合算課税で1回課税された所得が、後で配当として日本に戻ってくる。そのまま益金にすると二重課税です。それを解くのが措法66条の8の特定課税対象金額です。
3つの入口
措法66条の8は、配当の受け方によって条文が分かれています。
| 項 | どういう配当か | 効果 |
|---|---|---|
| 1項 | 外国子会社に該当しない外国法人から受ける配当等 | 特定課税対象金額に達するまで益金不算入 |
| 2項 | 法人税法23条の2第1項(外国子会社配当益金不算入)の適用を受ける部分 | 特定課税対象金額に達するまでの部分につき、同項の5%の費用控除をしない(読み替え) |
| 3項 | 法人税法23条の2第2項(損金算入配当)の適用を受ける部分 | 特定課税対象金額に達するまで益金不算入 |
2項だけ効果が違います。外国子会社配当益金不算入(95%不算入)を受ける配当については、益金不算入にするのではなく、5%相当の費用控除をやめるという形の調整です。
1項の条文はこうです。
内国法人が外国法人(法人税法第23条の2第1項に規定する外国子会社に該当するものを除く。……)から受ける同法第23条第1項第1号に掲げる金額(……「剰余金の配当等の額」という。)がある場合には、当該剰余金の配当等の額のうち当該外国法人に係る特定課税対象金額に達するまでの金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。
2項の読み替えはこうです。
同項中「剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等の額に係る費用の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額」とあるのは、「剰余金の配当等の額」とする。
引き算をやめる、という書き方です。
特定課税対象金額とは(4項)
2つの号の合計額です。
一 外国法人に係る課税対象金額、部分課税対象金額又は金融子会社等部分課税対象金額で、内国法人が当該外国法人から剰余金の配当等の額を受ける日を含む事業年度において……益金の額に算入されるもののうち、当該内国法人の有する当該外国法人の直接保有の株式等の数及び……実質支配関係の状況を勘案して政令で定めるところにより計算した金額
二 ……受ける日を含む事業年度開始の日前十年以内に開始した各事業年度(……「前十年以内の各事業年度」という。)において……益金の額に算入されたもののうち、……計算した金額(前十年以内の各事業年度において当該外国法人から受けた剰余金の配当等の額(前三項の規定の適用を受けた部分の金額に限る。)がある場合には、当該剰余金の配当等の額に相当する金額を控除した残額。……「課税済金額」という。)
1号は当期分、2号は過去10年分(課税済金額)です。
2号の括弧書きが管理の要です。過去に使った分は残額から引きます。課税済金額は、使うたびに減っていく残高です。帳簿を作って追いかけないと、次の配当のときに数字が出せません。
そして「直接保有の株式等の数」です。間接保有ではありません。間接分は後述の10項が別に扱います。
組織再編で引き継げる(5項)
内国法人が適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配……により……その有する外国法人の直接保有の株式等の数の全部又は一部の移転を受けた場合には、……次の各号に掲げる適格組織再編成の区分に応じ当該各号に定める金額は、政令で定めるところにより、当該内国法人の前十年以内の各事業年度の課税済金額とみなす。
課税済金額は、適格組織再編成で引き継がれます。適格合併・残余財産の全部の分配(1号)は被合併法人等の合併等前10年内事業年度の課税済金額、適格分割等(2号)は移転を受けた株式等に対応する部分です。
孫会社経由のルート ── 間接特定課税対象金額(10項)
子会社を1枚かませた場合の規定です。8項・9項が効果を定め、10項が金額を定めます。
前三項に規定する間接特定課税対象金額とは、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額をいう。
一 ……配当事業年度開始の日前二年以内に開始した各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日から配当事業年度終了の日までの期間において、当該外国法人が他の外国法人から受けた剰余金の配当等の額……のうち、当該内国法人の有する当該外国法人の直接保有の株式等の数に対応する部分の金額……(……「間接配当等」という。)
二 次に掲げる金額の合計額(イ=配当事業年度に合算された他の外国法人分、ロ=……)
「いずれか少ない金額」です。孫会社から子会社へ流れた配当(1号)と、孫会社について合算された金額(2号)の、小さいほうを限度とします。
そして期間が違います。特定課税対象金額は10年、間接特定課税対象金額は2年です。同じ制度の中で年数が2つ出てきます。
8項・9項の効果は、1項〜3項と同じ形です。8項が法人税法23条の2第1項の読み替え(5%控除をやめる)、9項が同条2項(損金算入配当)の益金不算入。いずれも「第2項の規定の適用を受ける部分の金額を除く」「第3項の……を除く」の括弧書きがあり、特定課税対象金額の分と重複しません。
実務で迷いが生じるところ
- 合算された年に配当を受けた。4項1号の当期分です
- 数年前に合算された分を今年配当した。4項2号の課税済金額(10年以内)です
- 課税済金額はどう管理するのか。使った分を控除した残額を、事業年度ごとに追います
- 95%不算入との関係は。2項により、5%の費用控除をやめる形で調整されます
- 孫会社から吸い上げた配当は。8項〜10項の間接特定課税対象金額です。期間は2年
- 合併で子会社株式を引き継いだ。5項により課税済金額も引き継げます
この制度は、記録を残していないと使えません。課税済金額は10年分の残高管理が要り、間接分は2年で切れます。海外子会社から配当を受ける予定がある会社は、過去の合算額の記録を整理するところからご相談ください。
根拠条文
- 租税特別措置法第66条の8(内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例)第1項〜第5項、第8項〜第10項
- 租税特別措置法第66条の6第1項・第8項・第10項(合算課税)、第2項第5号(実質支配関係)
- 法人税法第23条第1項第1号、第23条の2第1項・第2項(外国子会社配当益金不算入)
政令が定める計算方法の細目、第6項・第7項の調整、第11項以降は本稿では扱っていません。個別の計算には過去の合算額の記録の確認が必要です。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










