組織再編の税務

適格現物出資とは、条文上どのように定義されるのか

本稿では、適格現物出資の定義・対象からの除外・課税上の効果を整理します。共同事業要件の詳細と取得価額の具体的な計算は、関係する政令で確認する事項として区別します。

条文の定義

組織再編税制の全体像は組織再編税制の全体像で扱っていますが、ここでは現物出資のうち税務上「適格現物出資」として扱われるものの定義と、適格現物出資に認められる効果を、条文に沿って確認します。

現物出資の当事者を指す呼び方は、法人税法2条に定められています。まず、資産を移す側です。

現物出資によりその有する資産の移転を行い、又はこれと併せてその有する負債の移転を行つた法人をいう。

これが現物出資法人の定義です。資産の移転にあわせて負債の移転を行う場合も含まれます。次に、資産を受け取る側です。

現物出資により現物出資法人から資産の移転を受け、又はこれと併せて負債の移転を受けた法人をいう。

資産を受け取る側は被現物出資法人と呼ばれます。この現物出資法人と被現物出資法人との間の現物出資のうち、一定の要件を満たすものだけが適格現物出資として扱われます。法人税法2条は、次のように定めています。

次のいずれかに該当する現物出資(被現物出資法人である外国法人に国内にある不動産その他の政令で定める資産(以下この号において「国内不動産等」という。)、国内事業所等(内国法人にあつては第六十九条第四項第一号(外国税額の控除)に規定する本店等をいい、外国法人にあつては恒久的施設をいう。)を通じて行う事業に係る資産(外国法人の発行済株式等の総数又は総額の百分の二十五以上に相当する数又は金額の株式を有する場合におけるその外国法人の株式を除く。)若しくは負債(以下この号において「国内資産等」という。)又は内国法人の工業所有権、著作権その他の政令で定める資産(以下この号において「無形資産等」という。)の移転を行うもの(当該国内不動産等、国内資産等及び無形資産等の全部が当該移転により当該被現物出資法人である外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係る資産又は負債となるものとして政令で定めるものを除く。)、外国法人が内国法人又は他の外国法人に第百三十八条第一項第一号(国内源泉所得)に規定する本店等(以下この号において「本店等」という。)を通じて行う事業に係る資産(国内不動産等を除く。)又は負債(以下この号において「外国法人国外資産等」という。)の移転を行うもの(当該他の外国法人に外国法人国外資産等の移転を行うものにあつては、当該外国法人国外資産等の全部又は一部が当該移転により当該他の外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係る資産又は負債となるものに限る。)及び内国法人が外国法人に第六十九条第四項第一号に規定する国外事業所等を通じて行う事業に係る資産又は負債(以下この号において「内国法人国外資産等」という。)の移転を行うもので当該内国法人国外資産等の全部又は一部が当該移転により当該外国法人の本店等を通じて行う事業に係る資産又は負債となるもの(国内資産等の移転を行うものに準ずるものとして政令で定めるものに限る。)並びに新株予約権付社債に付された新株予約権の行使に伴う当該新株予約権付社債についての社債の給付を除き、現物出資法人に被現物出資法人の株式のみが交付されるものに限る。)をいう。

その現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該現物出資

その現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人との間にいずれか一方の法人による支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該現物出資のうち、次に掲げる要件の全てに該当するもの

(1)

当該現物出資により現物出資事業(現物出資法人の現物出資前に行う事業のうち、当該現物出資により被現物出資法人において行われることとなるものをいう。ロにおいて同じ。)に係る主要な資産及び負債が当該被現物出資法人に移転していること。

(2)

当該現物出資の直前の現物出資事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該現物出資後に当該被現物出資法人の業務(当該被現物出資法人との間に完全支配関係がある法人の業務並びに当該現物出資後に行われる適格合併により当該現物出資事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該合併法人及び当該合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。)に従事することが見込まれていること。

(3)

当該現物出資に係る現物出資事業が当該現物出資後に当該被現物出資法人(当該被現物出資法人との間に完全支配関係がある法人並びに当該現物出資後に行われる適格合併により当該現物出資事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該合併法人及び当該合併法人との間に完全支配関係がある法人を含む。)において引き続き行われることが見込まれていること。

その現物出資に係る現物出資法人と被現物出資法人(当該現物出資が法人を設立する現物出資である場合にあつては、当該現物出資法人と他の現物出資法人)とが共同で事業を行うための現物出資として政令で定めるもの

定義の括弧書きは、外国法人が関わる一定の資産・負債の移転と、新株予約権付社債の給付を対象から除いています。ただし、国内資産等が移転先の外国法人の日本の恒久的施設に残る一定の場合には、除外の例外があります。移転元・移転先と資産の帰属を分けて確認します。具体的な区分は下の表で整理します。対価は被現物出資法人の株式のみに限られます。

