海外に住む人から日本の不動産を買うとき、買主が代金の10.21%を天引きして国に納めます。個人が自宅を買う場合の例外はありますが、条件が2つあります。
対象となる所得
所得税法第161条第1項第5号。
国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物の譲渡による対価(政令で定めるものを除く。)
土地だけではありません。土地の上に存する権利(借地権など)、建物、その附属設備、構築物が入ります。
税率は10.21%
所得税法第213条第1項第2号。
第161条第1項第五号に掲げる国内源泉所得 その金額に百分の十の税率を乗じて計算した金額
これに復興特別所得税が上乗せされます。復興財確法28条2項が「所得税の額……に百分の二・一の税率を乗じて計算した金額」としているため、10% × 1.021 = 10.21% です。
譲渡益ではなく、譲渡対価の全額に対して10.21%です。売主が赤字でも天引きされます。
例外は「2つの条件を両方満たす場合」だけ
5号の括弧書き「政令で定めるものを除く」の中身が、所得税法施行令第281条の3です。条見出しは「(国内にある土地等の譲渡による対価)」です。
法第161条第1項第5号(国内源泉所得)に規定する政令で定める対価は、土地等(……)の譲渡による対価(その金額が一億円を超えるものを除く。)で、当該土地等を自己又はその親族の居住の用に供するために譲り受けた個人から支払われるものとする。
条件は2つです。
| 条件 | |
|---|---|
| ① | 譲渡対価の金額が1億円を超えないこと |
| ② | 買主が個人で、自己又はその親族の居住の用に供するために譲り受けたものであること |
両方を満たして、はじめて源泉徴収が不要になります。
①は「1億円を超えるものを除く」です。ちょうど1億円は除かれません(例外の対象に残ります)。1億円超で例外から外れます。
②の主体は「個人」です。法人が買う場合は、金額を問わず源泉徴収が必要です。そして「居住の用に供するため」です。投資用に買う個人は、1億円以下でも源泉徴収が必要になります。
「親族」が入っている点にも注意してください。子や親を住まわせるために買う場合も例外に入り得ます。
誰が納めるのか
所得税法第212条第1項。「支払をする者」=買主です。
……支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。
買主が納税義務者です。不動産業者でも司法書士でもありません。個人が買主でも、上の例外に当たらなければ義務を負います。
手付金にも及びます。「その支払の際」なので、手付金・中間金・残代金のそれぞれの支払時点で天引きします。
売主は確定申告で精算する
10.21%は前払いです。売主である非居住者は、譲渡所得を計算して確定申告し、源泉徴収された税額を精算します。
譲渡損が出ていれば、源泉徴収された分は還付されます。逆に譲渡益が大きければ追加で納付になります。10.21%を払って終わり、ではありません。
見落としやすい場面
- 売主が非居住者だと知らずに買いました。源泉徴収義務は買主にあります。売主の住所を契約前に確認する必要があります
- 登記簿の住所が国内でも、実際は海外に住んでいます。所得税法上の非居住者かどうかで判定します
- 相続で取得した不動産を、海外在住の相続人が売る。売主は非居住者です
- 共有で、一部の共有者だけが非居住者。その人に支払う対価が対象になります
- 法人が買主。金額を問わず源泉徴収が必要です
- 1億円ちょうど。「1億円を超えるものを除く」なので、例外の対象に残ります(他の条件を満たせば源泉徴収不要)
実務の順序
1. 契約前に、売主が非居住者かを確認する
2. 非居住者なら、例外(1億円以下 かつ 個人の居住用)に当たるかを確認する
3. 当たらなければ、契約書に源泉徴収の定めを入れる
4. 各回の支払時に10.21%を天引きし、翌月10日までに納付する
天引きを忘れて満額を送金すると、買主が自腹で納付することになります。海外に住む売主から不動産を買われる場合は、契約書を作る前にご相談ください。
根拠条文
- 所得税法第161条第1項第5号(国内源泉所得)
- 所得税法第212条第1項(源泉徴収義務)
- 所得税法第213条第1項第2号(徴収税額)
- 所得税法施行令第281条の3(国内にある土地等の譲渡による対価)
- 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法第28条第1項・第2項
譲渡所得の計算方法、非居住者の確定申告の手続、租税条約の適用関係は本稿では扱っていません。個別の判定には売主の居住地と取引条件の確認が必要です。
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。










