条文の定義
株式交換・株式移転は、会社法に手続の定めがある組織再編行為です。法人税法2条は、この2つの行為の当事者となる法人の呼び方を定めています。まず株式交換についてです。
株式交換によりその株主の有する株式を他の法人に取得させた当該株式を発行した法人をいう。
株式交換により他の法人の株式を取得したことによつて当該法人の発行済株式の全部を有することとなつた法人をいう。
株式を発行していた法人が株式交換完全子法人、その株式を取得して発行済株式の全部を有することとなった法人が株式交換完全親法人です。株式移転についても、同じ形で呼び方が定められています。
株式移転によりその株主の有する株式を当該株式移転により設立された法人に取得させた当該株式を発行した法人をいう。
株式移転により他の法人の発行済株式の全部を取得した当該株式移転により設立された法人をいう。
株式移転完全子法人は、株式移転によって株式移転完全親法人に株式を取得させた法人です。株式を取得する側の法人が新たに設立される点が、既存の法人同士で完全親子関係を作る株式交換との違いです。
法人税法は、これらの言葉の末尾に等を付けた、次の2つの言葉も定めています。
株式交換完全子法人及び株式交換等(株式交換を除く。)に係る第十二号の十六に規定する対象法人をいう。
株式交換完全親法人並びに株式交換等(株式交換を除く。)に係る第十二号の十六イ及びロに規定する最大株主等である法人並びに同号ハの一の株主等である法人をいう。
株式交換等完全子法人・株式交換等完全親法人は、狭い意味の株式交換の当事者に、次の株式交換等の当事者を加えた、より広い言葉です。株式交換等そのものの定義は、次のとおりです。
株式交換及びイからハまでに掲げる行為により対象法人(それぞれイからハまでに規定する法人をいう。)がそれぞれイ若しくはロに規定する最大株主等である法人又はハの一の株主等である法人との間にこれらの法人による完全支配関係を有することとなることをいう。
株式交換等とは、会社法上の株式交換に加え、全部取得条項付種類株式の取得決議、株式の併合、株式売渡請求という条文中のイ・ロ・ハの3つの行為によって、対象法人がその大株主等との間に完全支配関係を持つに至る場合も含む、税務上の広い概念です。組織再編税制全体の中でのこの概念の位置づけは組織再編税制の全体像で整理しています。
骨格
| 論点 | 条文の定め |
|---|---|
| 株式交換完全子法人・株式交換完全親法人の定義 | 法人税法2条 |
| 株式移転完全子法人・株式移転完全親法人の定義 | 法人税法2条 |
| 株式交換等(対象法人との完全支配関係が生ずる行為)の定義 | 法人税法2条 |
| 適格株式交換等の定義 | 法人税法2条 |
| 適格株式移転の定義 | 法人税法2条 |
| 適格要件のうち政令で定める関係・要件の内容 | 法人税法施行令4条の3 |
| 非適格株式交換等・非適格株式移転による時価評価損益 | 法人税法62条の9 |
適格株式交換等はどのような要件で成り立つのか
法人税法2条は、適格株式交換等を次のように定義しています。
次のいずれかに該当する株式交換等で株式交換等完全子法人の株主等に株式交換等完全親法人又は株式交換完全支配親法人(株式交換完全親法人との間に当該株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係がある法人をいう。)のうちいずれか一の法人の株式以外の資産(当該株主等に対する剰余金の配当として交付される金銭その他の資産、株式交換等に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産、株式交換の直前において株式交換完全親法人が株式交換完全子法人の発行済株式(当該株式交換完全子法人が有する自己の株式を除く。)の総数の三分の二以上に相当する数の株式を有する場合における当該株式交換完全親法人以外の株主に交付される金銭その他の資産、前号イの取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産、同号イに掲げる行為に係る同号イの一に満たない端数の株式又は同号ロに掲げる行為により生ずる同号ロに規定する法人の一に満たない端数の株式の取得の対価として交付される金銭その他の資産及び同号ハの取得の対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。
この柱書が求めているのは、株式交換等完全子法人の株主等に、株式交換等完全親法人又は株式交換完全支配親法人のいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されないことです。剰余金の配当として交付される資産や買取請求に基づく対価などは、括弧書きによりあらかじめ除かれています。そのうえで、条文はイ・ロ・ハの3つの類型を挙げ、その2つの完全子法人・完全親法人の間に完全支配関係がある場合、支配関係があり従業者要件・事業継続要件を満たす場合、共同で事業を行うための株式交換として政令で定める場合のいずれかに該当することを求めています。政令で定める関係・政令で定めるものの具体的な内容は、法人税法施行令4条の3に置かれており、この記事の範囲を超えるため立ち入りません。自社株式を対価に他社を子会社化する制度には、株式交付もあります。株式交付は完全子会社化を前提とせず、株式交換とは対象と手続が異なります。両者の違いは株式交付で確認できます。
