審査請求を出すと、事件ごとに担当審判官が指定されます。国税通則法第九十四条です。誰が審理するのかが条文で決まっているので、そこを知っておくと手続の見通しが立ちます。
1件に最低3人
第九十四条第一項です。
国税不服審判所長は、審査請求に係る事件の調査及び審理を行わせるため、担当審判官一名及び参加審判官二名以上を指定する。
担当審判官が1人、参加審判官が2人以上。この3人以上が事件を見ます。
そして第九十八条第四項により、裁決は担当審判官および参加審判官の議決に基づいてしなければなりません(審理手続を経ないでする却下の場合を除く)。担当審判官が1人で決めるのではありません。
指定できない人が決まっている
第九十四条第二項は、指定してはならない者を7号にわたって挙げています。
| # | 指定できない者 |
|---|---|
| 一 | 審査請求に係る処分、または当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者 |
| 二 | 審査請求人 |
| 三 | 審査請求人の配偶者、四親等内の親族または同居の親族 |
| 四 | 審査請求人の代理人 |
| 五 | 第三号・第四号に掲げる者であった者 |
| 六 | 審査請求人の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人または補助監督人 |
| 七 | 第百九条第一項に規定する利害関係人 |
第一号が中心です。処分に関与した人は担当審判官になれません。再調査の請求の決定に関与した人も同じです。
副審判官は担当審判官になれない
第七十九条第三項にただし書があります。
国税副審判官のうち国税不服審判所長の指名する者は国税審判官の職務を行うことができるとしたうえで、「ただし、この法律において担当審判官の職務とされているものについては、この限りでない」としています。
担当審判官の職務は、国税審判官が行うということです。
担当審判官ができること
第九十七条第一項です。担当審判官は、審理を行うため必要があるときは、審理関係人の申立てにより、または職権で、次のことができます。
- 一 審査請求人もしくは原処分庁、または関係人その他の参考人に質問すること
- 二 これらの者の帳簿書類その他の物件について、所有者・所持者・保管者に対し、相当の期間を定めて提出を求め、または提出された物件を留め置くこと
- 三 これらの者の帳簿書類その他の物件を検査すること
- 四 鑑定人に鑑定させること
「職権で」ができる点が特徴です。当事者が出した資料だけで判断するのではなく、審判官の側から動けます。
第二項により、国税審判官・国税副審判官その他の職員は、担当審判官の嘱託または命を受けて、第一号(質問)と第三号(検査)を行うことができます。
第三項は、質問・検査をする場合に身分証明書を携帯し、関係者の請求があったときは提示しなければならないとしています。
そして第五項です。
第一項又は第二項に規定する当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
質問検査権についての第七十四条の八と同じ趣旨の規定が、審判所側にも置かれています。
応じないとどうなるか
2つの規定があります。
第九十七条第四項は、審査請求人等が正当な理由なく質問・提出要求・検査に応じないため、その主張の全部または一部について基礎を明らかにすることが著しく困難になった場合には、国税不服審判所長はその部分に係る主張を採用しないことができるとしています。
第百二十九条は罰則です。質問に答弁しない、偽りの答弁をする、検査を拒み・妨げ・忌避する、偽りの記載をした帳簿書類を提示する行為に、三十万円以下の罰金を定めています。
ただし、ただし書があります。第九十七条第四項に規定する審査請求人等は、この限りでない。審査請求人自身には、この罰則は適用されません。不利益は主張が採用されないという形で現れます。
手続を計画的に進める
第九十七条の二は、審理すべき事項が多数である、争点が錯綜しているといった事情があるときに、担当審判官が期日と場所を指定して審理関係人を招集し、あらかじめ意見の聴取を行えるとしています。
遠隔地に居住している場合その他相当と認める場合には、音声の送受信により通話できる方法によることもできます(第二項)。
意見聴取を行ったときは、審理手続の期日・場所と、審理手続の終結の予定時期を決定して通知します(第三項)。
終わり方
第九十七条の四第一項は、担当審判官が必要な審理を終えたと認めるときは審理手続を終結するものとする、としています。
第二項は、答弁書・反論書・参加人意見書・証拠書類等が期間内に提出されないとき(さらに期間を示して求めてもなお提出されないとき)や、口頭意見陳述の申立てをした者が正当な理由なく出頭しないときにも、終結できるとしています。
終結したときは、速やかに審理関係人に通知されます(第三項)。ここから裁決に向かいます。
実務でよく相談を受ける点
- 担当審判官が誰かによって進み方が変わるのか、というご質問をいただきます。条文が定めているのは除斥事由までで、それ以上は書かれていません。
- 第九十七条第一項の職権調査をどう見るか。こちらに有利にも不利にも働きます。
- 第九十七条の三の閲覧・写しの交付とあわせて、審理の中で何を取りにいくかを設計する必要があります。
審査請求は書面のやり取りが中心ですが、口頭意見陳述や職権調査など、動かせる場面があります。方針の立て方からご相談ください。
根拠条文
- 国税通則法第74条の8(権限の解釈)
- 国税通則法第79条(国税審判官等)
- 国税通則法第94条(担当審判官等の指定)
- 国税通則法第97条(審理のための質問、検査等)
- 国税通則法第97条の2(審理手続の計画的遂行)
- 国税通則法第97条の3(審理関係人による物件の閲覧等)
- 国税通則法第97条の4(審理手続の終結)
- 国税通則法第98条(裁決)
- 国税通則法第109条(参加人)
- 国税通則法第129条
条文の見出しは e-Gov 法令検索の法令データで確認しています。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










