組織再編の税務

適格分割(分割型分割と分社型分割)とは

本稿では、分割型分割と分社型分割の違い、適格分割の条文上の4類型、適格の場合の課税上の効果を整理します。共同事業要件や独立要件など、政令に定める要件のすべてを列挙するものではありません。

条文の定義

会社を分けて別の会社に事業を移すことを「分割」といいます。分割には、分けてできた対価をだれが受け取るかによって二つの型があります。まず分割型分割の定義を確認します。

次に掲げる分割をいう。
イ
分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産(分割により分割承継法人によつて交付される当該分割承継法人の株式(出資を含む。以下第十二号の十七までにおいて同じ。)その他の資産をいう。以下第十二号の十一までにおいて同じ。)の全てが当該分割の日において当該分割法人の株主等に交付される場合又は分割により分割対価資産の全てが分割法人の株主等に直接に交付される場合のこれらの分割
ロ
分割対価資産がない分割(以下この号及び次号において「無対価分割」という。)で、その分割の直前において、分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場合又は分割法人が分割承継法人の株式を保有していない場合の当該無対価分割

分割型分割とは、分割で事業を引き継ぐ分割承継法人から渡される株式などの対価が、分割をした会社(分割法人)自身ではなく、その株主に渡る分割のことです。会社の一部門をそのまま切り出して、株主に新会社の株式を配るイメージに近い型です。続いて分社型分割の定義です。

次に掲げる分割をいう。
イ
分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産が当該分割の日において当該分割法人の株主等に交付されない場合の当該分割(無対価分割を除く。)
ロ
無対価分割で、その分割の直前において分割法人が分割承継法人の株式を保有している場合(分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場合を除く。)の当該無対価分割

分社型分割とは、対価が株主にではなく分割法人自身に渡る分割のことです。分割法人が分割承継法人の株式を自分で保有し続ける形になり、事業を子会社として切り出すイメージに近い型です。組織再編税制全体の中で分割がどの位置づけにあるかは、組織再編税制の全体像で確認できます。

骨格

論点 条文の定め
分割型分割の意味 分割対価資産が、分割の日に又は直接に分割法人の株主等に交付される場合をいうと定義されています。
分社型分割の意味 分割対価資産が分割の日において分割法人の株主等に交付されない場合をいうと定義されています。
適格分割の要件 分割承継法人等の株式以外の資産が交付されないことを前提に、完全支配関係・支配関係・共同事業・独立のいずれかの要件に該当することが求められます。
適格分割型分割の定義 分割型分割のうち適格分割に該当するものをいうと定義されています。
適格分社型分割の定義 分社型分割のうち適格分割に該当するものをいうと定義されています。
原則としての資産等の扱い 合併又は分割により資産・負債の移転をしたときは、その時の価額による譲渡があったものとして所得の金額を計算するのが原則です。
適格分割型分割の効果 資産及び負債を、直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして所得の金額を計算します。
適格分社型分割の効果 資産及び負債を、直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして所得の金額を計算します。

適格分割と認められるための要件は何か

分割型分割と分社型分割のどちらであっても、適格分割に該当するかどうかによって、移転する資産及び負債の取扱いが変わります。適格分割の定義は次のとおりです。

次のいずれかに該当する分割で分割対価資産として分割承継法人又は分割承継親法人(分割承継法人との間に当該分割承継法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係がある法人をいう。)のうちいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されないもの(当該株式が交付される分割型分割にあつては、当該株式が分割法人の発行済株式等の総数又は総額のうちに占める当該分割法人の各株主等の有する当該分割法人の株式の数(出資にあつては、金額)の割合に応じて交付されるものに限る。)をいう。

まず、対価として渡せるのは分割承継法人か分割承継親法人いずれか一の法人の株式に限られ、それ以外の資産が混ざっていないことが前提になります。そのうえで、次のいずれかに当てはまる分割である必要があります。

一つ目は、「その分割に係る分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該分割」です。分割法人と分割承継法人が、完全支配関係というきわめて強いグループ関係にある場合の分割を指します。

二つ目は、「その分割に係る分割法人と分割承継法人との間にいずれか一方の法人による支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該分割」で、こちらは完全支配関係より緩やかな支配関係の場合です。この場合には、主要な資産・負債の移転、従業者のおおむね百分の八十以上の継続従事、分割事業の継続という三つの要件をあわせて満たす必要があると定められています。

