同じ所得に、外国と日本の両方で税がかかる。この二重課税を、日本の税額から差し引くことで調整するのが外国税額控除です。
損金算入や必要経費算入ではなく、税額そのものから引く制度です。ただし、いくらでも引けるわけではありません。
なお、外国税額控除の適用を受ける場合、その外国税は必要経費・損金に算入しないこととされています(所得税法46条、法人税法41条)。控除と損金算入は、同時には使えません。
条文の定義
居住者については所得税法第95条第1項、内国法人については法人税法第69条第1項に置かれています。
居住者が各年において外国所得税(外国の法令により課される所得税に相当する税で政令で定めるものをいう。……)を納付することとなる場合には、……その年において生じた国外所得金額……に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額(以下この条において「控除限度額」という。)を限度として、その外国所得税の額(……以下この条において「控除対象外国所得税の額」という。)をその年分の所得税の額から控除する。
法人税法第69条第1項も同じ構造で、「外国法人税」「控除対象外国法人税の額」という語を使っています。
骨格
| 論点 | 居住者 | 内国法人 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 所得税法95条 | 法人税法69条 |
| 対象となる税 | 外国所得税(政令で定めるもの) | 外国法人税(政令で定めるもの) |
| 控除限度額の計算 | 所得税の額 × 調整国外所得金額 ÷ 所得総額(所得税法施行令222条1項) | 法人税の額 × 調整国外所得金額 ÷ 所得金額(法人税法施行令142条1項) |
| 繰越し | 前3年以内の各年(95条2項・3項) | 前3年内事業年度(69条2項・3項) |
| 申告要件 | 所得税法95条10項(当年分)・11項(繰越分) | 法人税法69条25項(当年分)・26項(繰越分) |
控除限度額は「日本の税額のうち、国外所得に対応する部分」です。日本の税額を超えて還付される制度ではありません。
最初に確認すべきこと ── 控除できない外国税がある
条文は、控除の対象となる額から一定のものを除いています。
法人税法第69条第1項の括弧書きは、「その所得に対する負担が高率な部分として政令で定める外国法人税の額」「内国法人の通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して生じた所得に対して課される外国法人税の額」などを除外しています。
所得税法第95条第1項の括弧書きにも除外が置かれていますが、法人税法と文言が同じではありません。個人と法人で条文を読み替えないでください。
外国で払った税が、そのまま全額引けるとは限りません。ここが最初の確認点です。
申告要件がある
所得税法第95条第10項は、確定申告書・修正申告書・更正請求書に控除を受けるべき金額及びその計算に関する明細を記載した書類、外国所得税を課されたことを証する書類等の添付がある場合に限り適用するとしています。
法人税法第69条第25項も同様に、明細書の添付と、証する書類の保存を要件としています。
書類がなければ、原則として使えません。法人税法第69条第28項には、書類の保存がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認めるときの定めがあります。
さらに両条とも、控除される金額は、税務署長において特別の事情があると認める場合を除くほか、明細書に記載された金額を限度とする旨を定めています。
繰越しには、もう一段の要件があります。所得税法第95条第11項・法人税法第69条第26項は、繰越控除限度額等に係る年(事業年度)のうち最も古い年以後の各年分の申告書等に、その各年の控除限度額と納付することとなった控除対象外国所得税(法人税)の額を記載した書類の添付があり、かつ適用を受けようとする年分の申告書等に所定の書類の添付がある場合に限り適用するとしています。途中の年で添付が切れていると、繰越しが使えません。
実務で迷いが生じるところ
- 源泉徴収された外国の税は、すべて外国所得税・外国法人税に当たるのか。「政令で定めるもの」という限定があります
- 租税条約の限度税率を超えて源泉徴収された分はどうなるか。条約と国内法の関係を確認する必要があります
- 控除限度額が余った年、足りなかった年をどうつなぐか。3年の繰越しの条文があります
- 国外所得金額はどう計算するのか。「政令で定める金額」と書かれています
- 外国子会社からの配当はどう扱うか。別に法人税法23条の2の制度があります
- 後から外国の税額が減額されたらどうなるか。所得税法95条9項に定めがあります
外国税額控除は、計算の前に「その税が対象になるか」「書類がそろっているか」で決まります。海外取引を始める段階で、資料の取り方を含めてご相談ください。
根拠条文
- 所得税法第95条(外国税額控除)
- 所得税法施行令第222条(控除限度額の計算)
- 法人税法第69条(外国税額の控除)
- 法人税法施行令第142条(控除限度額の計算)
- 法人税法第23条の2(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)
- 各租税条約の二重課税の除去に関する規定
個別の判定には取引内容と資料の確認が必要です。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










