国際税務の基礎知識

税法上の「国又は地域」とは

条文の定義

税法の条文には、「外国」でも「国」でもなく「国又は地域」と書かれた箇所がある。まず確かめておきたいのは、この語自体を定義した規定があるかどうかである。

法人税法・所得税法・租税特別措置法・租税条約等実施特例法の原文をこの語で検索し、ヒットした条をすべて開いて読んだ限り、「国又は地域とは……をいう」という形でこの語自体を定義した規定は見当たらない。「国又は地域」は、条文が別の語を定義するときの材料として使われている。

その典型が法人税法82条である。同条は「所在地国」を次のように定義する。

次に掲げるものの区分に応じそれぞれ次に定める国又は地域(これらが二以上ある場合には、政令で定める国又は地域)をいう。

定義されているのは「所在地国」であって、「国又は地域」ではない。「国又は地域」は、定義語を組み立てる素材として置かれている。

骨格

論点 条文の定め
「国又は地域」自体の定義規定 法人税法・所得税法・租税特別措置法・租税条約等実施特例法を検索した限り見当たらない。他の語を定義する際の構成要素として使われている。
この語から組み立てられる定義語 所在地国・設立国・他方の国(法人税法82条)、本店所在地国(租税特別措置法66条の6)
この語が出てくる条 法人税法82条・23条の2、租税特別措置法66条の6ほか、所得税法95条の2。相続税法には出てこない。
この語を使わない条 法人税法69条(外国税額の控除)は「外国」「国外」を用いる。租税条約に関する部分では「締約国又は締約者」を用いて「相手国等」を定義しており、「国又は地域」は使っていない。
対比される語 租税条約等実施特例法2条の「相手国等」は「租税条約等の我が国以外の締約国又は締約者をいう」と定義される。

「所在地国」を作る素材としての「国又は地域」

法人税法82条は、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に関する定義を集めた条である。ここでは「所在地国」のほか「設立国」も、いずれも「国又は地域」を用いて定義されている。企業グループ等の一類型についても、次の書き方がされている。

会社等(イに掲げる企業集団に属するものを除く。)のうち、当該会社等の恒久的施設等の所在地国が当該会社等の所在地国以外の国又は地域であるもの

ここで比べられているのは会社等の所在地国と恒久的施設等の所在地国であり、その両方が「国又は地域」の単位で捉えられている。実効税率を計算する単位が「国」ではなく「国又は地域」であることが、条文の文言そのものから読み取れる。

タックスヘイブン対策税制の「本店所在地国」

租税特別措置法66条の6(タックスヘイブン対策税制とは)は、外国関係会社について「本店所在地国」という語を繰り返し用いる。その定義は括弧書きで置かれており、中身は「その本店又は主たる事務所の所在する国又は地域」である。ここでも定義されているのは「本店所在地国」であって「国又は地域」ではない。

同条が定める特定外国関係会社の一類型には、次の書き方がある。

租税に関する情報の交換に関する国際的な取組への協力が著しく不十分な国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域に本店又は主たる事務所を有する外国関係会社

指定の対象が「国」に限られず「地域」も含む形で書かれていることが、この一文から確認できる。

外国子会社配当等の益金不算入

法人税法23条の2(外国子会社配当益金不算入制度とは)は、益金不算入の対象から外れるもの(損金算入配当とは)を次の文言で定めている。

その剰余金の配当等の額の全部又は一部が当該外国子会社の本店又は主たる事務所の所在する国又は地域の法令において当該外国子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている剰余金の配当等の額に該当する場合におけるその剰余金の配当等の額

判断の材料になるのは、その国又は地域の「法令」における扱いである。国の法令に限るとは書かれていない。

個人課税に出てくる「国又は地域」

所得税法でこの語が出てくるのは95条の2である。同条が対象とする外国所得税は、次のように限定されている。

個人が住所を有し、一定の期間を超えて居所を有し、又は国籍その他これに類するものを有することにより当該住所、居所又は国籍その他これに類するものを有する国又は地域において課されるものに限る

課税する側の単位として「国又は地域」が使われ、住所・居所・国籍という個人側の結び付きがあわせて書き込まれている。

実務で迷いが生じるところ

横断して読むと、「外国」「国外」「国又は地域」「締約国又は締約者」「相手国等」という似た働きをする語が、条ごとに使い分けられていることが分かる。同じ外国税額控除の周辺でも、法人税法69条は「外国」「国外」を用いて「国又は地域」を用いず、所得税法95条の2は「国又は地域」を用いる。どの条がどの語を採っているかは条ごとに違う。記憶や類推で当てはめると語を取り違えるため、確認したい条にあたり、その条が実際に使っている語をそのまま読むほかない。

根拠条文

  • 法人税法第82条第1項第2号ロ・第7号(定義)
  • 法人税法第23条の2第2項第1号(外国子会社から受ける配当等の益金不算入)
  • 法人税法第69条第4項第15号(外国税額の控除)
  • 租税特別措置法第66条の6第2項第2号イ・同項第2号ニ
  • 所得税法第95条の2第1項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例に係る外国税額控除の特例)
  • 租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律第2条第1項第3号(定義)

本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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