組織再編の税務

特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入とは

本稿では、特定資産譲渡等損失額について、対象となる再編・資産・期間と主な適用除外を整理します。個々の資産の該当性や控除額の計算は、関係する政令と取引の事実関係を併せて確認します。

条文の定義

法人税法2条は、支配関係を次のように定義しています。

一の者が法人の発行済株式若しくは出資(当該法人が有する自己の株式又は出資を除く。以下この条において「発行済株式等」という。)の総数若しくは総額の百分の五十を超える数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有する関係として政令で定める関係(以下この号において「当事者間の支配の関係」という。)又は一の者との間に当事者間の支配の関係がある法人相互の関係をいう。

発行済株式等の百分の五十を超える数又は金額を直接又は間接に保有する関係と、その者を介して結び付く法人どうしの関係を、あわせて支配関係と呼びます。法人税法62条の7は、対象となる再編成の範囲を次のように定めています。

特定適格組織再編成等(適格合併若しくは適格合併に該当しない合併で第六十一条の十一第一項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)の規定の適用があるもの、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配のうち、第五十七条第四項(欠損金の繰越し)に規定する共同で事業を行うための適格組織再編成等として政令で定めるものに該当しないものをいう。以下この条において同じ。)

特定適格組織再編成等とは、適格合併や、これに準ずる合併、適格分割、適格現物出資、適格現物分配のうち、法人税法57条に規定する共同で事業を行うための適格組織再編成等(政令で定めるもの)に該当しないものをいいます。みなし共同事業要件を満たす再編成は対象から外れ、それ以外の再編成で生ずる特定資産譲渡等損失額は、一定期間、損金の額に算入されません。

骨格

論点 条文の定め
支配関係の定義 法人税法2条
損金不算入の対象となる特定適格組織再編成等の範囲 法人税法62条の7
損金不算入の対象となる期間(対象期間) 法人税法62条の7
特定引継資産・特定保有資産の定義 法人税法62条の7
支配関係が5年前から継続している場合等の適用除外 法人税法施行令123条の8
特定引継資産・特定保有資産から除かれる資産 法人税法施行令123条の8
時価純資産価額が簿価純資産価額以上である場合の控除 法人税法施行令123条の9

特定引継資産と特定保有資産はどう違うのか

法人税法62条の7は、損金不算入の対象となる特定資産譲渡等損失額を2種類の資産に分けています。1つ目は、支配関係法人から移転を受けた資産です。

前項の内国法人が同項の支配関係法人から特定適格組織再編成等により移転を受けた資産(棚卸資産、当該特定適格組織再編成等の日における帳簿価額が少額であるものその他の政令で定めるものを除く。)で当該支配関係法人が当該内国法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日(次号において「支配関係発生日」という。)の属する事業年度開始の日前から有していたもの(これに準ずるものとして政令で定めるものを含む。以下この号において「特定引継資産」という。)の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の事由による損失の額として政令で定める金額の合計額から特定引継資産の譲渡、評価換えその他の事由による利益の額として政令で定める金額の合計額を控除した金額

支配関係法人から移転を受けた資産のうち、支配関係発生日の属する事業年度開始の日より前から支配関係法人が保有していたものが、特定引継資産です。2つ目は、内国法人が再編前から保有していた資産です。

前項の内国法人が有する資産(棚卸資産、特定適格組織再編成等の日の属する事業年度開始の日における帳簿価額が少額であるものその他の政令で定めるものを除く。)で支配関係発生日の属する事業年度開始の日前から有していたもの(これに準ずるものとして政令で定めるものを含む。以下この号において「特定保有資産」という。)の譲渡、評価換え、貸倒れ、除却その他の事由による損失の額として政令で定める金額の合計額から特定保有資産の譲渡、評価換えその他の事由による利益の額として政令で定める金額の合計額を控除した金額

移転を受けた資産か自ら保有していた資産かの違いはありますが、いずれも支配関係発生日より前から存在していた資産である点は共通します。この2資産の損失の額から利益の額を控除した合計額が、特定資産譲渡等損失額として損金不算入となります。

損金不算入となる期間はいつまでか

法人税法62条の7は、損金不算入の対象となる期間を次のように定めています。

当該内国法人の当該特定組織再編成事業年度開始の日から同日以後三年を経過する日(その経過する日が当該内国法人が当該支配関係法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日以後五年を経過する日後となる場合にあつては、その五年を経過する日)までの期間(当該期間に終了する各事業年度において第六十二条の九第一項(非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価損益)、第六十四条の十一第一項(通算制度の開始に伴う資産の時価評価損益)、第六十四条の十二第一項(通算制度への加入に伴う資産の時価評価損益)又は第六十四条の十三第一項(第一号に係る部分に限る。)(通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価損益)の規定の適用を受ける場合には、当該特定組織再編成事業年度開始の日からその適用を受ける事業年度終了の日までの期間。第六項において「対象期間」という。)

