本稿では、適格合併の対価要件と3つの類型を整理し、代表的な要件の文言を確認します。共同事業要件などの全要件を網羅した判定表ではありません。
条文の定義
適格合併という用語は、法人税法第2条に定義があります。合併のうち一定の要件を満たすものだけが、税務上「適格合併」として扱われます。組織再編税制全体の中での位置づけは、組織再編税制の全体像で解説しています。
適格合併の定義は、次のとおりです。
次のいずれかに該当する合併で被合併法人の株主等に合併法人又は合併親法人(合併法人との間に当該合併法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係として政令で定める関係がある法人をいう。)のうちいずれか一の法人の株式又は出資以外の資産(当該株主等に対する剰余金の配当等(株式又は出資に係る剰余金の配当、利益の配当又は剰余金の分配をいう。)として交付される金銭その他の資産、合併に反対する当該株主等に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産及び合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式等の総数又は総額の三分の二以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該合併法人以外の株主等に交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されないものをいう。
平たく言うと、合併の対価として合併法人(又は合併親法人)の株式以外の資産が交付されないことが、まず前提になります。そのうえで、条文は「次のいずれかに該当する合併」として、3つの類型を挙げています。それぞれの類型の内容は、次の項目以降で確認します。
骨格
| 論点 | 条文の定め |
|---|---|
| 適格合併の意義 | 被合併法人の株主等に株式以外の資産が交付されないことを前提に、法人税法に定義されています。 |
| 対価要件(金銭等不交付要件) | 合併法人又は合併親法人のうちいずれか一の法人の株式又は出資以外の資産が交付されないことが求められます。 |
| 完全支配関係がある場合 | 被合併法人と合併法人との間にいずれか一方の法人による完全支配関係その他政令で定める関係があれば、この類型に該当します。 |
| 支配関係がある場合 | 支配関係その他政令で定める関係があることに加え、従業者要件と事業継続要件のいずれにも該当することが求められます。 |
| 共同で事業を行う場合 | 政令で定める複数の要件に該当する合併であることが求められます。一定の場合には、要件の一部が除かれます。 |
| 完全支配関係の意味 | 一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係等をいうと定義されています。 |
| 支配関係の意味 | 一の者が法人の発行済株式等の百分の五十を超える数を保有する関係等をいうと定義されています。 |
完全支配関係がある場合はどう定められているのか
1つ目の類型は、被合併法人と合併法人との間に完全支配関係がある場合です。条文は、次のように定めています。
その合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が法人を設立する合併(以下この号において「新設合併」という。)である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)との間にいずれか一方の法人による完全支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該合併
「完全支配関係」は法人税法第2条に別途定義があります。この類型では従業者要件や事業継続要件は求められず、完全支配関係その他政令で定める関係があることのみが必要です。そのうち、被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係がある場合について、施行令は次のように定めています。
合併前に当該合併に係る被合併法人と合併法人との間に同一の者による完全支配関係(当該合併が無対価合併である場合にあつては、次に掲げる関係がある場合における当該完全支配関係に限る。)があり、かつ、当該合併後に当該同一の者と当該合併に係る合併法人との間に当該同一の者による完全支配関係が継続すること(当該合併後に当該合併に係る合併法人を被合併法人又は完全子法人(法第二条第十二号の十五の二に規定する完全子法人をいう。以下この条において同じ。)とする適格合併又は適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、当該合併の時から当該適格合併又は適格株式分配の直前の時まで当該完全支配関係が継続すること。)が見込まれている場合における当該合併に係る被合併法人と合併法人との間の関係
つまり、完全支配関係が合併の前後を通じて継続する見込みであることも求められています。
支配関係がある場合はどう定められているのか
2つ目の類型は、被合併法人と合併法人との間に支配関係がある場合です。条文は、次のように定めています。
その合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)との間にいずれか一方の法人による支配関係その他の政令で定める関係がある場合の当該合併のうち、次に掲げる要件の全てに該当するもの
「次に掲げる要件の全て」として、条文は2つの要件を挙げています。1つ目は従業者要件です。
当該合併に係る被合併法人の当該合併の直前の従業者のうち、その総数のおおむね百分の八十以上に相当する数の者が当該合併後に当該合併に係る合併法人の業務(当該合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務並びに当該合併後に行われる適格合併により当該被合併法人の当該合併前に行う主要な事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該適格合併に係る合併法人及び当該適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人の業務を含む。)に従事することが見込まれていること。
