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会社分割の後に株式を売る予定があると、適格分割にならないのか

事業の一部を別会社に移し、その後に会社の株式を売却する。事業承継やM&Aの準備では、こうした順序を検討することがあります。

このとき、「株式を売る予定があるから、会社分割は必ず非適格になる」とは限りません。反対に、「分割を先に済ませれば、後の売却は関係ない」ともいえません。判断を分けるのは、分割の類型と、誰がどの会社の株式を売るか、そして分割時点で何が予定されているかです。

「適格」は、売却益まで非課税になるという意味ではない

会社分割では、事業に属する資産や負債を、分割する会社から承継する会社へ移します。一定の要件を満たす適格分割では、内国法人が移転する資産・負債について、原則として分割直前の帳簿価額を基礎に処理します。資産の含み益への課税を、その移転時点では繰り延べる仕組みです。法人税法第62条の2第2項・第62条の3

これは、その後の株式売却益まで非課税にする制度ではありません。会社側の資産移転、分割に伴う株主側の取扱い、その後の株式譲渡は、それぞれ確認が必要です。

最初に、分割の二つの分類を確認する

「新しい会社を作るか」と「分割の対価を誰が持つか」は別の分類です。

新しい会社に事業を承継させるのが新設分割、既存の会社に承継させるのが吸収分割です。一方、税務上の分割型・分社型は、主に分割対価の行き先による区分です。株式を対価とする典型的な例では、次のように整理できます。

税務上の類型 対価となる株式の行き先
分割型分割 分割法人が受け取った対価株式の全部を、分割の日にその株主へ交付する
分社型分割 分割法人が受け取った対価株式を、分割の日にその株主へ交付せず会社に残す

無対価分割には別途の定義があり、対価の一部だけを株主に交付する場合にも個別の扱いがあります。「会社を分ける」という説明だけでは、税務上の類型は決まりません。法人税法第2条第12号の9・第12号の10

そのうえで、完全支配関係に基づく分割、支配関係に基づく分割、共同で事業を行うための分割など、どの要件で適格性を判断するのかを確認します。継続すべき関係や、事業・従業者についての条件は共通ではありません。独立して事業を行うための分割にも別の要件があります。法人税法第2条第12号の11・法人税法施行令第4条の3第6〜9項

分割した「元の会社」を売る場合――影響しない類型がある

国税庁は、同じ株主が100%保有する二つの会社の間で、吸収分割型分割を行う例を示しています。事業を渡す会社をA社、受け取る会社をB社としましょう。分割の対価となるB社株式は、A社を通じてその株主へ交付されます。

この類型では、分割後に継続が見込まれる必要があるのは、同じ株主とB社、つまり事業を承継した会社との完全支配関係です。株主がA社株式を売る予定があっても、それだけでこの継続要件を満たさなくなるわけではありません。

国税庁の回答も、この点を明示しています。ただし、回答は特定の類型における株式保有関係の要件を扱っています。他の適格要件を含めて、あらゆる分割後の売却を認める回答ではありません。国税庁:企業グループ内の分割型分割における株式の保有関係について

逆に、売る対象がB社株式で、その売却により継続を求められる完全支配関係が失われる予定なら、同じ説明はできません。売却対象を「会社の株式」と一括りにしないことが大切です。

分社型で受け取った株式を売る場合――予定売却が問題になる例

別の例として、二つの会社が事業を持ち寄り、共同で新会社を設立する分社型分割を考えます。元の会社は、事業を移す対価として新会社の株式を受け取ります。

共同事業の要件で適格性を判断し、株式継続保有要件が適用される場合には、分割により交付される株式の全部を、分割法人が継続して保有する見込みが問題になります。当初からその株式を売却する計画があるなら、この要件を満たせないことがあります。

国税庁の事例では、新会社の第三者割当増資や上場それ自体と、分割法人による保有株式の売却を区別しています。分割時から売却が見込まれていた場合と、分割時には具体的に予定されておらず後から決定した場合とでも、回答は異なります。国税庁:分割後に分割承継法人が上場する場合の株式継続保有要件について

なお、共同事業の類型でも、分割直前に分割法人のすべてについて他の者による支配関係がない場合には、この株式継続保有要件を除く規定があります。分割型には支配株主への交付株式に関する別の規定もあります。「共同事業なら全員が永久に株式を売れない」と一般化するのも適切ではありません。法人税法施行令第4条の3第8項本文・第6号

「予定していたか」は、後から付けた名前では決まらない

継続する見込みを判定するなら、分割時点の計画を確かめる必要があります。後日実際に売却したという結果だけでも、社内資料に「未定」と書いたことだけでも、十分ではありません。

たとえば、分割前から売却先との交渉が進んでいたのか、基本合意があったのか、分割が売買の実行条件になっていたのか。こうした資料を時系列で並べると、当初の計画と事後の変更を区別しやすくなります。

反対に、将来の売却可能性に抽象的に触れたことを、直ちに具体的な売却予定と同じように扱うこともできません。契約だけでなく、交渉や社内意思決定の実態を含めて検討します。

分割、現物出資、売却を一つの「適格取引」にまとめない

会社分割の後に株式を別会社へ現物出資し、さらに株式を売却する計画では、各段階を分けて判定します。適格分割と適格現物出資は別の制度であり、前の段階が適格だったことから、次も適格とはいえません。法人税法第2条第12号の11・第12号の14

一方、段階を分けて判定することは、後続取引を見なくてよいという意味でもありません。後の売却や再編の予定が、前の分割で求められる継続の見込みに関係することがあります。

また、法人税法第132条の2には、組織再編成に係る行為・計算によって法人税の負担を不当に減少させる結果となる場合の否認規定があります。事業上の目的があれば必ず適用を免れる、とまではいえません。適格要件への該当性と、この規定の検討は区別する必要があります。法人税法第132条の2

売却を考えるなら、分割前から三つの場面を描く

実務では、分割前、分割直後、予定する売却・再編の後という三つの場面の組織図を作ると、確認すべき関係が明確になります。

  • 誰が、どの会社の株式を、何%持っているか。
  • 分割の対価を誰が受け取り、その株式を最終的に誰が持つか。
  • 売却するのは元の会社の株式か、承継会社の株式か、さらに上の持株会社の株式か。
  • どの時点で、どこまで売却や後続再編が具体化しているか。

「分割の後に売る」という順序だけで答えを出すことはできません。売る株式と継続が必要な関係を特定してから、分割・株主・売却の課税をそれぞれ確認することが、検討の出発点になります。


※一般的な制度の説明です。個別取引の適格性や税額を示すものではありません。2026年9月21日に確認した法令本文と国税庁公表資料に基づきます。引用した国税庁質疑応答事例の表示上の法令基準日は2025年8月1日です。

本稿は2026年9月21日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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