経済活動基準の2つ目と3つ目です。実体基準(固定施設を持っているか)と管理支配基準(自分で経営しているか)。条文上は1つのロにまとめて書かれています。
条文は1つの号にまとまっている
租税特別措置法第66条の6第2項第3号ロ。
その本店所在地国においてその主たる事業(イ(1)に掲げる外国関係会社にあつては統括業務とし、イ(2)に掲げる外国関係会社にあつては政令で定める経営管理とする。ハにおいて同じ。)を行うに必要と認められる事務所、店舗、工場その他の固定施設を有していること(これらを有していることと同様の状況にあるものとして政令で定める状況にあることを含む。)並びにその本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行つていること(これらを自ら行つていることと同様の状況にあるものとして政令で定める状況にあることを含む。)のいずれにも該当すること。
「並びに」で結ばれ、「いずれにも該当すること」で閉じています。実務では実体基準・管理支配基準と2つに数えますが、条文は1つの要件です。片方だけでは満たしません。
| 実務上の呼び名 | 条文の中身 |
|---|---|
| 実体基準 | 主たる事業を行うに必要と認められる固定施設を有していること |
| 管理支配基準 | その事業の管理、支配及び運営を自ら行つていること |
「主たる事業」が読み替えられる
ロの冒頭には括弧書きがあり、会社の類型によって「主たる事業」が別のものに置き換わります。
- イ(1)の統括会社 → 「主たる事業」は統括業務
- イ(2)の外国金融持株会社等 → 「主たる事業」は政令で定める経営管理(措令39条の14の3第24項が、特定外国金融機関の経営管理と定めています)
そして「ハにおいて同じ」とあります。この読み替えは、次の非関連者基準・所在地国基準(ハ)にも及びます。統括会社の判定では、ハでも統括業務を見ます。
実体基準 ──「必要と認められる」がすべて
条文は「その主たる事業を行うに必要と認められる」固定施設を求めています。施設があればよい、ではありません。その事業を行うのに必要と認められる規模と機能かを見ます。
登記上の住所だけ、私書箱だけ、他社と共用の机ひとつ。これらが「必要と認められる固定施設」に当たるかは、その会社の事業内容との関係で決まります。
括弧書きの「同様の状況にあるものとして政令で定める状況」は、措令39条の14の3第25項が定めています。内容は保険業に関する2つの状況(特定保険外国子会社等に係る特定保険協議者、特定保険委託者に係る特定保険受託者が固定施設を有している状況)です。一般事業会社に使える一般的な受け皿ではありません。
管理支配基準 ──「自ら」が争点になる
条文は「その事業の管理、支配及び運営を自ら行つていること」です。
3つが並んでいます。管理・支配・運営。そして「自ら」。
- 取締役会が日本で開かれている
- 重要な意思決定を日本の親会社が下している
- 現地の役員が名義だけで、実際の業務は日本から指示されている
こうした事実があると、「自ら行つている」の評価に響きます。現地に建物と人がいても、意思決定が日本にあれば管理支配基準は危うくなります。実体基準を満たしても、管理支配基準で落ちる、という形が起こります。
こちらの括弧書き(措令39条の14の3第26項)も、内容は保険業に関する2つの状況です。
資料を出さないと、満たさないものと推定される
措法66条の6第4項。
……当該外国関係会社が同号〔=第2項第3号〕イからハまでに掲げる要件に該当することを明らかにする書類その他の資料の提示又は提出を求めることができる。この場合において、当該書類その他の資料の提示又は提出がないときは、同項(同号又は第六号に係る部分に限る。)の規定の適用については、当該外国関係会社は同項第三号イからハまでに掲げる要件に該当しないものと推定する。
効果の向きを間違えないでください。推定されるのは「要件に該当しない」ことです。そして
- 2項3号は「次に掲げる要件のいずれかに該当しない外国関係会社」を対象外国関係会社と定義しています → 対象外国関係会社に該当することになります
- 2項6号は「イからハまでに掲げる要件の全てに該当する外国関係会社」を部分対象外国関係会社と定義しています → 部分対象外国関係会社には該当しないことになります
部分合算で済むはずが、会社単位の合算に落ちます。
何を残しておくか
推定を破るのは納税者側の資料です。書類の種類は条文に列挙されていませんが、「該当することを明らかにする」ものである必要があります。
- 現地オフィスの賃貸借契約書と、そこが使われている実態が分かるもの
- 現地の役員・従業員の雇用契約と職務内容が分かるもの
- 取締役会の議事録(開催地と出席者が分かるもの)
- 意思決定が現地で行われていることが分かる稟議・決裁の記録
これらは事後に作れません。平時に揃えておく類の資料です。
実務で迷いが生じるところ
- オフィスを借りていれば実体基準を満たすか。「その主たる事業を行うに必要と認められる」規模かを見ます
- 取締役会を日本でやっている。管理支配基準の「自ら」に響きます
- 現地に建物も人もいるが意思決定は日本。実体基準を満たしても管理支配基準で落ち得ます
- 統括会社の場合は何を見るのか。「主たる事業」が統括業務に読み替わります。ハも同じです
- 括弧書きの「同様の状況」で救われないか。政令が定めるのは保険業に関する状況です
- 資料を出さないとどうなるか。対象外国関係会社に該当することになり、部分対象外国関係会社からは外れます
管理支配基準は、現地に何があるかではなく、どこで決めているかの問題です。海外子会社の取締役会運営、決裁権限、現地役員の実質。この3点の設計から見直す必要があります。海外子会社をお持ちの会社は、直近の議事録と決裁記録をご用意のうえご相談ください。
根拠条文
- 租税特別措置法第66条の6第2項第3号ロ(実体基準・管理支配基準)、第2項第3号(対象外国関係会社)、第2項第6号(部分対象外国関係会社)
- 租税特別措置法第66条の6第4項(経済活動基準に係る推定)
- 租税特別措置法施行令第39条の14の3第24項(イ(2)に係る経営管理)、第25項(固定施設を有していることと同様の状況)、第26項(管理支配を自ら行つていることと同様の状況)
保険業に関する特例(特定保険外国子会社等、特定保険委託者等)の細目、外国金融子会社等に関する取扱いは本稿では扱っていません。個別の判定には事業の実態と資料の確認が必要です。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