2つ目は事業継続要件です。
当該合併に係る被合併法人の当該合併前に行う主要な事業が当該合併後に当該合併に係る合併法人(当該合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人並びに当該合併後に行われる適格合併により当該主要な事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該適格合併に係る合併法人及び当該適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人を含む。)において引き続き行われることが見込まれていること。
従業者要件は「おおむね百分の八十以上」という数値、事業継続要件は「引き続き行われることが見込まれていること」という将来の見込みとして定められています。
共同で事業を行う場合はどう定められているのか
3つ目の類型は、被合併法人と合併法人とが共同で事業を行うための合併です。条文は、次のように定めています。
その合併に係る被合併法人と合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、当該被合併法人と他の被合併法人)とが共同で事業を行うための合併として政令で定めるもの
「政令で定めるもの」の内容は、法人税法施行令第4条の3に定められています。その一つが、被合併法人と合併法人の事業が相互に関連することを求める要件です。
合併に係る被合併法人の被合併事業(当該被合併法人の当該合併前に行う主要な事業のうちのいずれかの事業をいう。以下この項において同じ。)と当該合併に係る合併法人の合併事業(当該合併法人の当該合併前に行う事業のうちのいずれかの事業をいい、当該合併が新設合併である場合にあつては、他の被合併法人の被合併事業をいう。次号及び第四号において同じ。)とが相互に関連するものであること。
また、被合併事業が合併後も合併法人において引き続き行われることを求める要件もあります。
合併に係る被合併法人の被合併事業(当該合併に係る合併法人の合併事業と関連する事業に限る。)が当該合併後に当該合併に係る合併法人(当該合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人並びに当該合併後に行われる適格合併により当該被合併事業が当該適格合併に係る合併法人に移転することが見込まれている場合における当該適格合併に係る合併法人及び当該適格合併に係る合併法人との間に完全支配関係がある法人を含む。)において引き続き行われることが見込まれていること。
このほかにも複数の要件が定められていますが、常にそのすべてが必要なわけではなく、次のように一定の場合には一部を除くと定めています。
次に掲げる要件(当該合併に係る被合併法人及び合併法人(当該合併が新設合併である場合にあつては、当該合併に係る被合併法人の全て)が法別表第二又は別表第三に掲げる法人のうち、その組合員である事業者又は消費者の相互扶助を目的とする組合その他これに類する団体として財務省令で定めるものである場合には第二号に掲げる要件を、当該合併の直前に当該合併に係る被合併法人の全てについて他の者との間に当該他の者による支配関係がない場合又は当該合併に係る合併法人が資本若しくは出資を有しない法人である場合には第五号に掲げる要件を、それぞれ除く。)の全てに該当するものとする。
具体的な条文は、根拠条文に挙げています。
金銭等不交付要件(対価要件)はどう定められているのか
3つの類型のいずれについても前提となるのが、金銭等不交付要件(対価要件)です。条文の定義では、被合併法人の株主等に「いずれか一の法人の株式又は出資以外の資産」が交付されないことが求められています。ただし、株主等に対する剰余金の配当等、合併に反対する株主等の買取請求に基づく対価、そして合併の直前に合併法人が被合併法人の発行済株式等の三分の二以上を有する場合における当該合併法人以外の株主等に交付される金銭その他の資産は、この「株式又は出資以外の資産」からあらかじめ除かれています。この要件を満たさない場合の取扱いは、非適格合併になるとどうなるかで解説しています。
実務で迷いが生じるところ
- 「完全支配関係」と「支配関係」は、いずれも法人税法第2条に定義があり、保有割合の水準が異なります。
- 従業者要件と事業継続要件は、いずれも「見込まれていること」という将来の見込みとして条文に定められています。
- 共同で事業を行う場合の要件は、法人税法施行令第4条の3に複数の要件として定められており、一定の場合を除き、そのすべてに該当する必要があります。
- 金銭等不交付要件には、剰余金の配当等や買取請求に基づく対価など、あらかじめ除かれる資産の範囲が条文に列挙されています。
- 「合併親法人」という言葉が条文に出てきます。合併法人自身の株式か、合併親法人の株式かを、条文の文言で区別する必要があります。
- 適格合併に該当すると、資産及び負債の引継ぎに関する取扱いが生じます。繰越欠損金の引継ぎと制限は別論点であり、繰越欠損金の引継ぎと制限で確認できます。
- この記事で挙げた条文は、適格合併の要件の一部です。個別の合併が該当するかどうかは、条文の全文を確認して判断する必要があります。
根拠条文
- 法人税法 第2条第12号の8柱書(適格合併の定義・金銭等不交付要件)
- 法人税法 第2条第12号の8イ(完全支配関係がある場合)
- 法人税法 第2条第12号の8ロ柱書(支配関係がある場合)
- 法人税法 第2条第12号の8ロ(1)(従業者要件)
- 法人税法 第2条第12号の8ロ(2)(事業継続要件)
- 法人税法 第2条第12号の8ハ(共同で事業を行う場合)
- 法人税法施行令 第4条の3第4項第1号(事業関連性要件)
- 法人税法施行令 第4条の3第4項第4号(事業継続要件)
- 法人税法施行令 第4条の3第4項柱書(共同事業要件のうち一部除外される場合)
- 法人税法施行令 第4条の3第2項第2号(完全支配関係その他政令で定める関係のうち同一の者による関係)
- 法人税法 第2条第12号の7の5(支配関係の定義)
- 法人税法 第2条第12号の7の6(完全支配関係の定義)
本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
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