タックスヘイブン対策税制で、合算するかしないかを最後に決めるのが租税負担割合です。この1つの数字で、結論がひっくり返ります。
3つのラインがある
租税特別措置法第66条の6第7項と第12項。
| 対象 | ライン | 効果 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 特定外国関係会社 | 27%以上 | 会社単位の合算を適用しない | 7項1号 |
| 対象外国関係会社 | 20%以上 | 会社単位の合算を適用しない | 7項2号 |
| 部分対象外国関係会社 | 20%以上 | 部分合算を適用しない | 12項1号 |
特定外国関係会社だけ27%です。残りは20%。ここを取り違えると、判定が逆になります。
12項には、租税負担割合以外の免除も並んでいます。
二 各事業年度における部分適用対象金額又は金融子会社等部分適用対象金額が二千万円以下であること。
三 各事業年度の決算に基づく所得の金額に相当する金額として政令で定める金額のうちに当該各事業年度における部分適用対象金額……の占める割合が百分の五以下であること。
部分合算には、金額基準(2,000万円以下)と割合基準(5%以下)もあります。租税負担割合だけを見て「20%未満だから合算」と結論づけないでください。
計算式は単純。中身が単純ではない
租税特別措置法施行令第39条の17の2第1項。
……外国関係会社の各事業年度の所得に対して課される租税の額を当該所得の金額で除して計算した割合とする。
分子が税額、分母が所得。式そのものは分数ひとつです。問題は、分母の「所得の金額」が、決算書の利益でも日本の課税所得でもないことです。
その前に ── イとロ、どちらの会社かを決める
同条2項第1号は、分母の作り方を2つに分けています。分け方は会社の所在地です。
ロ 法人の所得に対して課される税(……を除く。)が存在しない国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社
イは「ロに掲げる外国関係会社以外の外国関係会社」です。
| 区分 | どんな会社か | 分母の出発点 |
|---|---|---|
| イ | 法人所得税がある国・地域の会社 | その国の法令により計算した所得の金額 |
| ロ | 法人所得税が存在しない国・地域(無税国)の会社 | 決算に基づく所得の金額 |
無税国には計算すべき現地の課税所得がありません。だから決算書の所得から出発します。この区分を決めないと、次の加減算表も、赤字の年の扱いも決まりません。
分母(イの場合) ── 現地法令の所得に、5つを足して1つを引く
同条2項第1号イ。
出発点は「その本店所在地国の法令の規定により計算した所得の金額」です。日本の法人税法ではありません。現地の税法で計算した所得です。
この一文には括弧書きが3つ入っています。①ここでいう外国法人税から国内ミニマム課税(QDMTT)相当の税は除かれます。②現地に外国法人税に関する法令が2つ以上ある場合は、そのうち主たる外国法人税に関する法令によります。③企業集団等所得課税規定(連結納税・パススルー課税等)は除いて計算します。
そこに、次の(1)〜(5)を加算します。
| 加算するもの | |
|---|---|
| (1) | 現地法令により外国法人税の課税標準に含まれないこととされる所得の金額(支払を受ける配当等の額を除く) |
| (2) | その支払う配当等の額で損金の額に算入している金額 |
| (3) | その納付する外国法人税の額で損金の額に算入している金額 |
| (4) | 保険準備金の損金算入額のうち、措法57条の5・57条の6の例によれば損金算入されない金額 |
| (5) | 保険準備金の益金算入額が、同様に計算した益金算入すべき金額に満たない部分の金額 |
そして(6)その還付を受ける外国法人税の額で益金の額に算入している金額を減算します。(3)の加算(納付した外国法人税)と対になる項目です。
(1)の括弧書きが効きます。現地で非課税とされる所得は分母に足し戻すのが原則ですが、受取配当は足し戻しません。海外子会社からの配当が現地で非課税でも、それによって租税負担割合が下がることはない、という設計です。
(2)が効く国があります。支払配当を損金算入できる制度を持つ国では、その分を足し戻します。
ロ(無税国)の場合は、項目の並びが違います。加算が(1)〜(4)、減算が(5)(6)です。番号が同じでも中身は別物です。ロの加算(1)〜(4)は、イの(2)〜(5)に相当します(支払配当の費用計上額、納付外国法人税の費用計上額、保険準備金の2項目)。イの(1)に当たる項目はロにありません。無税国なので「課税標準に含まれないこととされる所得」という概念が立たないためです。減算の(5)は「その支払を受ける配当等の額で収益の額としている金額」、(6)は「その還付を受ける外国法人税の額で収益の額としている金額」。イでは(1)の括弧書きで配当を「加算しない」形にしていたものが、ロでは(5)で「減算する」形になります。同じ結論に別の作りで到達しているので、表を取り違えると数字が変わります。
