国際税務の基礎知識

外国子会社合算税制の二重課税調整(外国税額控除)とは

海外子会社の所得が日本で合算されます。しかしその所得には、すでに現地で税がかかっています。放っておけば二重課税です。それを解くのが措法66条の7です。

外国法人税は、内国法人が納付したものとみなす

租税特別措置法第66条の7第1項。

……当該内国法人に係る外国関係会社の所得に対して課される外国法人……の額……のうち、当該外国関係会社の課税対象金額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額(当該金額が当該課税対象金額を超える場合には、当該課税対象金額に相当する金額)、当該外国関係会社の部分課税対象金額に対応するものとして……計算した金額(同上)又は当該外国関係会社の金融子会社等部分課税対象金額に対応するものとして……計算した金額(同上)は、政令で定めるところにより、当該内国法人が納付する控除対象外国法人税の額とみなして、同法第69条及び地方法人税法第12条の規定を適用する。

「みなして」です。外国子会社が払った税を、日本の親会社が払ったものとして、外国税額控除(法人税法69条)に乗せます。

なお、1項の主語には除外があります。特定目的会社、投資法人、特定目的信託に係る受託法人、特定投資信託に係る受託法人(条文は「特定目的会社等」と呼びます)は、1項・2項の対象外で、3項が別のルートを定めています。TMKや投資法人は、この記事の1項の説明が当てはまりません。

上限が3か所に置かれています。「当該金額が当該課税対象金額を超える場合には、当該課税対象金額に相当する金額」。課税対象金額そのものが上限であって、税額との比較ではありません。合算額を超えて控除枠を作ることはできません。

3種類の合算に、それぞれ対応します。

合算の種類 条文
課税対象金額(会社単位) 66条の6第1項
部分課税対象金額 66条の6第8項
金融子会社等部分課税対象金額 66条の6第10項

みなした金額は、益金に算入する

同条第2項。

……前項の規定により法人税法第69条第1項から第3項まで又は第18項……の規定の適用を受けるときは、前項の規定により控除対象外国法人税の額とみなされた金額は、当該内国法人の政令で定める事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する

グロスアップです。外国税額控除を受けるなら、控除の対象にした金額を所得に足し戻します。法人税法69条の一般的な取扱いと同じ考え方です。

ただし条件が付いています。「法人税法69条1項から3項まで又は18項の規定の適用を受けるとき」。控除を実際に受けるときに益金算入するという構造です。

もう一つのルート ── 日本の所得税等の控除(4項)

外国法人税だけではありません。その外国関係会社が日本で課された税がある場合の規定が4項です。

……次に掲げる金額の合計額(……「所得税等の額」という。)のうち、当該内国法人に係る外国関係会社の課税対象金額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額に相当する金額……(……「控除対象所得税額等相当額」という。)は、当該内国法人の政令で定める事業年度の所得に対する法人税の額……から控除する

当該外国関係会社に対して課される所得税の額(附帯税の額を除く。)、法人税各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税及び退職年金等積立金に対する法人税を除く。)の額(附帯税の額を除く。)及び地方法人税……を除く。)の額(附帯税の額を除く。)

当該外国関係会社に対して課される地方税法23条1項3号に掲げる法人税割(……退職年金等積立金に対する法人税に係るものを除く。)の額及び同法292条1項3号に掲げる法人税割(同上)の額

括弧書きが税目ごとに違います。法人税からは国際最低課税残余額に対する法人税退職年金等積立金に対する法人税が、地方法人税からは地方法人税法6条1項3号に定める基準法人税額に対する地方法人税同条2項2号に定める国際最低課税額等に係る特定基準法人税額に対する地方法人税が除かれます。いずれもグローバル・ミニマム課税関係と退職年金等積立金の分であって、地方法人税の全額が除かれるわけではありません。「附帯税を除く」だけではない、という点に注意してください。

