賃貸アパートを相続するときは、土地と建物を分けて評価します。建物は購入価格や建築費をそのまま使うのではなく、原則として固定資産税評価額を基礎にします。さらに、借家権や賃貸割合を反映します。毎年の所得税申告で計算する未償却残高とも違うため、手元のどの数字を使うかを最初に確認します。
建物の基本評価と賃貸の調整を分けます
一般的な家屋では、固定資産税評価額に所定の倍率1.0を掛けた価額が基礎になります。貸家はそこから、借家権割合と賃貸割合に応じた調整を行います。自宅として使う建物と、借家権の対象となる賃貸建物を同じ計算にしないことが大切です。
| 確認項目 | 主な資料 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 建物の基礎価額 | 課税明細・評価証明書 | 対象年と建物全体の評価額 |
| 賃貸されている範囲 | 契約書・部屋別一覧 | 課税時期の契約と利用状況 |
| 独立部分の面積 | 図面・面積表 | 部屋数ではなく床面積 |
| 空室の事情 | 入退去・募集記録 | 一時的な空室に当たるか |
満室と空室がある場合の計算例
固定資産税評価額2,000万円、借家権割合30%、賃貸割合100%の一般的な貸家なら、2,000万円×(1−30%×100%)=1,400万円です。建築に5,000万円かかったとしても、その金額を直接この式に入れるわけではありません。
同じ建物で賃貸割合が80%なら、2,000万円×(1−30%×80%)=1,520万円です。貸している部分が減ると借家権に応じた控除も小さくなり、この例では満室時より120万円高くなります。賃貸割合を建物の評価額全体へ最後に掛けてしまうと、空室部分の価値が消える誤った計算になります。
部屋の広さが違うときは戸数で計算しません
10室のうち8室入居だから賃貸割合80%と計算できるのは、独立部分の床面積がすべて同じなどの条件がそろう場合です。大きな店舗が空き、小さな住戸が満室の場合、戸数と床面積では割合が大きく違います。部屋別の面積表を作ると確認しやすくなります。
例えば20平方メートルの住戸4室と80平方メートルの店舗1室から成る建物で、住戸だけが賃貸されているとします。独立部分の面積合計は160平方メートル、賃貸部分は80平方メートルなので、面積による割合は50%です。5区画中4区画という戸数割合80%とは一致しません。
空室の扱いには記録が役立ちます
課税時期に空いていた部屋でも、従前から継続的に賃貸され、退去後速やかに募集し、他の用途に転用せず、空室が一時的であるなどの事情が認められれば、賃貸されていたものとして扱える場合があります。国税庁の示す期間の例だけを切り取って判断しないことが必要です。
入居履歴、募集開始日、管理会社とのやり取り、次の契約書などをまとめます。家族の荷物置場として使っていた部屋や、賃貸をやめて長期間空けていた部屋は、募集継続中の一時的な空室とは分けて検討します。課税時期の状態を後から説明できるようにすることが目的です。
分譲マンションの一室は追加の確認があります
2024年1月1日以後に取得した一定の居住用の区分所有財産には、区分所有補正率を用いる評価が導入されています。対象となる分譲マンションの一室を賃貸している場合、従来の固定資産税評価額だけを基礎に計算してよいとは限りません。土地の敷地利用権についても対応が必要です。
一棟所有の通常のアパートと、区分所有するマンションの一室を同じ資料として扱わないようにします。建物の種類、登記、階数、所在階、築年数など、該当性や補正に必要な情報を確認します。本稿の計算例は、この区分所有補正の対象ではない一般的な貸家を前提としています。
借入金と敷金は建物の評価額とは別に整理します
建物を購入した際のローンが残っていても、建物そのものの評価額から直接差し引いて建物価格とするわけではありません。相続財産の評価と債務控除を区別して整理します。預り敷金等についても、返還義務や契約条件を確認する必要があります。
賃貸物件では、土地、建物、預金、未収家賃、借入金、敷金などが一つの事業に関係します。収支表の合計だけで処理せず、それぞれの財産・債務を分けて確認しましょう。建物の評価は、基礎価額と賃貸状況を確かめるところから始まります。
取得後の運営資料にもつながります
部屋別の契約、床面積、入退去日を整理した一覧は、相続税評価だけでなく、相続後の家賃管理にも役立ちます。誰が賃貸人の地位を引き継ぎ、敷金を管理し、修繕を判断するのかも確認しておきます。評価のために集めた資料を一度きりで終わらせず、物件の管理資料へ引き継ぐと、相続後の問い合わせに対応しやすくなります。税務上の評価日と運営上の引継日が異なる場合は、その違いも明記します。
参考資料
主な参考資料
法令・制度の基準日:2026年08月17日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。
ご家族と財産の状況に応じた検討を
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相続・贈与・事業承継のご相談はこちら →本稿は2026年10月10日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
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