分子 ── 現地の税だけではない
同条2項第2号。
……その本店所在地国又は本店所在地国以外の国若しくは地域において課される外国法人税の額とする。
第三国で課された源泉税も分子に入ります。本店所在地国の税だけを拾うと、割合を過小に計算します。
分子にも、連結納税等の調整があります。2号の括弧書きは「外国法人税に関する法令に企業集団等所得課税規定がある場合の当該外国法人税にあつては、企業集団等所得課税規定の適用がないものとした場合に計算される外国法人税の額」としています。分母と分子の両方で、単体ベースに引き直します。
3号は、さらに2つの調整を置いています。
- みなし納付外国法人税を含める。現地法令により納付したものとみなして控除されるものは、分子に含みます
- 一定の外国法人税を含めません。1号イ(1)で分母から除かれた「本店所在地国以外の法人から受ける配当等」に課された外国法人税は、分子からも外します
分母から外した所得に対応する税は、分子からも外す。対応関係を取る作りです。
所得がない年、赤字の年
同条2項第5号。
前項の所得の金額がない場合又は欠損の金額となる場合には、同項に規定する割合は……その行う主たる事業に係る収入金額……から所得が生じたとした場合にその所得に対して適用されるその本店所在地国の外国法人税の税率に相当する割合とする。
分母がゼロや赤字なら、割合は計算できません。その場合、イ(法人所得税がある国の会社)は現地の適用税率を使い、ロ(無税国の会社)は零とされています。
イについて、赤字だから租税負担割合ゼロ、ではありません。現地の税率で判定されます。
なおイの「収入金額」には括弧書きがあり、その収入金額が1号イ(1)で所得から除かれる配当等の額である場合には、当該収入金額以外の収入金額とされています。主たる収入が現地非課税の受取配当である持株会社などでは、当てはめ先が変わります。
累進税率の国では、最高税率を使える
同条2項第4号。
その本店所在地国の外国法人税の税率が所得の額に応じて高くなる場合には、第二号の外国法人税の額は、これらの税率をこれらの税率のうち最も高い税率であるものとして算定した外国法人税の額とすることができる。ただし、当該最も高い税率が適用されることが通常見込まれないこと、当該最も高い税率が適用される所得の額の区分が適用される所得の金額が極めて限定されていることその他の事情により、この号本文の規定によることが著しく不適当であると認められる場合は、この限りでない。
「することができる」です。義務ではなく選択です。そしてただし書は、事情を2つ例示しています。最高税率の適用が通常見込まれない場合と、最高税率が適用される所得の区分が極めて限定されている場合。「著しく不適当」の主語は、最高税率の適用そのものではなく「この号本文の規定によること」です。
実務で迷いが生じるところ
- 現地の法人税率が25%なら安心か。特定外国関係会社なら27%未満です。また実効の割合は税率と一致しません
- 現地で非課税の所得があります。(1)で足し戻します。ただし受取配当は除かれます
- 第三国の源泉税を払っています。分子に入ります
- 赤字の年はどう扱うか。5号により現地の適用税率を使います
- 連結納税をしている国にあります。分母・分子の両方で、企業集団等所得課税規定がないものとして計算します
- 無税国に会社があります。ロの区分です。分母は決算に基づく所得から出発し、赤字なら割合は零です
- 20%と27%はどちらを使うのか。会社の区分によります。先に区分を確定してください
租税負担割合は、現地の税率表を見て終わる数字ではありません。現地の申告書と決算書を突き合わせ、加算項目を1つずつ拾う作業です。海外子会社の合算課税が気になる会社は、まず直近期の現地申告書をご用意のうえご相談ください。
根拠条文
- 租税特別措置法第66条の6第7項第1号・第2号(会社単位の合算に係る適用免除)
- 租税特別措置法第66条の6第12項第1号〜第3号(部分合算に係る適用免除)
- 租税特別措置法第66条の6第14項(確定申告書への添付)
- 租税特別措置法施行令第39条の17の2(外国関係会社に係る租税負担割合の計算)第1項・第2項
- 租税特別措置法施行令第39条の15第6項(企業集団等所得課税規定)
保険準備金に係る加算項目の細目、外国金融子会社等に関する取扱いは本稿では扱っていません。個別の計算には現地の申告書と決算書の確認が必要です。
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










