国際税務の基礎知識

タックスヘイブン対策税制とは

タックスヘイブン対策税制とは、外国子会社等の所得を、日本の株主の所得に合算して課税する制度です。判定は「子会社がどこの国にあるか」ではなく、その会社に実体があるか、所得がどういう性質のものか、そして実際の租税負担割合がいくらかで行われます。低税率国に子会社がなくても、優遇税制で実効的な税負担が低ければ対象になり得ます。法人株主については租税特別措置法第六十六条の六、個人株主については第四十条の四が定めています。一般には「外国子会社合算税制」「CFC税制」とも呼ばれます(条文に「タックスヘイブン」の語はありません)。

誰に適用されるか

第六十六条の六第1項は、対象となる内国法人を4つの類型で定めています。

  • 外国関係会社の株式等・議決権・請求権のいずれかの保有割合が、直接及び間接の合計で10%以上である内国法人(第1号)
  • 外国関係会社との間に実質支配関係がある内国法人(第2号)
  • 実質支配関係のある外国関係会社を通じて、他の外国関係会社に係る1.の割合を10%以上有する内国法人(第3号)
  • 同族株主グループとして1.の割合を10%以上有する内国法人(第4号)

何が課税されるか

特定外国関係会社又は対象外国関係会社に該当する外国関係会社が適用対象金額を有する場合、内国法人が直接及び間接に有する株式等の数・請求権の内容・実質支配関係の状況を勘案して計算した金額(課税対象金額)を、収益の額とみなして益金の額に算入します(第1項)。算入するのは、外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から4か月を経過する日を含む、内国法人の事業年度です。適用対象金額は、決算に基づく所得の金額を基礎に、法人税法等に準じて政令で定める基準により算定し、開始前7年以内の欠損金額等の調整を加えた金額です(第2項第4号)。

外国関係会社の区分

「外国関係会社」とは、居住者・内国法人等が発行済株式等又は議決権等の50%超を保有する外国法人、又はこれらの者と実質支配関係がある外国法人です(第2項第1号)。

その外国関係会社のうち、特定外国関係会社は次の4類型です(第2号)。

  • 主たる事業に必要な固定施設を有していること、本店所在地国で事業の管理・支配・運営を自ら行っていること等の(1)〜(5)のいずれにも該当しないもの(いわゆるペーパーカンパニー)
  • 総資産額に対する受動的所得等の割合が一定を超えるもの(いわゆるキャッシュボックス)
  • 保険業に関する非関連者等収入保険料等の要件のいずれにも該当するもの
  • 租税に関する情報交換への協力が著しく不十分な国又は地域として財務大臣が指定する国等に本店等を有するもの

対象外国関係会社は、経済活動基準(第3号イ〜ハ)の要件のいずれかに該当しない外国関係会社です(特定外国関係会社に該当するものを除く)。つまり4基準を1つでも満たさなければ該当します。詳細は別稿「経済活動基準とは」に譲ります。

特定外国関係会社と対象外国関係会社は、いずれも「該当すれば合算される」側の区分です。経済活動基準をすべて満たす実体ある会社はどちらにも該当せず、会社単位の合算対象にはなりません(部分合算課税はあり得ます)。

適用免除

租税負担割合が一定水準以上であれば、第1項による合算は適用されません(第7項)。特定外国関係会社は27%以上(第1号)、対象外国関係会社は20%以上(第2号)です。

なお、これらに該当しない外国関係会社(部分対象外国関係会社)についても、配当・利子・使用料などの受動的所得(特定所得の金額)に限って合算する部分合算課税が別途定められています(第8項以下)。

個人版があること(第四十条の四)

居住者についても同様の制度が第四十条の四にあります。対象となる居住者の4類型と適用免除の割合(27%・20%)は法人版と同じです。ただし合算の性質が異なり、課税対象金額を雑所得に係る収入金額とみなして、その年分の総収入金額に算入します。

実務上の注意

資料を出せなければ、合算される側に倒れます。 国税庁又は所轄税務署等の職員は、ペーパーカンパニー該当性(第3項)と経済活動基準の充足(第4項)について、期間を定めて資料の提示・提出を求めることができます。期間内に提示・提出がないときは、その外国関係会社は特定外国関係会社に該当するもの、また経済活動基準の要件に該当しないもの(=対象外国関係会社)と推定されます。判定の根拠資料は、求めがあれば速やかに出せる状態にしておく必要があります。

もう一点、合算が免除される場合でも申告書への添付義務は残ります。租税負担割合が20%未満の対象外国関係会社・部分対象外国関係会社、27%未満の特定外国関係会社については、貸借対照表・損益計算書その他財務省令で定める書類を確定申告書に添付しなければなりません(第14項)。

根拠条文

  • 租税特別措置法第六十六条の六第1項(本文、第1号〜第4号)
  • 同条第2項第1号(外国関係会社)、第2号イ〜ニ(特定外国関係会社)、第3号(対象外国関係会社)、第4号(適用対象金額)
  • 同条第3項・第4項(資料の提示・提出要求及び推定規定)
  • 同条第7項第1号・第2号(適用免除、租税負担割合27%・20%)
  • 同条第8項(部分合算課税、概要のみ)
  • 同条第14項第1号〜第3号(確定申告書への書類添付義務)
  • 租税特別措置法第四十条の四第1項(本文、第1号〜第4号)、同条第7項第1号・第2号

本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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