国際税務の基礎知識

海外子会社の利益は、配当しなくても日本で課税されるのか?

海外子会社が利益を上げても、日本の親会社にはまだ配当していない。お金も海外の銀行口座に置いたままなので、日本で課税されることはない――そう考えたくなる場面があります。

ところが、一定の場合には、配当を受け取っていなくても海外子会社の所得が日本の親会社に合算されます。これが外国子会社合算税制、いわゆるタックスヘイブン対策税制です。本稿では、日本の法人が海外子会社を保有する場面を中心に、「配当していないのになぜ課税されるのか」「現地で事業をしていれば大丈夫なのか」を整理します。個人が直接保有する場合にも別途制度がありますが、以下の法人税の説明をそのまま当てはめることはできません。

配当の有無より、会社と所得の中身を確認します
① 支配関係・会社の区分外国関係会社か、どの日本株主が対象か。特定外国関係会社か。
② 税負担・経済活動・所得適用免除を判定し、必要に応じて会社単位の合算・部分合算を検討。

判定の全要件を示す図ではなく、検討する順序の概略です。

別会社の利益なのに、日本で課税される理由

通常、海外子会社は日本の親会社とは別の納税者です。子会社自身の所得に現地で課税されることと、日本の親会社が配当を受け取ることは別の出来事です。

しかし、この区別だけを徹底すると、実際の活動がほとんどない海外法人に利益をため、日本に配当しなければ、日本での課税を長期間先送りできてしまいます。そこで、一定の外国関係会社について、配当の有無とは別に、その所得の全部または一部を日本側で課税する仕組みが設けられています。制度全体の用語は、「タックスヘイブン対策税制とは」でも整理しています。

大切なのは、海外口座から日本へ送金したかどうかではありません。まず会社の支配関係を確認し、その会社の活動と所得の性質を調べる必要があります。

会社の規模より、誰が支配しているかを確認する

基本となるのは、日本の居住者・内国法人などが、直接・間接に50%を超えて保有する外国法人です。議決権や配当請求権などによる判定、実質的な支配関係による判定もあるため、登記簿上の持株比率だけで確認が終わるとは限りません。

その上で、合算課税を受ける日本側の株主についても、原則として直接・間接の保有割合が10%以上であることなどの要件を判定します。「外国法人が制度の対象になるか」と「どの日本側株主に合算するか」は、分けて考えます。

例えば、日本の会社が海外法人を100%保有していれば、規模が小さいというだけでこの確認が不要になるわけではありません。中小企業の海外進出でも、設立時から検討しておく必要があります。

20%・27%は、日本が課す税率ではありません

この制度では「租税負担割合20%」「27%」という数字が登場します。これは、合算された利益に20%や27%の日本の税金を掛けるという意味ではありません。制度の適用を免除できるかどうかを判定する基準です。

外国関係会社の区分適用免除の基準基準未満の場合
ペーパーカンパニー等の特定外国関係会社租税負担割合27%以上原則として会社単位の合算を検討
それ以外の外国関係会社租税負担割合20%以上経済活動基準と所得の種類を確認

ここでいう租税負担割合は、現地のパンフレットに掲載された法人税率をそのまま使うものではありません。その会社の所得や外国法人税などについて、法令に沿って計算します。優遇措置、免税所得、税額控除などにより、見かけの税率と判定結果が異なる場合があります。財務省の制度概要にも、この区分と適用免除の考え方が示されています。

逆に、20%未満なら必ず全所得が合算される、というわけでもありません。次の経済活動基準が重要になります。

現地の事業実態を、四つの観点から見る

特定外国関係会社に当たらないことを確認した上で、会社単位の合算を避けられるかを判断する中心が「経済活動基準」です。

基準確認する内容
事業基準主たる事業が株式保有など一定の事業ではないか。持株会社等には例外もあります。
実体基準主たる事業に必要な事務所・店舗・工場などを現地に有するか。
管理支配基準事業の管理・支配・運営を現地で自ら行っているか。
所在地国基準または非関連者基準業種に応じ、主として現地で事業を営んでいるか、主として非関連者と取引しているか。

例えば、現地に店舗と従業員があり、現地の顧客へ販売し、仕入れや採用も現地の経営陣が判断している会社と、住所だけを借りて日本から全ての指示を出している会社では、確認すべき事実が違います。

ただし、従業員を一人雇えば十分、海外で取締役会を開けば十分、といった単独の条件では決まりません。事業の種類や取引の内容に照らし、活動の実態を総合的に確認します。国税庁の平成29年度改正に関するQ&Aは、経済活動基準を理解する基礎資料になりますが、税率基準などはその後の改正を踏まえて読む必要があります。

事業会社でも、資産運用の所得は別に見る

経済活動基準を全て満たしていても、租税負担割合が20%未満なら、一定の受動的所得について「部分合算」が必要になることがあります。利子、配当、有価証券の譲渡益などが代表例です。ただし、所得ごとに除外される範囲があり、これらの収入があるだけで全て合算されるわけではありません。

つまり、現地で実際に商品を販売していることと、その会社が保有する余裕資金から多額の運用益が生じていることは、分けて検討します。事業実態があるという説明だけでは、所得の内訳の検討を省略できません。

例えば、全ての経済活動基準を満たす会社について、税法上計算した部分合算対象所得が3,000万円、日本の親会社の合算割合が100%であり、少額免除なども適用されないとします。この場合は、会社全体の売上高でも配当額でもなく、この対象所得を基礎に合算額を計算します。少額免除や外国税額の調整があるため、会計上の利息収入をそのまま日本の課税所得に足すという計算ではありません。

現地で納税済みなら、日本でも丸ごと二重課税になるのか

合算対象となった所得について現地で法人税を負担している場合には、一定の外国税額控除による調整があります。また、合算済みの所得が後日実際に配当された場合にも、一定の範囲で二重に課税しないための調整が設けられています。

ただし、現地で税金を払っているから合算判定自体が不要になるわけではありません。まず対象となる所得を計算し、その上で外国税や後日の配当の調整を行います。税額控除と配当の益金不算入は役割が違うため、混同しないことが大切です。

配当しない予定でも、決算ごとの確認が必要です

実務で困るのは、課税所得は日本の親会社に合算される一方で、現金は海外子会社に残っている場合です。現地で設備投資に充てていたり、送金に制約があったりすれば、日本の納税資金を別に準備しなければなりません。

そのため、確認の時期は配当を決めたときでは遅いことがあります。株主構成、決算書、現地申告書、所得の内訳、事務所や従業員の状況、現地での意思決定の記録を、毎期そろえておくことが重要です。以前は合算が不要だった会社でも、事業の縮小、資産売却、資金運用の増加などにより判断が変わる可能性があります。

制度名に「タックスヘイブン」と入っていても、特定の国だけに関係する話ではありません。見るべきなのは、その会社の支配関係、実際の活動、所得の中身です。「海外に会社があるから課税されない」「配当していないから課税されない」という二つの思い込みを外すところから、海外子会社の税務管理は始まります。

主な根拠:租税特別措置法第66条の6〜第66条の9、同関係通達。本稿は通常の事業継続中の法人を中心とする説明であり、清算会社や金融子会社等の特例は省略しています。個別の課税関係は保有関係、事業年度、適用される特例により異なります。

ご自身のケースについて、相談をご希望の方へ

海外移住・海外法人・国際相続・外国税額控除など、国際税務のご相談を承っています。

国際税務相談はこちら

相談内容・料金・お申し込み方法をご案内しています。

一覧に戻る