国際税務の基礎知識

国内源泉所得とは

非居住者外国法人に日本が課税できるのは、国内源泉所得に限られます。何が国内源泉所得に当たるかは、条文が列挙で定めています。

所得税と法人税で、別々の条文が置かれています。

個人(非居住者)── 所得税法第161条第1項

第1号から第17号までの列挙です。主なものを挙げます。

内容(要旨)
恒久的施設帰属所得
国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得(8号〜16号に該当するものを除く)
国内にある資産の譲渡により生ずる所得として政令で定めるもの
組合契約に基づき恒久的施設を通じて行う事業から生ずる利益で配分を受けるもののうち政令で定めるもの
国内にある土地等の譲渡による対価(政令で定めるものを除く。1億円以下で個人が自己・親族の居住用に取得するものは除かれます/所得税法施行令281条の3)
国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける対価(芸能人・職業運動家、自由職業者、専門的知識・技能の提供等/同令282条)
国内にある不動産等の貸付けによる対価
利子等(国債・地方債・内国法人発行債券の利子、国内営業所に預け入れられた預貯金の利子等)
配当等(内国法人から受ける剰余金の配当等)
国内において業務を行う者に対する貸付金で当該業務に係るものの利子
十一 国内において業務を行う者から受ける使用料等で当該業務に係るもの
十二 給与・報酬のうち国内において行う勤務その他の人的役務の提供に基因するもの(内国法人の役員として国外で行う勤務等を含む)、公的年金等、退職手当等のうち居住者であった期間の勤務等に基因するもの
十三 国内において行う事業の広告宣伝のための賞金として政令で定めるもの
十四 生命保険契約等に基づく年金等
十五 給付補塡金、利息、利益又は差益
十六 匿名組合契約に基づいて受ける利益の分配
十七 前各号のほか、その源泉が国内にある所得として政令で定めるもの

法人(外国法人)── 法人税法第138条第1項

こちらは第1号から第6号までです。

一 外国法人が恒久的施設を通じて事業を行う場合において……当該恒久的施設に帰せられるべき所得(当該恒久的施設の譲渡により生ずる所得を含む。)

二 国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得(所得税法第百六十一条第一項第八号から第十一号まで及び第十三号から第十六号まで(国内源泉所得)に該当するものを除く。)

三 国内にある資産の譲渡により生ずる所得として政令で定めるもの

四 国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う法人が受ける当該人的役務の提供に係る対価

五 国内にある不動産、国内にある不動産の上に存する権利若しくは採石法……の規定による採石権の貸付け……による対価

六 前各号に掲げるもののほかその源泉が国内にある所得として政令で定めるもの

所得税法と法人税法で号の番号が違います。「161条1項7号」と「138条1項5号」がどちらも不動産の貸付対価であるように、対応関係を取り違えやすい構造です。条文を引くときは、個人向けか法人向けかを必ず確認してください。

恒久的施設の有無で扱いが変わる

列挙に当たる所得でも、PEがあるかないかで課税の方法が変わります。

個人については、所得税法第164条が総合課税(同条第1項)と分離課税(同条第2項)に振り分けています。条文はPEの有無で号を並べ替える形になっています。

総合課税(1項) 分離課税(2項)
PEを有する非居住者 161条1項1号・4号(イ)/同項2号・3号・5〜7号・17号(ロ。1号該当分を除く) 同項8〜16号(1号該当分を除く
PEを有しない非居住者 同項2号・3号・5〜7号・17号 同項8〜16号

読みどころは2つです。

第一に、PEの有無で出入りするのは1号(恒久的施設帰属所得)と4号(組合契約に基づきPEを通じて行う事業の利益の配分)です。それ以外の号は、PEがあってもなくても同じ区分に並んでいます。

第二に、PEを有する非居住者については、8〜16号でもPEに帰属する分(1号該当分)は2項から除かれ、1項に回ります。利子・配当・使用料だから必ず分離課税、とは言えません。

そして、PEがない非居住者でも、2号・3号・5号〜7号・17号は第1項第2号により総合課税=確定申告の対象です。国内不動産の賃料(7号)や土地の譲渡対価(5号)がここに入ります。「PEがないから源泉徴収で終わり」ではありません。

法人については、法人税法第141条がPEの有無に応じて課税標準となる号の範囲を定めています。

最初に確認すべきこと

列挙に当たっても、租税条約で日本の課税が制限されることがあります。

それだけではありません。条約は、国内源泉所得の範囲そのものを置き換えます。

所得税法第162条第1項。

租税条約(……)において国内源泉所得につき前条の規定と異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける者については、同条の規定にかかわらず、国内源泉所得は、その異なる定めがある限りにおいて、その租税条約に定めるところによる。

法人税法第139条第1項も同じ構造です。所得税法162条第1項には後段があり、条約が6号から16号までに代わる国内源泉所得を定めている場合のみなし規定を置いています。

つまり「国内法で161条の何号に当たるか」を決めても、条約に異なる定めがあれば源泉地の判定自体が入れ替わります。使用料の源泉地の考え方が国内法と条約で違う、というのが典型例です。国内法だけを見て源泉徴収の要否や税率を決めないでください。

実務で迷いが生じるところ

  • 国外の会社に払う業務委託料は源泉徴収が必要か。人的役務の提供の対価か、使用料か、どの号に当たるかで扱いが変わります
  • ソフトウェアやクラウドの利用料は使用料か。第11号の使用料に当たるかという論点があります
  • 国外の親会社に払う経営指導料はどうか。役務提供の場所と内容が問われます
  • 非居住者に払う役員報酬はどうか。給与に関する号の適用と、条約の規定を見る必要があります
  • 国外で行われた役務の対価はどうか。「国内において」の要件をどう見るかの問題です
  • 条約の届出書を出していなかったらどうなるか。手続の問題が別に生じます

契約書のタイトルでは決まりません。そして、どの号に当たるかを国内法で決めた後に、条約による置き換えを確認する必要があります。

源泉徴収が漏れると、支払った側が納税義務を負います。不納付加算税と延滞税も生じ得ます。国外への支払いを始める前にご相談ください。

根拠条文

  • 所得税法第161条第1項(国内源泉所得)
  • 所得税法施行令第281条の3(国内にある土地等の譲渡による対価)、第282条(人的役務の提供を主たる内容とする事業の範囲)
  • 所得税法第164条(非居住者に対する課税の方法)
  • 法人税法第138条第1項(国内源泉所得)
  • 所得税法第162条、法人税法第139条(租税条約に異なる定めがある場合の国内源泉所得
  • 法人税法第141条(外国法人に係る各事業年度の所得に対する法人税の課税標準)
  • 各租税条約の課税権の配分に関する規定

個別の判定には取引内容の確認が必要です。

本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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