三つ目は、「その分割に係る分割法人と分割承継法人(当該分割が法人を設立する分割である場合にあつては、当該分割法人と他の分割法人)とが共同で事業を行うための分割として政令で定めるもの」で、一つ目(完全支配関係がある場合)にも二つ目(支配関係がある場合)にも該当しない分割のうち、共同で事業を行うための一定の要件を満たすものが対象になる型です。四つ目は、「その分割(一の法人のみが分割法人となる分割型分割に限る。)に係る分割法人の当該分割前に行う事業を当該分割により新たに設立する分割承継法人において独立して行うための分割として政令で定めるもの」で、一つの会社が自社の事業を新しく設立する会社に独立させて引き継がせる場合の型です。要件の中身は分割ごとの事情によって当てはめが変わるため、この記事では条文の枠組みだけを示します。適格合併の要件との共通点や違いは、適格合併の要件で整理しています。

この適格分割に該当する分割型分割を「適格分割型分割」、適格分割に該当する分社型分割を「適格分社型分割」といいます。

分割型分割のうち適格分割に該当するものをいう。

分社型分割のうち適格分割に該当するものをいう。

適格分割型分割と適格分社型分割で効果はどう違うのか

分割で資産や負債を移すと、原則としては時価で譲渡したものとして所得の金額を計算します。

内国法人が合併又は分割により合併法人又は分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をしたときは、当該合併法人又は分割承継法人に当該移転をした資産及び負債の当該合併又は分割の時の価額による譲渡をしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

ここに例外を設けているのが62条の2と62条の3で、適格分割型分割と適格分社型分割とで条文の書きぶりがはっきり分かれています。適格分割型分割については、次のとおり「引継ぎ」という言葉が使われています。

内国法人が適格分割型分割により分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をしたときは、前条第一項の規定にかかわらず、当該分割承継法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格分割型分割の直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

これに対して適格分社型分割については、次のとおり「譲渡」という言葉が使われています。

内国法人が適格分社型分割により分割承継法人にその有する資産又は負債の移転をしたときは、第六十二条第一項(合併及び分割による資産等の時価による譲渡)の規定にかかわらず、当該分割承継法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格分社型分割の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

どちらも金額の基準は「直前の帳簿価額」で共通しており、時価との差額に課税が生じない点は同じです。違うのは行為の性質を表す言葉で、適格分割型分割は資産及び負債の「引継ぎ」、適格分社型分割は資産及び負債の「譲渡」と位置づけられています。分割型分割では対価が株主に渡るため株主側の課税も論点になりますが、その扱いは組織再編と株主の課税で確認できます。

分割対価の一部だけを株主に交付した場合はどうなるのか

分割型分割と分社型分割は条文上はきれいに分かれていますが、実際の分割対価資産の一部だけが株主に交付されることもあります。この場合の扱いを定めているのが62条の6です。

分割法人が分割により交付を受ける第二条第十二号の九イ(定義)に規定する分割対価資産(次項において「分割対価資産」という。)の一部のみを当該分割法人の株主等に交付をする分割(二以上の法人を分割法人とする分割で法人を設立するものを除く。)が行われたときは、分割型分割と分社型分割の双方が行われたものとみなす。

分割対価資産の一部だけが分割法人の株主等に交付された場合には、その分割は分割型分割と分社型分割の双方が行われたものとみなされます。株主に渡った部分は分割型分割として、分割法人の手元に残った部分は分社型分割として、それぞれ扱われることになります。

実務で迷いが生じるところ

  • 分割型分割か分社型分割かは、分割対価資産が分割の日に分割法人の株主等に交付されるか、株主等に直接交付されるかで決まり、事業の切り出し方そのもので決まるわけではありません。
  • 対価がない無対価分割も、分割の直前の株式保有関係によって分割型分割になるか分社型分割になるかが条文上振り分けられています。
  • 適格分割に該当するかどうかと、分割型分割か分社型分割かは別の判定であり、両方を満たして初めて適格分割型分割または適格分社型分割になります。
  • 適格分割型分割の効果は「引継ぎ」、適格分社型分割の効果は「譲渡」と条文の言葉が異なりますが、いずれも直前の帳簿価額を基準とする点は共通しています。
  • 分割対価資産の一部だけが株主に交付された場合は、一つの分割の中で分割型分割部分と分社型分割部分が併存する扱いになります。
  • 完全支配関係や支配関係の有無、共同事業要件や独立要件への該当性は、政令の定めを個別の事実関係にあてはめて確認する必要があります。

根拠条文

本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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