相続税の基礎知識

贈与税が「相続税法」に書かれているのはなぜでしょうか

贈与と相続、財産を渡す時点で分かれる

財産を無償で移す生前の贈与相続・遺贈贈与税の検討相続税の検討
贈与税と相続税は、財産の無償移転を捉える仕組みです。一定の生前贈与は相続時の計算にも関係します。

「相続税は亡くなったときの税金、贈与税は生きている間に財産を渡したときの税金」と聞くと、別々の法律で決まっているように思えるかもしれません。しかし、贈与税の基本的な仕組みも相続税法に定められています。二つの税金を一緒に理解すると、生前贈与を検討する際に、今年の税額だけで判断してはいけない理由が見えてきます。

生前と死亡時、二つの財産移転をつなぐ制度です

相続税法は、相続税と贈与税の納税義務者、課税する財産の範囲、税額の計算、申告や納付などを定める法律です。名称は相続税法でも、その中には贈与税の課税価格や控除、相続時精算課税の規定があります。贈与税法という独立した基本法を探すより、相続税法の中の贈与に関する規定を見ることになります。

財務省は、贈与税について、生前贈与で相続税の課税を逃れる行為を防ぎ、相続税を補完する役割を説明しています。仮に死亡時の財産移転だけに課税し、生前の無償移転には何の仕組みもなければ、財産を渡す時期を早めるだけで税負担に大きな差が生じます。そのため、財産が世代を超えて移る過程を関連づけて捉えています。

財産を無償で次の人へ移す

生前の贈与 → 原則として贈与税の検討

死亡に伴う相続・遺贈 → 原則として相続税の検討

一定の生前贈与 → 相続時の税額計算にも関係

これは、どの贈与も悪いという意味ではありません。子の独立を支える、財産管理を引き継ぐなど、生前に渡すことには生活上の目的があります。法律で定める控除や非課税の条件を満たせば、それを利用することも制度が予定しています。大切なのは、制度の目的と個別の適用条件を分けることです。

「110万円以下」と「相続税に関係しない」は別です

暦年課税では、その人が一年間に贈与を受けた財産の合計について基礎控除を使います。父からの贈与だけを見るのではなく、母や祖父母など他の人からの贈与も同じ年の集計に関係します。「渡す人ごとに110万円ずつ」と思い込むと、合計額を見落とします。

さらに、贈与時に基礎控除内で税額が出なかったとしても、贈与した人の相続で財産を取得した場合には、一定期間の贈与が相続税の計算に加わることがあります。贈与税の申告が不要だったことと、相続税で確認する必要がないことは違います。贈与契約や振込記録は、税額が出ない年も保管しておく意味があります。

相続時精算課税は、二つの税金を通じて計算します

もう一つの課税方法が相続時精算課税です。年齢や親族関係などの条件を満たす場合に選択し、贈与時の課税と、贈与者が亡くなった時の相続税を関連づけて計算します。2024年以後の贈与には年110万円の基礎控除が設けられ、その範囲の扱いは暦年課税と同じではありません。

また、2,500万円の特別控除は、一般的に「そこまで渡せば将来も無税になる枠」ではありません。贈与時に特別控除を使った財産も、原則として相続時の計算に関係します。制度名のとおり、贈与の時点だけで課税関係が完結するとは限らないのです。一度選択すると、その贈与者について暦年課税へ戻れないことも、検討の重要な前提です。

家族間のお金でも、まず事実を確かめます

たとえば親が子名義の口座へ入金したとします。それが贈与なのか、子から預かったお金の返還なのか、生活費の負担なのかによって、検討する税務は変わります。口座の名義や送金の事実だけで結論を出さず、誰の財産を、どのような合意で、何のために移したかを整理します。

民法上の贈与は、無償で与える意思表示と相手の受諾によって成立します。家族が知らないまま名義だけを借りて積み立てた預金なら、贈与の成立自体が問題になります。一方、民法上の贈与契約がなくても、債務の免除など経済的利益に贈与税の検討が必要となる場面があります。契約の名前だけで税務が決まるわけではありません。

生前贈与の検討は、渡した後の暮らしまで含めます

検討の順序は、誰に何を渡したいか、贈与者の生活資金は足りるか、選べる課税方法は何か、将来の相続でどう扱われるか、という流れが自然です。税率の低い年を探す前に、贈与後に財産を取り戻す前提になっていないかも確認してください。

相続税と贈与税が同じ法律に置かれていることは、二つの税金を切り離さず考える手掛かりになります。贈与した年の申告だけでなく、記録の保存、将来の相続、家族全体の生活まで見渡すことで、生前贈与の目的に合った判断がしやすくなります。

主な参考資料

法令・制度の基準日:2026年07月24日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。

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本稿は2026年10月10日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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