経済活動基準を全部満たしても、まだ終わりません。受動的所得があれば、その部分だけが合算されます。これが部分合算課税です。
部分対象外国関係会社とは
租税特別措置法第66条の6第2項第6号。
部分対象外国関係会社 第三号イからハまでに掲げる要件の全てに該当する外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除く。)をいう。
経済活動基準を全部満たした会社が、部分対象外国関係会社です。「基準を満たしたから安心」ではなく、満たしたからこそこの箱に入ります。
| 区分 | 経済活動基準 | 合算 |
|---|---|---|
| 特定外国関係会社 | ── | 会社単位(全部) |
| 対象外国関係会社 | いずれかに該当しない | 会社単位(全部) |
| 部分対象外国関係会社 | 全てに該当する | 部分(受動的所得のみ) |
合算されるのは12種類の「特定所得の金額」
措法66条の6第8項が掲げます。号は1号から11号までですが、7号の2があるので実際は12種類です。
| 号 | 特定所得の金額 |
|---|---|
| 1 | 剰余金の配当等の額 |
| 2 | 受取利子等の額 |
| 3 | 有価証券の貸付けによる対価の額 |
| 4 | 有価証券の譲渡に係る対価の額 |
| 5 | デリバティブ取引に係る利益・損失の額 |
| 6 | 外国為替の売買相場の変動に伴って生ずる利益・損失の額 |
| 7 | 1〜6号の金額に係る利益・損失(これらに類するものを含む)を生じさせる資産の運用・保有・譲渡・貸付けその他の行為により生ずる利益・損失(1〜6号に該当するものとヘッジ取引に係るものを除く) |
| 7の2 | 保険の引受マージン(収入保険料−支払再保険料)−(支払保険金−収入再保険金) |
| 8 | 固定資産の貸付けによる対価の額 |
| 9 | 無形資産等の使用料 |
| 10 | 無形資産等の譲渡に係る対価の額 |
| 11 | 異常所得 |
各号に、それぞれ別の除外が付いています。ここが実務の中心です。
主要な除外
1号(配当)── 25%以上の持分からの配当は外れる
条文は、持株割合25%以上であることその他の政令で定める要件に該当する法人から受ける剰余金の配当等の額を除いています。ただし括弧書きで、「当該法人の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額として政令で定めるもの」は除外から外されます。支払側で損金算入される配当は、除外の恩恵を受けません。
なお化石燃料を採取する事業を主たる事業とする一定の外国法人については10%以上です(ロ)。25%で一本化できません。
2号(受取利子)── 3つの除外がある
(その行う事業に係る業務の通常の過程において生ずる預金又は貯金(……)の利子の額、金銭の貸付けを主たる事業とする部分対象外国関係会社(金銭の貸付けを業として行うことにつきその本店所在地国の法令の規定により免許又は登録その他これらに類する処分を受けているものに限る。)でその本店所在地国においてその役員又は使用人がその行う金銭の貸付けの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものが行う金銭の貸付けに係る利子の額その他政令で定める利子の額を除く。)
貸金業の除外には2つの条件が積んであります。現地の免許・登録かつ役員・使用人が業務の全てに従事していること。片方だけでは除外されません。
4号(有価証券の譲渡)── 譲渡直前に25%以上なら外れる
(当該部分対象外国関係会社の有する他の法人の株式等の数又は金額のその発行済株式等の総数又は総額のうちに占める割合が、当該譲渡の直前において、百分の二十五以上である場合における当該他の法人の株式等の譲渡に係る対価の額を除く。)
判定の時点は「譲渡の直前」です。期末や譲渡後ではありません。子会社株式の売却益が常に部分合算される、ということはありません。
5号・6号 ── 事業会社の通常の損益は外れる
6号(為替差損益)の除外が実務では最も効きます。
(その行う事業(政令で定める取引を行う事業を除く。)に係る業務の通常の過程において生ずる利益の額又は損失の額を除く。)
輸出入に伴って通常生じる為替差損益は、そもそも特定所得に入りません。
5号(デリバティブ)の除外は3類型で、いずれも財務省令に委任されています。①法人税法61条の6第1項各号に掲げる損失を減少させるために行ったデリバティブ取引として財務省令で定めるもの(ヘッジ)、②その本店所在地国の法令に準拠して商品先物取引法2条22項各号に掲げる行為に相当する行為を業として行い、役員・使用人が業務の全てに従事している部分対象外国関係会社が行う財務省令で定めるデリバティブ取引、③その他財務省令で定めるデリバティブ取引。「ヘッジなら除かれる」ではなく、財務省令の定めに当たるかで決まります。
8号(固定資産の貸付け)── 3つの除外
- 主としてその本店所在地国において使用に供される固定資産(不動産及び不動産の上に存する権利を除く)の貸付け
- その本店所在地国にある不動産又は不動産の上に存する権利の貸付け