外国関係会社が日本の源泉所得税や法人税を課されている場合(日本国内に源泉のある所得がある場合など)の調整です。こちらは「みなす」ではなく、法人税の額から直接控除します。

1項 4項
対象 外国法人税 日本の所得税・法人税・地方法人税・法人税割
方法 控除対象外国法人税とみなす(法人税法69条へ) 法人税の額から直接控除
益金算入 2項(69条の適用を受けるとき) 6項(4項の適用を受けるとき)

4項には書類要件がある

同条第5項。

前項の規定は、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に同項の規定による控除の対象となる所得税等の額、控除を受ける金額及び当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により控除される金額の計算の基礎となる所得税等の額は、当該書類に当該所得税等の額として記載された金額を限度とする

2つの縛りです。書類の添付が必要で、計算の基礎となる所得税等の額は書類に記載した金額が上限です。ただし、確定申告書等だけでなく、修正申告書・更正請求書も対象です。書き漏れがあれば、必要な明細書を確認し、更正の請求等による適用・増額を検討します。請求期限などの手続要件にも注意してください。

控除の順序が決まっている

同条第7項。

第四項の規定の適用がある場合には、法人税法第二編第一章第二節第二款の規定による法人税の額からの控除及び同項の規定による法人税の額からの控除については、同項の規定による控除は、同法第69条の2の規定による控除をした後に、かつ、同法第70条の規定による控除をする前に行うものとする。

条名を確認してください。法人税法69条の2は「分配時調整外国税相当額の控除」、70条は「仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除」です。外国税額控除は69条、所得税額控除は68条で、いずれも別の条です。

そして法人税法70条の2(税額控除の順序)は、こう定めています。

この款の規定による法人税の額からの控除については、まず第69条の2(分配時調整外国税相当額の控除)の規定による控除をし、次に前条〔=70条〕の規定による控除をした後において、第68条(所得税額の控除)及び第69条(外国税額の控除)の規定による控除をするものとする。

したがって全体の並びは、69条の2 → 措法66条の7第4項 → 70条 → 68条・69条 の順になります。

実務で迷いが生じるところ

  • 現地で払った税は全額控除できるか。みなし税額は各合算額が上限で、実際の控除には法人税法69条の控除限度額等も適用されます
  • 控除を受けたら所得はどうなるか。2項でグロスアップします
  • 外国関係会社が日本で源泉徴収されています。4項のルートです
  • 4項の書類を出し忘れた。5項は修正申告書・更正請求書も対象です。期限と添付書類を確認し、更正の請求等を検討します
  • 金額を少なく書いてしまいました。計算の基礎となる所得税等の額の記載を確認し、更正の請求等による増額を検討します
  • 控除の順序は。7項が69条の2(分配時調整外国税相当額の控除)の後、70条(仮装経理の更正に伴う控除)の前と定めています
  • TMKや投資法人の場合は。1項の主語から除かれており、3項が別に定めています

合算課税は「課税されて終わり」ではありません。現地で払った税と、日本で課された税の両方に、それぞれ別の調整ルートがあります。ただし4項には書類要件があります。出し忘れや記載漏れがあれば、請求期限も含めて更正の請求等の可否を確認してください。海外子会社の合算が生じている会社は、申告書の添付書類の点検からご相談ください。

根拠条文

  • 租税特別措置法第66条の7(内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例)第1項・第2項・第4項・第5項・第6項・第7項・第8項
  • 租税特別措置法第66条の6第1項・第8項・第10項(合算課税)
  • 法人税法第68条(所得税額の控除)、第69条(外国税額の控除)、第69条の2(分配時調整外国税相当額の控除)、第70条(仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除)、第70条の2(税額控除の順序)
  • 地方法人税法第12条
  • 地方税法第23条第1項第3号、第292条第1項第3号(法人税割)

特定目的会社等に係る第3項の特例、政令が定める計算方法の細目、第9項以降の調整は本稿では扱っていません。個別の計算には現地の納税証明と申告書の確認が必要です。

本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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