適格現物出資に当たるかどうかは、現物出資法人と被現物出資法人との関係の強さに応じて、イ・ロ・ハの3つの型に分かれます。この分け方は適格分割にも共通しています。

骨格

論点 条文の定め
取引の当事者 資産を移す現物出資法人と、移転を受ける被現物出資法人との間の取引であること
対価の限定 交付されるものが被現物出資法人の株式のみであること。新株予約権付社債に付された新株予約権の行使に伴う社債の給付を行うものは対象から除かれること
完全支配関係のケース 両法人の間に、いずれか一方による完全支配関係その他政令で定める関係があること
支配関係のケース 支配関係があり、主要な資産・負債の移転、従業者のおおむね百分の八十以上の引継ぎ、事業の継続という3要件のすべてに該当すること
共同事業のケース イ又はロに該当する現物出資以外の現物出資のうち、共同で事業を行うための現物出資として政令で定める要件に該当すること
外国法人が関わる場合の除外 移転元・移転先、資産・負債の帰属に応じて除外を判定すること。内国法人への移転が除外される類型や、外国法人の恒久的施設に係る除外の例外もあること
適格現物出資の効果 移転をした資産・負債を、直前の帳簿価額により譲渡したものとして所得の金額を計算すること
取得価額など細目 資産・負債の取得価額その他必要な事項は、政令で定めること

定義の括弧書きが除く取引は何か

外国法人が関われば一律に適格から外れるわけではありません。法人税法2条12号の14の括弧書きは、次の取引を区別しています。

移転の類型 除外される範囲と例外
外国法人への国内不動産等・国内資産等・内国法人の無形資産等の移転 原則として除外されます。ただし、移転したこれらの資産・負債の全部が、その外国法人の恒久的施設を通じる事業に係る資産・負債となるものとして政令で定める取引は、この除外から外れます。
外国法人からの外国法人国外資産等の移転 内国法人への移転も除外対象です。他の外国法人への移転は、移転した資産・負債の全部又は一部が、その外国法人の恒久的施設を通じる事業に係るものとなる場合に限って除外されます。
内国法人から外国法人への内国法人国外資産等の移転 全部又は一部が移転先の外国法人の本店等を通じる事業に係るものとなる取引のうち、国内資産等の移転に準ずるものとして政令で定める取引が除外されます。
新株予約権付社債の給付 その社債に付された新株予約権の行使に伴う社債の給付は除外されます。

例えば、国内資産を外国法人へ移す場合でも、上記の恒久的施設に係る例外を満たすかどうかで結論が変わります。除外に該当しないことを確認したうえで、株式のみという対価の要件と、イ・ロ・ハの各要件を判定します。

帳簿価額による譲渡とは、どのような効果か

適格現物出資に該当した場合の効果は、法人税法62条の4に定められています。

内国法人が適格現物出資により被現物出資法人にその有する資産の移転をし、又はこれと併せてその有する負債の移転をしたときは、当該被現物出資法人に当該移転をした資産及び負債の当該適格現物出資の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして、当該内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する。

2

被現物出資法人の資産及び負債の取得価額その他前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

法人税法62条の4は、移転した資産・負債について、移転の直前の帳簿価額による譲渡をしたものとして所得の金額を計算すると定めています。この結果、適格現物出資それ自体からは譲渡損益が生じない扱いになります。なお、帳簿価額を引き継いだ資産をその後に譲渡した場合の損失の取扱いは特定資産に係る譲渡等損失額で扱っています。

共同で事業を行うための現物出資とは、どのような場合を指すのか

現物出資法人と被現物出資法人との間に完全支配関係も支配関係もない場合、その現物出資が適格現物出資となるのは、イ又はロに該当する現物出資以外の現物出資のうち、共同で事業を行うための現物出資として政令で定める要件に該当するときに限られます。要件の具体的な内容は法人税法施行令に委ねられており、事業の関連性や規模、主要な資産及び負債の移転、従業者の引継ぎ、事業の継続、株式の継続保有といった複数の観点から確認します。該当するかどうかは、事案ごとの事実関係を踏まえて確認します。

実務で迷いが生じるところ

  • 対価が被現物出資法人の株式のみに限られるため、現金その他の資産を交付すると適格現物出資から外れる可能性があります。
  • 被現物出資法人が外国法人である場合は、国内不動産等・国内資産等・無形資産等のどれに当たるかを区分して当てはめる必要があります。
  • 完全支配関係がある場合と支配関係にとどまる場合とでは、確認すべき要件の数が異なります。
  • 共同で事業を行うための現物出資に該当するかどうかの要件は政令に細かく定められており、条文とあわせて政令の確認が欠かせません。
  • 従業者の引継ぎ割合や事業の継続といった見込み要件は、実行前の時点でどこまで固められるかを整理しておく必要があります。
  • 被現物出資法人の資産・負債の取得価額など、帳簿価額による譲渡の適用に必要な事項は政令に委ねられています。

根拠条文

本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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