特定組織再編成事業年度、つまり特定適格組織再編成等が行われた日の属する事業年度の開始の日から、その日以後3年を経過する日までが原則の期間です。ただし、その3年を経過する日が支配関係発生日以後5年を経過する日より後になる場合には、期間はその5年を経過する日までに短縮されます。この上限は繰越欠損金の引継ぎと制限の年数と対応します。もっとも、支配関係が一定期間継続している場合には、この損金不算入自体が生じません。法人税法施行令123条の8は、その場合を次のように定めています。

法第六十二条の七第一項(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合のいずれかに該当する場合とする。一 法第六十二条の七第一項に規定する内国法人と同項に規定する支配関係法人との間に同項に規定する特定組織再編成事業年度開始の日の五年前の日(次号において「五年前の日」という。)から継続して支配関係がある場合

特定組織再編成事業年度開始の日の5年前の日から継続して支配関係がある場合には、この損金不算入は適用されません。

対象から除かれる資産にはどのようなものがあるのか

特定引継資産・特定保有資産の定義には「棚卸資産、当該特定適格組織再編成等の日における帳簿価額が少額であるものその他の政令で定めるものを除く。」という括弧書きがあり、この政令で定めるものを法人税法施行令123条の8が次のように定めています。

法第六十二条の七第二項第一号に規定するその他の政令で定めるものは、次に掲げるものとする。一 棚卸資産(土地(土地の上に存する権利を含む。第五項第三号において「土地等」という。)を除く。)

棚卸資産(土地等を除きます)は特定引継資産・特定保有資産に当たりません。このほか、短期売買商品等、売買目的有価証券、1000万円に満たない資産、帳簿価額を下回らない価額の資産(確定申告書等に価額・帳簿価額の明細の添付があり、算定根拠書類を保存している場合に限ります)、非適格合併による譲渡損益調整資産以外の資産も除かれます。施行令123条の9は、特定引継資産に係る特定資産譲渡等損失額の控除額を次のように定めています。

同項に規定する対象期間(以下この条において「対象期間」という。)内の日の属する事業年度に限る。)における当該対象期間内の特定引継資産に係る法第六十二条の七第二項に規定する特定資産譲渡等損失額(以下この条において「特定資産譲渡等損失額」という。)は、当該特定資産譲渡等損失額から次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額を控除した金額とすることができる。一 法第六十二条の七第一項に規定する支配関係法人(以下第七項までにおいて「支配関係法人」という。)の支配関係事業年度(当該支配関係法人が当該内国法人との間に最後に支配関係を有することとなつた日の属する事業年度をいう。次号において同じ。)の前事業年度終了の時における時価純資産価額(その有する資産の価額の合計額からその有する負債(新株予約権及び株式引受権に係る義務を含む。以下この号において同じ。)の価額の合計額を減算した金額をいう。次号及び次項において同じ。)が簿価純資産価額(その有する資産の帳簿価額の合計額からその有する負債の帳簿価額の合計額を減算した金額をいう。次号において同じ。)以上である場合当該対象期間内の当該特定引継資産に係る特定資産譲渡等損失額に相当する金額 二 当該支配関係法人の支配関係事業年度の前事業年度終了の時における時価純資産価額が簿価純資産価額に満たない場合 対象期間内の日の属する事業年度における当該事業年度の対象期間内の特定引継資産に係る特定資産譲渡等損失額のうち、その満たない部分の金額からイ及びロに掲げる金額の合計額を控除した金額を超える部分の金額

支配関係法人の支配関係事業年度の前事業年度終了時の時価純資産価額が簿価純資産価額以上なら、対象期間内の損失額に相当する額を控除でき、控除後はゼロとなり実質的に損金不算入の対象から外れます。簿価純資産価額に満たない場合は、損失額のうちその満たない部分の額(一定額を控除した額)を超える部分に限り控除でき、満たない部分の額までは損金不算入のまま残ります。この控除には確定申告書等への書類の添付・保存が要件です。

実務で迷いが生じるところ

  • 支配関係発生日、つまり支配関係法人が最後に支配関係を有することとなった日をいつと特定するかで、特定引継資産・特定保有資産の範囲が変わります。
  • 法人税法57条に規定する共同で事業を行うための適格組織再編成等に当たるかどうかは、制度の適用を左右する前提です。
  • 施行令123条の8には、内国法人又は支配関係法人が5年前の日後に設立された場合の適用除外も別途定められています。
  • 施行令123条の9の控除を受けるには、時価純資産価額の算定根拠となる書類等の保存が要件であり、整備状況の確認が必要です。
  • 法人税法62条の7は、被合併法人等どうしで法人を設立する特定適格組織再編成等にも、読替えのうえで準用されると定めています。

根拠条文

本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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