外国で払った法人税でも、税率が高すぎる部分は最初から外国税額控除の対象になりません。「高率負担部分」です。ただし基準は35%ひとつではありません。利子等には別の基準があり、しかも3段階です。
どこに書いてあるか
法人税法第69条第1項の括弧書きの中。除かれるものは4類型あります。
……その外国法人税の額(①その所得に対する負担が高率な部分として政令で定める外国法人税の額、②内国法人の通常行われる取引と認められないものとして政令で定める取引に基因して生じた所得に対して課される外国法人税の額、③内国法人の法人税に関する法令の規定により法人税が課されないこととなる金額を課税標準として外国法人税に関する法令により課されるものとして政令で定める外国法人税の額④その他政令で定める外国法人税の額を除く。以下この条において「控除対象外国法人税の額」という。)……
| 類型 | 政令 | 中身の例 |
|---|---|---|
| ① 高率負担部分 | 令142条の2第1〜3項 | 35%基準/利子等の10%・15%基準 |
| ② 通常行われない取引 | 同第5項・第6項 | 有利な条件での見合い貸付、特殊関係者からの貸付債権の譲受けに係る利子 |
| ③ 法人税が課されない金額を課税標準 | 同第7項 | みなし配当事由による交付金銭等に課される税など |
| ④ その他 | 同第8項 | CFC合算済みの配当に係る税、租税条約の限度税率を超えて課された部分(8項5号)など |
控除対象外国法人税の額の定義から除かれています。控除限度額の計算に入る前の段階で外れており、繰越し(69条2項3項)の対象にもなりません。
35%が基準(1項)
法人税法施行令第142条の2第1項。条見出しは「(外国税額控除の対象とならない外国法人税の額)」です。
……所得に対する負担が高率な部分の金額(次項及び第三項において「所得に対する負担が高率な部分の金額」という。)は、……内国法人が納付することとなる外国法人税の額のうち当該外国法人税を課す国又は地域において当該外国法人税の課税標準とされる金額に百分の三十五を乗じて計算した金額を超える部分の金額とする。
分母は「その外国法人税を課す国又は地域において課税標準とされる金額」です。日本の所得金額ではありません。現地の課税ベースで見ます。
注意してください。35%以下なら第1項の高率負担部分は生じませんが、それは全額が控除対象になるという意味ではありません。上の②③④の除外が別に働きます。特に条約の限度税率を超えて課された源泉税(8項5号)は、源泉税実務で最も頻繁に当たる除外です。
利子等は10%・15%・なしの3段階(2項)
同条第2項。ここを1項だけ読んで済ませると結論が変わります。
次の各号に掲げる内国法人が納付することとなる法第六十九条第四項第六号及び第八号に掲げる国外源泉所得(……「利子等」という。)の収入金額を課税標準として……源泉徴収の方法に類する方法により課される外国法人税(当該外国法人税が課される国又は地域において、当該外国法人税以外の外国法人税の額から控除されるものを除く。)については、前項の規定にかかわらず、当該外国法人税の額のうち当該利子等の収入金額の百分の十に相当する金額を超える部分の金額が所得に対する負担が高率な部分の金額に該当するものとする。ただし、当該内国法人の所得率(……)が百分の十を超え百分の二十以下であるときは……百分の十五に相当する金額を超える部分の金額が……該当するものとし、当該所得率が百分の二十を超えるときは、当該外国法人税の額のうち所得に対する負担が高率な部分の金額はないものとする。
| その内国法人の所得率 | 高率負担部分の基準 |
|---|---|
| 10%以下 | 利子等の収入金額の10%超の部分 |
| 10%超 20%以下 | 同15%超の部分 |
| 20%超 | 高率負担部分はない |
「所得率」は各号が定める分数で、おおむね納付事業年度と前2年内事業年度の調整所得金額の合計額を、総収入金額等の合計額で除した割合です(号ごとに分母が違います)。
2項の対象になるのは4類型の内国法人だけ
第2項各号。
一 金融業(金融商品取引法第二条第八項……に規定する金融商品取引業を含む。)を主として営む内国法人
二 生命保険業を主として営む内国法人
三 損害保険業を主として営む内国法人
四 前三号に掲げる事業以外の事業を主として営む内国法人(納付事業年度及び前二年内事業年度の利子等の収入金額の合計額を、当該合計額にこれらの事業年度の売上総利益の額の合計額……を加算した金額で除して計算した割合が百分の二十以上である内国法人に限る。)
普通の事業会社は、利子等の収入割合が20%未満なら第2項の適用自体がありません。その場合は第1項の35%基準に戻ります。
括弧書きの除外も同じです。現地で他の外国法人税から控除される源泉税は第2項の対象から外れ、第1項の35%基準で判定します。控除対象から外れるという意味ではありません。
みなし外国税額控除との関係は3項に答えがある
同条第3項。
外国法人税の額に……みなし納付外国法人税の額……が含まれているときは、当該外国法人税の額のうち所得に対する負担が高率な部分の金額は、まずみなし納付外国法人税の額から成るものとする。
高率負担部分は、まずタックス・スペアリング分に充てられます。実際に納付した分が先に切られるわけではありません。
個人にはこの制度がありません
所得税法施行令第222条の2(外国税額控除の対象とならない外国所得税の額)を全項見ても、「高率」「百分の三十五」「百分の十」という文言はありません。規定されているのは、通常行われない取引、所得税が課されない金額を課税標準とするもの、その他(条約限度税率の超過額など)です。
高率負担部分の除外は法人税側だけの制度です。個人に類推しないでください。
実務で迷いが生じるところ
- 35%は何に対する35%か。現地の課税標準です。日本の所得ではありません
- 配当や使用料の源泉税は10%基準の対象か。2項が引くのは69条4項6号(債券・預貯金・投資信託等の利子)と8号(貸付金利子)です。配当(7号)・使用料(9号)は入りません
- 所得率はどう計算するのか。2項各号の分数と、4項の「調整所得金額」の定義によります
- 除かれた部分は損金になるのか。控除と損金算入の選択の問題につながります
- 条約の限度税率を超えて源泉徴収された。8項5号で控除対象から外れます。まず還付請求の可否を検討してください
「現地で40%払ったから40%分引ける」とはなりません。進出先の税率が高い場合も、条約の限度税率を超えて源泉徴収された場合も、日本側で引ける額は思ったより小さくなります。進出先を決める段階、源泉徴収の届出を出す段階で効いてくる論点です。
根拠条文
- 法人税法第69条第1項(外国税額の控除)── 控除対象外国法人税の額の定義括弧
- 法人税法施行令第142条の2(外国税額控除の対象とならない外国法人税の額)第1項〜第8項
- 法人税法第69条第4項第6号・第8号(国外源泉所得のうち利子等)
- 所得税法施行令第222条の2(外国税額控除の対象とならない外国所得税の額)
令142条の2第4項の調整所得金額の詳細、および第5項〜第8項の各号の全内容は本稿では扱っていません。個別の判定には現地の課税標準と条約の確認が必要です。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










