「料調(りょうちょう)が来る」という言い方があります。国税局の資料調査課のことです。マルサ(査察)と混同されがちですが、まったく別の部署であり、根拠も権限も違います。
条文で位置づけを確認します。
資料調査課は「課税部」にある
財務省組織規則第四百七十四条の条名は、次のとおりです。
(課税部の資料調査第一課及び資料調査第二課、課税第一部の資料調査課、資料調査第一課、資料調査第二課及び資料調査第三課並びに課税第二部の資料調査課、資料調査第一課、資料調査第二課及び資料調査第三課の所掌事務)
長いのですが、読むと分かることがあります。資料調査課が置かれているのは、課税部・課税第一部・課税第二部です。
つまり、資料調査課は課税部門の組織です。査察部(調査査察部)ではありません。ここが「マルサとは別物」ということの、いちばん確かな根拠です。
局によって置かれ方が違い、資料調査課だけの局もあれば、資料調査第一課から第三課まである局もあります。
何をする課か
第四百七十四条は、国税庁長官の定めるところにより次の事務を分掌するとして、号を並べています。実務との関係で重要なのは第一号と第二号です。
第一号は、所得税・法人税・地方法人税・相続税等・消費税・印紙税の課税標準の調査およびこれらの国税に関する検査に関する事務のうち、国税局長が必要があると認めた特定事項に係る事務の指導および監督、ならびにこれに必要な調査・検査に関すること、としています。
第二号が、いわゆる料調案件の根拠です。条文はこう書いています。
…当該調査及び検査を受ける者の所得の金額、事業の規模及び態様又は取得した財産の価額その他の状況に照らし、国税局長が特に必要があると認めた事項に係る調査及び検査に関すること。
規模が大きい、態様が特殊、取得した財産の価額が大きい。こうした事案を、税務署ではなく国税局が直接扱う。それが第二号です。
第三号は、これらの事務に係る不服申立てに関することを挙げています。第四号・第五号は、租税条約等にもとづく外国の租税の賦課に関する調査に関するものです。
権限は税務署の調査と同じ
ここが実務上いちばん大事な点です。
料調が来ても、根拠となる権限は国税通則法第七十四条の二以下の質問検査権です。査察のような裁判官の許可状はありません。臨検・捜索・差押えもありません。
そして、事前通知(第七十四条の九)も、調査の終了の際の手続(第七十四条の十一)も、税務署の調査と同じ枠組みで適用されます。
ただし事前通知には例外があります。第七十四条の十により、税務署長等が、保有する情報に鑑みて、違法・不当な行為を容易にするおそれその他調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、事前通知を要しないとされています。料調の事案でも、この規定により予告なく臨場する形をとることがあります。
| 税務署の調査 | 資料調査課(料調) | 査察(マルサ) | |
|---|---|---|---|
| 所属 | 税務署 | 国税局の課税部門 | 国税局の調査査察部・査察部 |
| 根拠 | 通則法74条の2〜 | 通則法74条の2〜 | 通則法131条〜 |
| 許可状 | なし | なし | 臨検等に必要 |
| 出口 | 更正・修正申告 | 更正・修正申告 | 告発 |
制度としては税務署の調査と同じ枠組みの中にあります。違うのは、誰が来るか、そしてなぜ来たか、です。
なぜ来たのかを考える意味
第四百七十四条第二号が挙げる着眼点は、条文に書いてあるとおり「所得の金額、事業の規模及び態様又は取得した財産の価額その他の状況」です。
国税局長が特に必要があると認めたという要件が入っています。通常の税務署の調査とは別の判断が働いて選ばれている、ということです。
相続税の事案で来ることもあれば、法人の事案で来ることもあります。何が着眼点になったのかは、質問の中身から推し量ることになります。
実務でよく相談を受ける点
- 税務署ではなく国税局から連絡が来た、という段階でのご相談は多いです。
- 複数の職員が同時に複数の場所に入る形をとることがあり、初動の判断が難しい場面があります。
- 重加算税の要件に話が及ぶかどうかで、その後の見通しが変わります。
料調が入る事案は、争点が明確なことが多い一方、こちらの説明の組み立てが結果を左右します。連絡が来た段階でご相談ください。
根拠条文
- 国税通則法第74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
- 国税通則法第74条の9(納税義務者に対する調査の事前通知等)
- 国税通則法第74条の10(事前通知を要しない場合)
- 国税通則法第74条の11(調査の終了の際の手続)
- 国税通則法第131条(質問、検査又は領置等)
- 財務省組織規則第474条
条文の見出しは e-Gov 法令検索の法令データで確認しています。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










