・57条の6・57条の8(各種準備金)、65条の7〜65条の9の一部などです。毎期の減価償却(法人税法31条)は列挙されていません。
第2段 ── 欠損金と税額の調整(同5項)
外国関係会社の各事業年度の基準所得金額から次に掲げる金額の合計額を控除した残額とする。
一 当該各事業年度開始の日前七年以内に開始した事業年度(……を除く。)において生じた欠損金額(この項の規定により当該各事業年度前の事業年度において控除されたものを除く。)の合計額に相当する金額
二 ……当該各事業年度において納付をすることとなる法人所得税の額(……当該各事業年度において還付を受けることとなる法人所得税の額がある場合には当該還付を受けることとなる法人所得税の額……を控除した金額とする。)
1号の7年には除外があります。昭和53年4月1日前に開始した事業年度、外国関係会社に該当しなかった事業年度、そして適用免除(7項各号)に該当する事実があった事業年度は、7年のカウントから除かれます。
「合算されなかった年の赤字は使えない」という設計です。租税負担割合が20%以上で免除されていた年の欠損金は、後で持ってこられません。
2号は、第1段で足した法人所得税を、ここで引き戻す構造です。1項2号で加算し、5項2号で控除します。往復しています。
連結納税・パススルーの国では読み替える
措令39条の15第6項が企業集団等所得課税規定を定義しています。3類型です。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 1号 | 企業集団の所得に課税し、一の外国法人のみが申告書を提出する、本店所在地国の法令(連結納税等) |
| 2号 | 無税国又は所得の全部に課税しない国の外国法人について、企業集団の所得に課税し一の法人のみが申告する、本店所在地国以外の国・地域の法令 |
| 3号 | 外国法人の所得を株主等である者の所得として取り扱う法令(パススルー課税) |
これらの規定がある場合は、それがないものとして個別に計算し直します(個別計算納付法人所得税額・個別計算還付法人所得税額)。米国のLLCやパートナーシップ、連結納税を採る国の子会社では、ここが実務の作業量になります。
合算されるのは適用対象金額そのものではない
最後にもう一段あります。措法66条の6第1項は、適用対象金額に請求権等勘案合算割合を乗じた金額(=課税対象金額)を益金算入するとしています(措令39条の14第1項)。
| 段階 | 名称 |
|---|---|
| 現地の決算書 | 決算に基づく所得の金額 |
| ↓ 日本基準に引き直し+税の加減算 | 基準所得金額 |
| ↓ 7年の欠損金控除+税額調整 | 適用対象金額 |
| ↓ 請求権等勘案合算割合を乗じる | 課税対象金額(これが益金算入される) |
4段あります。どの段階の数字の話をしているかを取り違えると、議論が噛み合いません。
実務で迷いが生じるところ
- 現地の税引後利益がそのまま合算されるのか。されません。4段の計算があります
- 受取配当は合算されるのか。25%・6か月の子会社からのものは1項4号で控除されます。ただし支払側で損金算入されるものは除かれます
- 過去の赤字は使えるか。7年以内、かつ外国関係会社であって適用免除に当たらなかった事業年度のものに限ります
- 現地で連結納税をしています。企業集団等所得課税規定がないものとして個別計算します
- 計算方式は選べるのか。1項(本邦法令方式)と2項(現地法令方式)の選択です。変更には10項の事前承認が要ります
- 明細書を付け忘れた。8項・9項の要件です。いずれもただし書の宥恕があります
- 移転価格の更正を受けた。1号の括弧書きにより、独立企業間価格で計算します
- 持分が100%でなければどうなるか。請求権等勘案合算割合を乗じます
適用対象金額の計算は、現地の決算書と日本の申告書を突き合わせる作業です。海外子会社の合算課税が視野に入っている会社は、現地の決算書・申告書と資本関係図をご用意のうえご相談ください。
根拠条文
- 租税特別措置法第66条の6第1項(課税対象金額の益金算入)、第2項第4号(適用対象金額)、第7項各号(適用免除)
- 租税特別措置法第66条の4第1項(移転価格税制)
- 租税特別措置法施行令第39条の15(適用対象金額の計算)第1項・第2項・第3項・第5項・第6項・第8項・第9項・第10項
- 租税特別措置法施行令第39条の14第1項(請求権等勘案合算割合)
- 法人税法第23条、第23条の2、第57条ほか(措令39条の15第1項1号が適用を除外する規定)
措令39条の15第1項1号が除外する各条の内容、同項5号の調整、第2項各号の内容、控除対象配当等の額を定める同条3項各号と同条4項の用語の細目は本稿では扱っていません。個別の計算には現地の決算書と申告書の確認が必要です。
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










