組織再編の税務

適格合併と繰越欠損金の引継ぎ・使用制限とは

本稿では、被合併法人からの欠損金の引継ぎとその制限、合併法人自身の欠損金の使用制限を分けて整理します。共同事業要件の詳細や制限額の個別計算までは扱いません。

条文の定義

組織再編を行っても、赤字の会社の繰越欠損金は自動的に引き継がれません。前提となるのは、その合併が「適格合併」に当たるかどうかです。法人税法2条は、次のように定義しています。

次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人又は合併親法人(合併法人との間に当該合併法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係がある法人をいう。)のうちいずれか一の法人の株式又は出資以外の資産(当該株主等に対する剰余金の配当等(株式又は出資に係る剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配をいう。)として交付される金銭その他の資産、合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産及び合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式等の総数又は総額の三分の二以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該合併法人以外の株主等に交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。

条文はイ・ロ・ハの3類型を置き、いずれかへの該当を求めています。詳しくは適格合併の要件で確認できます。

骨格

論点 条文の定め
適格合併の定義 法人税法2条
未処理欠損金額の引継ぎ 法人税法57条
引継ぎの制限(支配関係・共同事業要件) 法人税法57条
合併法人自身の欠損金の使用制限 法人税法57条
特定株主等に支配された欠損等法人の欠損金の不使用 法人税法57条の2
引継ぎ要件・制限の計算の細目 法人税法施行令112条・113条

適格合併があった場合、被合併法人の欠損金はどうなるのか

法人税法57条は、適格合併等の場合について次のように定めています。

前項の内国法人を合併法人とする適格合併が行われた場合又は当該内国法人との間に完全支配関係(当該内国法人による完全支配関係又は第二条第十二号の七の六(定義)に規定する相互の関係に限る。)がある他の内国法人で当該内国法人が発行済株式若しくは出資の全部若しくは一部を有するものの残余財産が確定した場合において、当該適格合併に係る被合併法人又は当該他の内国法人(以下この項において「被合併法人等」という。)の当該適格合併の日前十年以内に開始し、又は当該残余財産の確定の日の翌日前十年以内に開始した各事業年度(以下この項、次項及び第七項第一号において「前十年内事業年度」という。)において生じた欠損金額(当該被合併法人等が当該欠損金額(この項の規定により当該被合併法人等の欠損金額とみなされたものを含み、第四項から第六項まで、第八項若しくは第九項又は第五十八条第一項(青色申告書を提出しなかつた事業年度の欠損金の特例)の規定によりないものとされたものを除く。次項において同じ。)の生じた前十年内事業年度について確定申告書を提出していることその他の政令で定める要件を満たしている場合における当該欠損金額に限るものとし、前項の規定により当該被合併法人等の前十年内事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの及び第八十条の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となつたものを除く。以下この項において「未処理欠損金額」という。)があるときは、当該内国法人の当該適格合併の日の属する事業年度又は当該残余財産の確定の日の翌日の属する事業年度(以下この項において「合併等事業年度」という。)以後の各事業年度における前項の規定の適用については、当該前十年内事業年度において生じた未処理欠損金額(当該他の内国法人に株主等が二以上ある場合には、当該未処理欠損金額を当該他の内国法人の発行済株式又は出資(当該他の内国法人が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額で除し、これに当該内国法人の有する当該他の内国法人の株式又は出資の数又は金額を乗じて計算した金額)は、それぞれ当該未処理欠損金額の生じた前十年内事業年度開始の日の属する当該内国法人の各事業年度(当該内国法人の合併等事業年度開始の日以後に開始した当該被合併法人等の当該前十年内事業年度において生じた未処理欠損金額にあつては、当該合併等事業年度の前事業年度)において生じた欠損金額とみなす。

被合併法人等の前十年内事業年度に生じた未処理欠損金額は、合併法人が自らの欠損金額とみなして繰り越せます。ただし、確定申告書を提出していることなど、政令で定める要件を満たす欠損金額に限られます。

支配関係が浅い場合、引継ぎには制限がかかるのか

被合併法人等との関係が浅い場合、引継ぎに制限がかかります。法人税法57条は次のとおりです。

前項の適格合併に係る被合併法人(同項の内国法人(当該内国法人が当該適格合併により設立された法人である場合にあつては、当該適格合併に係る他の被合併法人。以下この項において同じ。)との間に支配関係があるものに限る。)又は前項の残余財産が確定した他の内国法人(以下この項において「被合併法人等」という。)の前項に規定する未処理欠損金額には、当該適格合併が共同で事業を行うための合併として政令で定めるものに該当する場合又は当該被合併法人等と同項の内国法人との間に当該内国法人の当該適格合併の日の属する事業年度開始の日(当該適格合併が法人を設立するものである場合には、当該適格合併の日)の五年前の日若しくは当該残余財産の確定の日の翌日の属する事業年度開始の日の五年前の日、当該被合併法人等の設立の日若しくは当該内国法人の設立の日のうち最も遅い日から継続して支配関係がある場合として政令で定める場合のいずれにも該当しない場合には、次に掲げる欠損金額を含まないものとする。