適格株式移転はどのような要件で成り立つのか
適格株式移転は、法人税法2条で次のように定義されています。
次のいずれかに該当する株式移転で株式移転完全子法人の株主に株式移転完全親法人の株式以外の資産(株式移転に反対する当該株主に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。
適格株式交換等の柱書と比べると、除かれる資産の範囲は反対株主の買取請求に基づく対価だけであり、規定は簡潔です。要件の組み立ては適格株式交換等と同様に、完全支配関係がある場合、支配関係があり従業者要件・事業継続要件を満たす場合、共同で事業を行うための株式移転として政令で定める場合という3つの類型ですが、完全支配関係がある場合の類型には、株式移転完全子法人と他の株式移転完全子法人との間のものに加え、「一の法人のみがその株式移転完全子法人となる株式移転で政令で定めるもの」も含まれます。株式交換完全子法人と株式交換完全親法人という既存の法人同士の親子関係を土台にする株式交換とは、関係の結び方が異なります。株式移転は、既存の法人を株式移転完全子法人としながら、株式移転完全親法人を新たに設立する点が株式交換と異なり、複数の法人が共同で1つの株式移転完全親法人を設立する場合のほか、一の法人のみが株式移転完全子法人となる単独の株式移転を行う場合も含みます。
合併・分割と違って資産は移転しないのか
合併では被合併法人の資産及び負債が合併法人に移転し、分割では分割法人の資産及び負債の一部が分割承継法人に移転します。これに対し株式交換・株式移転で移転するのは、完全子法人の株主が持つ株式であり、完全子法人自身が持つ資産そのものは、その法人の中にとどまったままです。動くのは株主構成、つまりだれが完全子法人の株式を保有しているかという点だけであり、完全子法人の側で資産の譲渡や引継ぎという事象は生じません。
ただし、資産が移転しないからといって、非適格の場合に課税が生じないわけではありません。法人税法62条の9は、次のとおり定めています。
内国法人が自己を株式交換等完全子法人又は株式移転完全子法人とする株式交換等又は株式移転(適格株式交換等及び適格株式移転並びに株式交換又は株式移転の直前に当該内国法人と当該株式交換に係る株式交換完全親法人又は当該株式移転に係る他の株式移転完全子法人との間に完全支配関係があつた場合における当該株式交換及び株式移転を除く。以下この項において「非適格株式交換等」という。)を行つた場合には、当該内国法人が当該非適格株式交換等の直前の時において有する時価評価資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。)の評価益の額(当該非適格株式交換等の直前の時の価額がその時の帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)又は評価損の額(当該非適格株式交換等の直前の時の帳簿価額がその時の価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)は、当該非適格株式交換等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
適格株式交換等・適格株式移転に該当しない株式交換等・株式移転を行った場合(株式交換又は株式移転の直前に当該内国法人と株式交換完全親法人又は他の株式移転完全子法人との間に完全支配関係があった場合の株式交換及び株式移転は除きます)、株式交換等完全子法人又は株式移転完全子法人は、その直前の時に有する時価評価資産について、時価が帳簿価額を超える部分を評価益の額として、帳簿価額が時価を超える部分を評価損の額として、その事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入します。株式そのものは移転しても資産は完全子法人の手元にとどまったままですが、非適格に該当すると、その資産をあたかも時価で譲渡したかのような課税が生じる、という組み立てです。適格に該当すれば、この時価評価損益は生じません。完全子法人の株主自身に生じる課税関係は、これとは別の視点から見る必要があり、組織再編と株主の課税で扱っています。
実務で迷いが生じるところ
- 適格株式交換等・適格株式移転のイ・ロ・ハに定める政令で定める関係、政令で定めるものの具体的な内容は、法人税法施行令4条の3に置かれています。要件は多岐にわたるため、施行令の該当箇所を直接確認する必要があります。
- 株式交換等には、会社法上の株式交換に加えて、全部取得条項付種類株式の取得決議、株式の併合、株式売渡請求という3つの行為が含まれます。どの行為に当たるかによって、条文上の位置づけが変わります。
- 法人税法62条の9のかっこ書きにある時価評価資産の範囲は、固定資産、土地、有価証券、金銭債権及び繰延資産のうち政令で定めるもの以外、という限定が付いています。対象となる資産に当たるかは、個別に確認する必要があります。
