国際税務の基礎知識

海外子会社への資金は、出資と貸付けのどちらがよいのか?

海外子会社をつくるとき、事業計画や現地の税率と並んで考えておきたいのが、「必要なお金を、出資として入れるのか、貸付けとして入れるのか」という問題です。同じ親会社から同じ子会社への送金でも、その後の利息、配当、源泉税、資金回収の扱いは変わります。

「貸付けなら利息を経費にできるので有利」と考えたくなりますが、現地で費用になっても、日本側では受取利息に課税されます。反対に、配当は子会社の費用にはならないものの、日本で一定の益金不算入を受けられる場合があります。片側の税金だけでは結論を出せません。本稿では、日本の親会社から外国の子会社へ資金を入れる場面を考えます。

同じ資金でも、回収までの道筋が違います
出資 → 事業 → 配当など株主としてリスクを負い、利益の分配を受ける。
貸付け → 事業 → 元本返済・利息債権者として返済能力と契約条件を確認する。

出資は事業を支える資金、貸付けは返してもらう資金

出資では、親会社は子会社の株主になります。通常の借入金のような返済期限はなく、事業の損失を吸収する土台になります。一方、貸付けでは親会社は債権者です。返済期日や利率を決め、子会社には契約に従って返済する義務が生じます。

例えば、海外拠点を立ち上げるために1億円が必要だとします。全額を出資すれば、子会社は立上げ期間に売上げがなくても、少なくとも親会社借入れの元利返済に追われません。全額を貸付けにすれば、会社の資本金とは別に1億円の負債を抱え、利息と返済のための資金を用意することになります。

比較する点出資貸付け
資金の性質株主として事業リスクを負う資金契約に従い回収する債権
親会社への収益利益が出た後の配当など契約で定めた利息
子会社での税務通常、配当は費用にならない利息は損金算入制限の確認が必要
元の資金の回収株式売却、減資、清算など元本返済。ただし返済能力が必要

もちろん、出資したお金が永久に戻らないという意味ではありません。ただ、貸付金の約定返済と、株主への資本の払戻しとでは、会社法上の手続も税務も違います。「戻してもらう予定があるから、とりあえず貸付金」と決める前に、その事業が本当に返済できるのかを確認する必要があります。

利息を払えば、グループ全体の税金が減るとは限りません

日本親会社が外国子会社へ1億円を貸し、説明のため年利5%と仮定すると、年間の利息は500万円です。この5%は適正金利を示すものではなく、計算を簡単にするための仮定です。

現地でこの500万円が全額費用になれば、子会社の課税所得は減ります。しかし、日本親会社には原則として500万円の受取利息が生じます。さらに、子会社の国で利息送金時に源泉税がかかる場合があります。その税額が日本で外国税額控除の対象となっても、控除限度額などにより全額をその年に取り戻せるとは限りません。

見るべきなのは、現地法人税の減少額、日本法人税への影響、源泉税とその控除可能額を合わせた結果です。現地子会社が赤字であれば、利息を計上しても現地の当期税額が減らず、日本側の課税だけが先に生じることも考えられます。

この点は、外国税額控除と深く関わります。二重課税を調整する制度があることと、資金移動に伴う税負担がすべて消えることは同じではありません。

出資の場合は、日本での配当の扱いが違います

一定の外国子会社から日本親会社が受け取る配当には、外国子会社配当益金不算入制度があります。原則として、持株割合25%以上の状態が配当の支払義務確定日以前6か月以上継続することなどを条件に、配当の95%相当額を日本の法人税の益金に算入しません。租税条約により持株割合の要件が異なる場合もあります。

したがって、利息と配当を単純に同じ日本税率で比較することはできません。ただし、95%益金不算入は「海外送金がすべて無税」という制度ではありません。現地で利益に法人税がかかり、配当に源泉税が課される場合もあります。また、この制度が適用される配当に係る外国源泉税は、日本では原則として外国税額控除も損金算入もできません。

ここでは制度の違いを押さえ、実際の検討では投資先との租税条約、持株割合、保有期間、配当原資や外国子会社合算税制との関係まで確認します。

親子会社でも、金利は自由には決められません

日本親会社と外国子会社の取引には、移転価格税制が関わります。第三者同士であればどういう条件で融資するか、という視点です。貸付通貨、期間、担保、返済順位、子会社の信用力などによって金利は変わります。

親会社が日本の銀行から安く借りられるからといって、その金利をそのまま海外子会社に適用してよいとは限りません。親会社と子会社の信用状態は同じではありませんし、円建てと外貨建てでも条件は違います。無利息で支援した場合には、経済的利益の供与として国外関連者への寄附金が問題になることもあります。

もっとも、合理的な再建計画に基づく支援など、無利息貸付け等に相当な理由が認められる場合の取扱いもあります。「子会社だから必ず有利子」「支援だから必ず寄附金」という二択ではなく、事実と条件を整理して判断します。

借り手の国にも、利息を制限するルールがあります

現地で適正な利率と認められても、利息が全額費用になるとは限りません。資本に比べて借入れが多すぎる場合や、利益に比べて利息が多すぎる場合に、控除を制限する国があります。

例えば、英国には一定の純利息・金融費用について、税務上の利益などを基準に控除を制限する制度があります。シンガポールでも、国境を越える関連者間貸付けには独立企業間原則が求められます。企業誘致に積極的な国であっても、親子会社の融資条件が無条件に認められるわけではありません。

ここで方向を取り違えないことが大切です。本稿の借り手は外国子会社ですから、その利息控除はまず現地法で判定します。日本の過少資本税制の「原則3倍」や、過大支払利子税制の基準を、そのまま外国子会社へ当てはめることはできません。

最初に決めるのは、税率よりも資金の使い道です

長期間回収しない研究開発費や立上げ損失を賄うお金と、数か月後の売掛金回収までをつなぐお金は性質が違います。前者には一定の自己資本を確保し、後者には返済予定を明確にした融資を組み合わせる、といった設計が考えられます。

また、現地通貨で売上げが入る子会社に円建てで貸すと、為替の変動によって返済負担が変わります。外貨建て貸付けなら、日本親会社側の為替差損益も確認が必要です。税率比較で数%有利でも、為替や返済条件で資金繰りが苦しくなれば、事業上よい設計とはいえません。

実務では、必要資金を「恒常的に必要な資金」と「回収時期を見込める資金」に分け、出資・貸付けの比率を考えます。その上で、現地の資本規制、契約条件、金利の根拠、源泉税、租税条約、日本での課税をつないで検証します。貸付契約書を作るだけでなく、計画どおりの利払いや返済が行われているかも継続して確認します。

出資か貸付けかに、すべての国・すべての企業に共通する正解はありません。資金を入れる瞬間だけでなく、事業が軌道に乗るまでと、利益や元本を回収するまでを一つの計画として考えることが重要です。

主な参照資料

ご自身のケースについて、相談をご希望の方へ

海外移住・海外法人・国際相続・外国税額控除など、国際税務のご相談を承っています。

国際税務相談はこちら

相談内容・料金・お申し込み方法をご案内しています。

一覧に戻る