適格合併が「共同で事業を行うための合併として政令で定めるもの」に該当するか、「継続して支配関係がある場合として政令で定める場合」に当たらなければ、未処理欠損金額から一定の欠損金額が除かれます。前者の要件はみなし共同事業要件で確認できます。

除かれるのは、支配関係事業年度(最後に支配関係を有することとなった日の事業年度)より前の欠損金額と、それ以後の欠損金額のうち次の部分です。

当該被合併法人等の支配関係事業年度以後の各事業年度で前十年内事業年度に該当する事業年度において生じた欠損金額のうち第六十二条の七第二項(特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入)に規定する特定資産譲渡等損失額に相当する金額から成る部分の金額として政令で定める金額

特定資産譲渡等損失額に相当する部分は、未処理欠損金額から除かれます。詳しくは特定資産に係る譲渡等損失額で確認できます。

合併法人自身の欠損金も制限を受けるのか

合併法人自身がもともと持っていた欠損金額にも制限がかかります。法人税法57条は次のように定めています。

第一項の内国法人と支配関係法人(当該内国法人との間に支配関係がある法人をいう。以下この項において同じ。)との間で当該内国法人を合併法人、分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人とする適格合併若しくは適格合併に該当しない合併で第六十一条の十一第一項(完全支配関係がある法人の間の取引の損益)の規定の適用があるもの、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(以下この項において「適格組織再編成等」という。)が行われた場合(当該内国法人の当該適格組織再編成等の日(当該適格組織再編成等が残余財産の全部の分配である場合には、その残余財産の確定の日の翌日)の属する事業年度(以下この項において「組織再編成事業年度」という。)開始の日の五年前の日、当該内国法人の設立の日又は当該支配関係法人の設立の日のうち最も遅い日から継続して当該内国法人と当該支配関係法人との間に支配関係がある場合として政令で定める場合を除く。)において、当該適格組織再編成等が共同で事業を行うための適格組織再編成等として政令で定めるものに該当しないときは、当該内国法人の当該組織再編成事業年度以後の各事業年度における第一項の規定の適用については、当該内国法人の同項に規定する欠損金額(第二項の規定により当該内国法人の欠損金額とみなされたものを含み、この項から第六項まで、第八項若しくは第九項又は第五十八条第一項の規定によりないものとされたものを除く。以下この項及び次項において同じ。)のうち次に掲げる欠損金額は、ないものとする。

組織再編成等が「共同で事業を行うための適格組織再編成等として政令で定めるもの」に該当せず、支配関係の継続も政令で定める場合に当たらないときは、支配関係発生前の欠損金額など一定のものは、ないものとされます。

欠損金だけを目当てにした支配は認められるのか

法人税法57条の2は、次のように特定支配関係を有することとなった内国法人を対象としています。

内国法人で他の者との間に当該他の者による特定支配関係(当該他の者が当該内国法人の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他の政令で定める関係をいい、政令で定める事由によつて生じたものを除く。以下この項において同じ。)を有することとなつたもの

特定支配関係とは、他の者が発行済株式等の総数の50パーセントを超える数を直接又は間接に保有する関係などをいいます。特定支配関係を有することとなった日(支配日)の事業年度(特定支配事業年度)より前に生じた欠損金額、又は同事業年度開始時に評価損のある資産(評価損資産)を有する内国法人が、欠損等法人です。欠損等法人が、支配日の直前に事業を営んでいない場合や旧事業の廃止、特定債権の取得といった一定の場合において、支配日以後5年を経過した日の前日までに自己を被合併法人とする適格合併を行うことなどの事由に該当すると、その該当日(適格合併の場合は合併の日の前日)の属する事業年度(適用事業年度)以後は、適用事業年度前に生じた欠損金額に法人税法57条は適用されません。

実務で迷いが生じるところ

  • 支配関係が「五年前の日」から継続しているかどうかは、起算点次第で結論が変わるため確認が必要です。
  • 「共同で事業を行うための合併として政令で定めるもの」の要件は施行令に置かれており、本稿では立ち入っていません。
  • 法人税法57条には、被合併法人等から引き継ぐ欠損金額の制限と、合併法人自身の欠損金額の制限とが別に定められており、対象が異なります。
  • 57条の2に該当する事由は複数あり、本稿で挙げた適格合併のほかにも定めがあります。

根拠条文

本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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