法人が日本で課税されるかどうかは、まず内国法人か外国法人かで分かれます。判定の基準は、意外なほど単純です。
条文の定義
法人税法第2条。
三 内国法人 国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいう。
四 外国法人 内国法人以外の法人をいう。
所得税法第2条第1項第6号・第7号も、同じ文言です。
基準は「国内に本店又は主たる事務所を有するか」の一点です。
| 条文の要件か | |
|---|---|
| 本店又は主たる事務所の所在地 | これが要件 |
| 設立準拠法 | 要件ではない |
| 株主の国籍・所在地 | 要件ではない |
| 役員の国籍・所在地 | 要件ではない(ただし「主たる事務所」がどこかの事実認定には関わり得ます) |
| 実際の事業活動の場所 | 要件ではない(同上) |
外資100%でも本店が日本にあれば内国法人です。これを本店所在地主義と呼びます。
ただし、裏返しがそのまま成り立つとは限りません。条文は「本店又は主たる事務所」と書いており、本店だけを見ているわけではありません。「本店の登記を海外に移せば外国法人になる」と単純に読める条文ではありません。
外国法人の課税範囲
法人税法第141条が、課税標準を定めています。
イ 第百三十八条第一項第一号(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得
ロ 第百三十八条第一項第二号から第六号までに掲げる国内源泉所得(同項第一号に掲げる国内源泉所得に該当するものを除く。)
二 恒久的施設を有しない外国法人 各事業年度の第百三十八条第一項第二号から第六号までに掲げる国内源泉所得
外国法人は、各事業年度の所得に対する法人税については、国内源泉所得に係る所得の金額が課税標準になります。内国法人が原則として全世界所得に課税されるのと対照的です。
そのうえで、恒久的施設(PE)があるかどうかで範囲が変わります。PEがあれば恒久的施設帰属所得(138条1項1号)が加わります。
PEがなければ課税されない、ではありません。第2号のとおり、PEを有しない外国法人にも138条1項2号から6号までの国内源泉所得について課税標準が生じます。
さらに、源泉徴収される所得税は別枠です。利子・配当・使用料などは、138条1項2号の括弧書きにより2号(国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得)から除かれ、所得税の源泉徴収で処理されます。
ただし、これは2号からの除外です。PEを有する外国法人で、その所得がPEに帰属する場合は、138条1項1号(恒久的施設帰属所得)として法人税の課税標準に入ります。上に引いた141条1号ロの括弧書き「(同項第一号に掲げる国内源泉所得に該当するものを除く。)」は、1号と2号以下が重なりうることを示しています。法人税だけを確認して「課税なし」と結論しないでください。
最初に確認すべきこと
設立した国と、本店を置く場所は別の話です。
条文が見ているのは「国内に本店又は主たる事務所を有するか」であって、どの国の法律で設立したかではありません。登記や定款の記載だけで判断せず、どこが本店なのかを事実として確定させる必要があります。
実務で迷いが生じるところ
- 海外で設立した会社の実質的な意思決定が日本で行われていたらどうなるか。「主たる事務所」がどこかという論点があります
- 登記上の本店と実際の管理場所が違ったらどうなるか。条文の文言をどう当てはめるかの問題になります
- 外国のLLCやLPSは「法人」に当たるのか。そもそも法人に該当するかという入口の論点があります
- 本店を国外に移したら内国法人でなくなるのか。移転の事実と時期が問われます
- 外国法人が日本で不動産を持っていたらどうなるか。PEの有無にかかわらず課税される国内源泉所得があります
- タックスヘイブンに置いた子会社はどう扱われるか。外国法人であっても、日本側の株主(内国法人・居住者)で合算課税の対象になる制度があります
いずれも、登記の記載ではなく事実関係で決まる論点です。
内国法人と認定されると、全世界所得が日本の法人税の対象になります。海外に法人を置く設計をするときは、本店をどこに置くかの意味を確認したうえで動いてください。
根拠条文
- 法人税法第2条第3号(内国法人)・第4号(外国法人)
- 所得税法第2条第1項第6号・第7号
- 法人税法第138条第1項(国内源泉所得)
- 法人税法第141条(外国法人の各事業年度の所得に対する法人税の課税標準。条文に見出しはありません)
- 法人税法第2条第12号の19(恒久的施設)
個別の判定には事実関係の確認が必要です。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










