組織再編の税務

株式交付計画の記載事項と譲渡損益繰延べの特例とは

条文の定義

株式交付は、会社法774条の2以下に置かれた組織再編行為です。まず、株式交付をする株式会社に課される基本的な義務を確認します。

株式会社は、株式交付をすることができる。この場合においては、株式交付計画を作成しなければならない。

株式会社は株式交付をすることができ、その場合には株式交付計画を作成しなければなりません。株式交付をする会社を株式交付親会社、その対象となる会社を株式交付子会社といい、会社法774条の3の中で次のとおり定義されています。

株式交付子会社(株式交付親会社(株式交付をする株式会社をいう。以下同じ。)が株式交付に際して譲り受ける株式を発行する株式会社をいう。以下同じ。)の商号及び住所

株式交付親会社は株式交付をする株式会社、株式交付子会社はその株式を譲り受けられる株式会社をいいます。株式交付は、金銭ではなく自社の株式を対価として他社を子会社化する手法です。組織再編税制全体の中での位置づけは組織再編税制の全体像で整理しています。

骨格

論点 条文の定め
株式交付計画の作成義務 会社法774条の2
株式交付親会社・株式交付子会社の定義 会社法774条の3
株式交付計画の記載事項 会社法774条の3
法人株主の譲渡損益の繰延べ 租税特別措置法66条の2
個人株主の譲渡所得等の課税の特例 租税特別措置法37条の13の4
対価の80パーセント基準(両特例に共通する除外要件) 租税特別措置法66条の2、37条の13の4
株式交付親会社が同族会社に該当する場合の除外(両特例に共通する除外要件) 租税特別措置法66条の2、37条の13の4

株式交付計画にはどのような事項を定めるのか

会社法774条の3は、株式交付計画に定めるべき事項を次のとおり規定しています。

株式会社が株式交付をする場合には、株式交付計画において、次に掲げる事項を定めなければならない。

主な記載事項の一つが、譲り受ける株式の数の下限です。

株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)の下限

株式交付に応じるかは株主の任意なので、下限を定めておく必要があります。対価の株式数については、次のとおりです。

株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の株式の譲渡人に対して当該株式の対価として交付する株式交付親会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式交付親会社の資本金及び準備金の額に関する事項

資本金及び準備金の額に関する事項もあわせて定めます。割当てについては、次のとおりです。

株式交付子会社の株式の譲渡人に対する前号の株式交付親会社の株式の割当てに関する事項

このほか金銭等を対価とする場合の事項や新株予約権等の譲受けに関する事項なども定めます。効力発生日は次のとおりです。

株式交付がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)

効力発生日は必ず定めます。株式交換・株式移転も自社株式を対価に他社を完全子会社化する手法ですが、株式交付は完全子会社化を前提としない点で異なります。両者の違いは株式交換・株式移転で比較しています。

法人株主の譲渡損益はどう扱われるのか

株式交付における法人株主の譲渡損益の取扱いは、法人税法本体ではなく租税特別措置法66条の2の特例として定められています。対象と除外は次のとおりです。

法人が、その有する株式(以下この項において「所有株式」という。)を発行した他の法人を会社法第七百七十四条の三第一項第一号に規定する株式交付子会社とする株式交付により当該所有株式を譲渡し、当該株式交付に係る株式交付親会社(同号に規定する株式交付親会社をいう。以下この条において同じ。)の株式の交付を受けた場合(当該株式交付により交付を受けた当該株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちに占める割合が百分の八十に満たない場合並びに当該株式交付の直後の当該株式交付親会社が法人税法第二条第十号に規定する同族会社(同号に規定する同族会社であることについての判定の基礎となつた株主のうちに同号に規定する同族会社でない法人がある場合には、当該法人をその判定の基礎となる株主から除外して判定するものとした場合においても同号に規定する同族会社となるものに限る。)に該当する場合を除く。)

所有株式を発行した他の法人を株式交付子会社とする株式交付により、その株式を譲渡し株式交付親会社の株式の交付を受けた場合が対象です。ただし、交付を受けた株式の価額の割合が100分の80に満たない場合と、株式交付の直後の株式交付親会社が同族会社(判定の基礎となる株主から同族会社でない法人を除外してもなお同族会社となるものに限ります)に該当する場合は、対象から除かれます。この場合の法人税法61条の2の適用は、次のとおりです。