- 適格株式交換等・適格株式移転の要件の多くは、直前の関係だけでなく、その後の関係が継続することの見込みも問うています。実行時点だけでなく、将来の見込みまで検討する必要があります。
根拠条文
- 法人税法第2条第12号の6(株式交換完全子法人)/引用した文言:「株式交換によりその株主の有する株式を他の法人に取得させた当該株式を発行した法人をいう。」
- 法人税法第2条第12号の6の2(株式交換等完全子法人)/引用した文言:「株式交換完全子法人及び株式交換等(株式交換を除く。)に係る第十二号の十六に規定する対象法人をいう。」
- 法人税法第2条第12号の6の3(株式交換完全親法人)/引用した文言:「株式交換により他の法人の株式を取得したことによつて当該法人の発行済株式の全部を有することとなつた法人をいう。」
- 法人税法第2条第12号の6の4(株式交換等完全親法人)/引用した文言:「株式交換完全親法人並びに株式交換等(株式交換を除く。)に係る第十二号の十六イ及びロに規定する最大株主等である法人並びに同号ハの一の株主等である法人をいう。」
- 法人税法第2条第12号の6の5(株式移転完全子法人)/引用した文言:「株式移転によりその株主の有する株式を当該株式移転により設立された法人に取得させた当該株式を発行した法人をいう。」
- 法人税法第2条第12号の6の6(株式移転完全親法人)/引用した文言:「株式移転により他の法人の発行済株式の全部を取得した当該株式移転により設立された法人をいう。」
- 法人税法第2条第12号の16(株式交換等)/引用した文言:「株式交換及びイからハまでに掲げる行為により対象法人(それぞれイからハまでに規定する法人をいう。)がそれぞれイ若しくはロに規定する最大株主等である法人又はハの一の株主等である法人との間にこれらの法人による完全支配関係を有することとなることをいう。」
- 法人税法第2条第12号の17柱書(適格株式交換等の定義・対価要件)/引用した文言:「次のいずれかに該当する株式交換等で株式交換等完全子法人の株主等に株式交換等完全親法人又は株式交換完全支配親法人(株式交換完全親法人との間に当該株式交換完全親法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係がある法人をいう。)のうちいずれか一の法人の株式以外の資産(当該株主等に対する剰余金の配当として交付される金銭その他の資産、株式交換等に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産、株式交換の直前において株式交換完全親法人が株式交換完全子法人の発行済株式(当該株式交換完全子法人が有する自己の株式を除く。)の総数の三分の二以上に相当する数の株式を有する場合における当該株式交換完全親法人以外の株主に交付される金銭その他の資産、前号イの取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産、同号イに掲げる行為に係る同号イの一に満たない端数の株式又は同号ロに掲げる行為により生ずる同号ロに規定する法人の一に満たない端数の株式の取得の対価として交付される金銭その他の資産及び同号ハの取得の対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。」
- 法人税法第2条第12号の18柱書(適格株式移転の定義・対価要件)/引用した文言:「次のいずれかに該当する株式移転で株式移転完全子法人の株主に株式移転完全親法人の株式以外の資産(株式移転に反対する当該株主に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。」
- 法人税法第2条第12号の18イ(適格株式移転の要件)/引用した文言:「一の法人のみがその株式移転完全子法人となる株式移転で政令で定めるもの」
- 法人税法第62条の9第1項(非適格株式交換等・非適格株式移転に係る時価評価損益)/引用した文言:「 内国法人が自己を株式交換等完全子法人又は株式移転完全子法人とする株式交換等又は株式移転(適格株式交換等及び適格株式移転並びに株式交換又は株式移転の直前に当該内国法人と当該株式交換に係る株式交換完全親法人又は当該株式移転に係る他の株式移転完全子法人との間に完全支配関係があつた場合における当該株式交換及び株式移転を除く。以下この項において「非適格株式交換等」という。)を行つた場合には、当該内国法人が当該非適格株式交換等の直前の時において有する時価評価資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。)の評価益の額(当該非適格株式交換等の直前の時の価額がその時の帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)又は評価損の額(当該非適格株式交換等の直前の時の帳簿価額がその時の価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)」
本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