- 本店所在地国において役員又は使用人が固定資産の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の政令要件に該当する会社が行う貸付け
動産は「使用地」、不動産は「所在地」で切り分けられています。1つ目の括弧書きが不動産を除いているのは、2つ目が不動産を拾うためです。
9号・10号(無形資産等)── 自ら行った研究開発の成果は外れる
自ら行った研究開発の成果に係る無形資産等の使用料・譲渡対価は除かれます(その他政令で定めるものも)。買ってきた知財、譲り受けた知財の使用料は、原則として合算対象です。
部分適用対象金額の計算 ── 号によって扱いが違う
措法66条の6第9項。ここが最も間違えやすいところです。
部分対象外国関係会社の各事業年度の同項第一号から第三号まで、第八号、第九号及び第十一号に掲げる金額の合計額と、当該各事業年度の同項第四号から第七号の二まで及び第十号に掲げる金額の合計額(当該合計額が零を下回る場合には、零)を基礎として当該各事業年度開始の日前七年以内に開始した各事業年度において生じた同項第四号から第七号の二まで及び第十号に掲げる金額の合計額が零を下回る部分の金額につき政令で定めるところにより調整を加えた金額とを合計した金額
2つのグループに分かれます。
| グループ | 号 | 扱い |
|---|---|---|
| A | 1号〜3号、8号、9号、11号 | そのまま合計(零下限や繰越調整の定めがない) |
| B | 4号〜7号の2、10号 | 合計額がマイナスなら零。マイナス部分は7年以内の繰越調整の対象 |
AとBは通算できません。譲渡損(Bグループ)が出ても、配当や利子(Aグループ)と相殺されません。BのマイナスはBの中で、7年間繰り越すという設計です。
3つの適用免除
措法66条の6第12項。どれか1つに該当すれば、部分合算は適用されません。
一 各事業年度の租税負担割合が百分の二十以上であること。
二 各事業年度における部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額が二千万円以下であること。
三 各事業年度の決算に基づく所得の金額に相当する金額として政令で定める金額のうちに当該各事業年度における部分適用対象金額……の占める割合が百分の五以下であること。
2号は金額基準(2,000万円以下)、3号は割合基準(5%以下)です。租税負担割合が20%未満でも、この2つで落ちることが多くあります。
そして12項2号・3号に該当すると、申告書への添付義務も外れます(14項1号の括弧書き。「添付不要部分対象外国関係会社」)。ただし15項が保存義務を課しています。添付不要と、書類を作らなくてよいことは別です。
外国金融子会社等は別建て
7号の「外国金融子会社等」(銀行業・第一種金融商品取引業と同種の業務・保険業を行う部分対象外国関係会社で、役員・使用人が業務の全てに従事しているもの等)については、8項ではなく10項・11項が別の計算を定めています。11項は「10項1号の金額」と「10項2号・3号・5号の合計額+4号の調整後の金額」のいずれか多い金額とする構造です。
実務で迷いが生じるところ
- 経済活動基準を全部満たしたのに合算されるのか。満たしたからこそ部分対象外国関係会社です
- 配当は全部合算されるのか。25%以上(化石燃料の一定の法人は10%以上)の持分からのものは除かれます
- グループ内の貸付利子は。貸金業の免許・登録と業務従事の2条件を見ます
- 有価証券の譲渡損は配当と通算できるか。できません。Bグループの中で7年繰越です
- 子会社株式を売却した。譲渡の直前に25%以上を保有していれば4号から除かれます
- 輸出入の為替差損益は合算されるか。6号の括弧書きにより、通常の業務過程で生ずるものは除かれます
- 少額なら免除されるか。2,000万円以下(12項2号)又は5%以下(同3号)です
- 添付不要になったら書類は不要か。15項の保存義務が残ります
部分合算は「基準を満たしたから終わり」ではないところが厄介です。海外子会社に配当・利子・不動産賃料・ロイヤルティがあるなら、金額の集計から始まります。海外子会社の収益構成にご不安があれば、直近期の損益内訳をご用意のうえご相談ください。
根拠条文
- 租税特別措置法第66条の6第2項第6号(部分対象外国関係会社)、第2項第7号(外国金融子会社等)
- 租税特別措置法第66条の6第8項各号(特定所得の金額)、第9項(部分適用対象金額)
- 租税特別措置法第66条の6第10項・第11項(外国金融子会社等に係る計算)
- 租税特別措置法第66条の6第12項各号(部分合算に係る適用免除)
- 租税特別措置法第66条の6第14項第1号(確定申告書への添付)、第15項(保存義務)
各号の除外に係る政令の細目、外国金融子会社等に関する10項・11項の各号の内容、保険業に関する7号の2の細目は本稿では扱っていません。個別の計算には収益の内訳と契約内容の確認が必要です。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