における法人税法第六十一条の二第一項の規定の適用については、同項第一号に掲げる金額は、当該所有株式の当該株式交付の直前の帳簿価額に相当する金額に株式交付割合(当該株式交付により交付を受けた当該株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(剰余金の配当として交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を除く。)のうちに占める割合をいう。)を乗じて計算した金額と当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(当該株式交付親会社の株式の価額並びに剰余金の配当として交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を除く。)とを合計した金額とする。

租税特別措置法66条の2は、法人税法61条の2第1項の「同項第一号に掲げる金額」を、次の金額に置き換えます。具体的には、当該所有株式の株式交付の直前の帳簿価額に相当する金額に株式交付割合を乗じた金額と、交付を受けた金銭及び金銭以外の資産の額(株式交付親会社の株式の価額と剰余金の配当を除きます)の合計額とを合計した金額です。ここでいう株式交付割合は剰余金の配当として交付を受けた金銭等を除いて計算される値であり、対象となるかどうかを判定する100分の80の基準とは、計算の対象が異なります。

個人株主の譲渡所得等はどう扱われるのか

個人株主にも同様の特例が租税特別措置法37条の13の4に置かれています。対象と除外は次のとおりです。

個人が、その有する株式(以下この項において「所有株式」という。)を発行した法人を会社法第七百七十四条の三第一項第一号に規定する株式交付子会社とする株式交付により当該所有株式の譲渡をし、当該株式交付に係る株式交付親会社(同号に規定する株式交付親会社をいう。以下この条において同じ。)の株式の交付を受けた場合(当該株式交付により交付を受けた当該株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちに占める割合が百分の八十に満たない場合並びに当該株式交付の直後の当該株式交付親会社が法人税法第二条第十号に規定する同族会社(同号に規定する同族会社であることについての判定の基礎となつた株主のうちに同号に規定する同族会社でない法人又は所得税法第二条第一項第八号に規定する人格のない社団等がある場合には、当該法人又は人格のない社団等をその判定の基礎となる株主から除外して判定するものとした場合においても法人税法第二条第十号に規定する同族会社となるものに限る。)に該当する場合を除く。)

所有株式を発行した法人を株式交付子会社とする株式交付により、その譲渡をし株式交付親会社の株式の交付を受けた場合が対象です。除外は法人株主とほぼ同じですが、同族会社の判定で所得税法2条に規定する人格のない社団等も除外対象に加わる点が、措置法66条の2とは異なります。この場合の譲渡所得等の適用は、次のとおりです。

における第三十七条の十から前条まで又は所得税法第二十七条、第三十三条若しくは第三十五条の規定の適用については、当該譲渡をした所有株式(当該株式交付により交付を受けた金銭又は金銭以外の資産(当該株式交付親会社の株式を除く。)がある場合には、当該所有株式のうち、当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(当該株式交付親会社の株式の価額を除く。)に対応する部分以外のものとして政令で定める部分)の譲渡がなかつたものとみなす。

金銭等の対価に対応する部分として政令で定める部分を除き、譲渡がなかったものとみなされます。株式のみが対価の部分には、譲渡所得等が生じません。株主側の課税は組織再編と株主の課税で扱っています。

実務で迷いが生じるところ

  • 措置法66条の2・37条の13の4は、法人税法2条の適格組織再編成の要件を課すものではなく、会社法上の株式交付であることを前提に、対価要件と同族会社除外で判定します。
  • 対象となるかどうかを判定する100分の80の基準の計算に、剰余金の配当を除く定めはありません。剰余金の配当を除いて計算するのは、繰延べ額の計算に使う株式交付割合のほうです。両者を混同しないよう注意が必要です。
  • 同族会社への該当判定は、株主から同族会社でない法人(個人株主の場合は人格のない社団等も)を除外してもなお同族会社となるかという、通常とは異なる基準で行われます。
  • 株式交付計画に定める株式の算定方法や資本金及び準備金の額に関する事項は対価の内容そのものに関わるため、記載内容を具体的に確認する必要があります。
  • 個人株主について、譲渡がなかったものとみなされない部分の範囲は政令で定めるものとされています。その具体的な算定方法は、租税特別措置法施行令を確認する必要があります。
  • 法人株主についても、外国法人である場合の適用に関する事項や、交付を受けた株式交付親会社の株式の取得価額など、政令に委任されている事項があります。

