相続税の基礎知識

親子・同族会社間の不動産売買|相続税評価額なら安心とは限らない

親子や自分の会社との間で不動産を売買するとき、「路線価で売れば問題がない」「時価の半分以上なら大丈夫」と考えるのは危険です。売主と買主が個人か法人かによって、検討する税目や低額譲渡の取扱いが異なります。まず当事者を特定し、通常の取引価額と契約価額の関係を整理します。

個人間の売買には一律の半額基準はありません

個人から著しく低い価額で財産を譲り受けた場合、時価と支払対価との差額が贈与により取得したものとみなされることがあります。不動産についてここでいう時価は通常の取引価額に相当する金額です。相続税評価額であれば必ず贈与税の問題がない、とはいえません。

著しく低いかどうかは、具体的な事案に基づいて判定します。個人から法人への低額譲渡で問題となる「時価の2分の1未満」という基準を、そのまま親子間の売買へ持ち込まないことが大切です。半額以上なら非課税という線引きはできません。

当事者主な検討事項
親などの個人→子などの個人売主の譲渡所得、買主の低額譲受けに伴う贈与税
個人→同族会社個人の時価によるみなし譲渡、会社側の受贈益等
同族会社→個人会社の税務、個人が受ける利益の所得区分等

表は検討の入口です。同じ差額でも、会社と役員、従業員、株主などの関係により取扱いが変わり得ます。会社が関係する取引を、すべて贈与税の問題として処理するものではありません。契約一本について、当事者の両側から課税関係を確認します。

個人から法人へ安く売る場合の例

個人が保有する通常の取引価額6,000万円の土地を、自分の会社へ2,000万円で売るとします。売却価額が時価の2分の1である3,000万円を下回るため、個人の譲渡所得では、原則として6,000万円を収入金額として計算する取扱いが問題になります。

実際に受け取る現金は2,000万円でも、税額計算の収入金額は6,000万円となるため、納税資金の不足が起こり得ます。この例では取得費や譲渡費用を示していないので、税額そのものは計算できません。売値だけを決めてから税理士へ伝えるのでは遅い場合があります。

相続税評価額は売買価格の万能な根拠ではありません

路線価や固定資産税評価額は、それぞれ目的のある評価です。一般の市場での取引価額と一致することを保証するものではありません。親族間売買の価格検討では、地域の取引状況、物件の権利や利用条件などを踏まえた価格資料を用意します。

例えば賃貸中の建物、再建築に制限がある土地、境界の問題がある土地では、単純な更地の査定と条件が違います。査定書を依頼する際も、どの権利と状態を前提にしているかを明確にします。価格に幅が出た場合は、採用額と理由を説明できるように残します。

売買代金を本当に支払えるかも重要です

契約書に代金を記載しても、実際に支払われず、返済の実態もないまま放置されれば、別の問題が生じます。買主の預金や借入れ、分割払の条件など、資金の流れを具体化します。親子間で資金を貸す場合も、不動産売買と金銭貸借を分けて整理します。

例えば子が父から購入資金を借りて土地を買うなら、父の財産は土地から貸付金へ変わる面があります。不動産を移しただけで父の相続財産が同額減るわけではありません。取引後の土地、現金、債権、借入金を一覧にすると、家族全体で何が変わったかが分かります。

通常の売却特例が使えるかも別に確認します

自宅の売却に関する特例などには、配偶者や一定の親族、一定の同族会社への売却を対象外とする条件があります。一般の第三者へ売った場合の税額試算を、そのまま親族や会社への売却へ転用しないようにします。所有期間や居住状況だけでなく、相手方の条件が重要です。

不動産取得税、登録免許税、登記費用なども含めて比較します。売主の所得税だけを見て有利と判断しても、買主側の税負担や手続費用を合計すると違う結果になることがあります。目的が承継なら、贈与や相続による移転との比較も有用です。

契約前に、当事者、物件、取引価額の根拠、支払方法、双方の税金を一枚に整理しましょう。親族や同族会社との取引だからこそ、第三者にも説明できる条件と記録を整えることが、後の申告や相続の場面で役立ちます。

価格を決めた経緯を保存します

取引後に問題が生じたとき、当時どの情報を基に価格を決めたかを説明できることが重要です。査定書の日付、対象物件、賃貸や修繕等の条件、比較した資料、契約価額を採用した理由をまとめます。後日取得した資料だけで当時の判断を組み立てるより、契約前に記録を整える方が実態を伝えやすくなります。価格の根拠と実際の代金支払の記録は、それぞれ別に保管してください。

参考資料

主な参考資料

法令・制度の基準日:2026年08月19日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。

ご家族と財産の状況に応じた検討を

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本稿は2026年10月10日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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