根拠条文

  • 会社法第774条の2(株式交付計画の作成)/引用した文言:「株式会社は、株式交付をすることができる。この場合においては、株式交付計画を作成しなければならない。」
  • 会社法第774条の3第1項柱書(株式交付計画)/引用した文言:「株式会社が株式交付をする場合には、株式交付計画において、次に掲げる事項を定めなければならない。」
  • 会社法第774条の3第1項第1号(株式交付計画)/引用した文言:「株式交付子会社(株式交付親会社(株式交付をする株式会社をいう。以下同じ。)が株式交付に際して譲り受ける株式を発行する株式会社をいう。以下同じ。)の商号及び住所」
  • 会社法第774条の3第1項第2号(株式交付計画)/引用した文言:「株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数(株式交付子会社が種類株式発行会社である場合にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)の下限」
  • 会社法第774条の3第1項第3号(株式交付計画)/引用した文言:「株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の株式の譲渡人に対して当該株式の対価として交付する株式交付親会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該株式交付親会社の資本金及び準備金の額に関する事項」
  • 会社法第774条の3第1項第4号(株式交付計画)/引用した文言:「株式交付子会社の株式の譲渡人に対する前号の株式交付親会社の株式の割当てに関する事項」
  • 会社法第774条の3第1項第11号(株式交付計画)/引用した文言:「株式交付がその効力を生ずる日(以下この章において「効力発生日」という。)」
  • 租税特別措置法第66条の2第1項(株式交付があった場合の株式の譲渡損益の計上の特例)/引用した文言:「法人が、その有する株式(以下この項において「所有株式」という。)を発行した他の法人を会社法第七百七十四条の三第一項第一号に規定する株式交付子会社とする株式交付により当該所有株式を譲渡し、当該株式交付に係る株式交付親会社(同号に規定する株式交付親会社をいう。以下この条において同じ。)の株式の交付を受けた場合(当該株式交付により交付を受けた当該株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちに占める割合が百分の八十に満たない場合並びに当該株式交付の直後の当該株式交付親会社が法人税法第二条第十号に規定する同族会社(同号に規定する同族会社であることについての判定の基礎となつた株主のうちに同号に規定する同族会社でない法人がある場合には、当該法人をその判定の基礎となる株主から除外して判定するものとした場合においても同号に規定する同族会社となるものに限る。)に該当する場合を除く。)における法人税法第六十一条の二第一項の規定の適用については、同項第一号に掲げる金額は、当該所有株式の当該株式交付の直前の帳簿価額に相当する金額に株式交付割合(当該株式交付により交付を受けた当該株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(剰余金の配当として交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を除く。)のうちに占める割合をいう。)を乗じて計算した金額と当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(当該株式交付親会社の株式の価額並びに剰余金の配当として交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額を除く。)とを合計した金額とする。」
  • 租税特別措置法第37条の13の4第1項(株式等を対価とする株式の譲渡に係る譲渡所得等の課税の特例)/引用した文言:「個人が、その有する株式(以下この項において「所有株式」という。)を発行した法人を会社法第七百七十四条の三第一項第一号に規定する株式交付子会社とする株式交付により当該所有株式の譲渡をし、当該株式交付に係る株式交付親会社(同号に規定する株式交付親会社をいう。以下この条において同じ。)の株式の交付を受けた場合(当該株式交付により交付を受けた当該株式交付親会社の株式の価額が当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額のうちに占める割合が百分の八十に満たない場合並びに当該株式交付の直後の当該株式交付親会社が法人税法第二条第十号に規定する同族会社(同号に規定する同族会社であることについての判定の基礎となつた株主のうちに同号に規定する同族会社でない法人又は所得税法第二条第一項第八号に規定する人格のない社団等がある場合には、当該法人又は人格のない社団等をその判定の基礎となる株主から除外して判定するものとした場合においても法人税法第二条第十号に規定する同族会社となるものに限る。)に該当する場合を除く。)における第三十七条の十から前条まで又は所得税法第二十七条、第三十三条若しくは第三十五条の規定の適用については、当該譲渡をした所有株式(当該株式交付により交付を受けた金銭又は金銭以外の資産(当該株式交付親会社の株式を除く。)がある場合には、当該所有株式のうち、当該株式交付により交付を受けた金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額(当該株式交付親会社の株式の価額を除く。)に対応する部分以外のものとして政令で定める部分)の譲渡がなかつたものとみなす。」

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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