配当還元方式は、一定の少数株主等が取得する非上場株式について、配当に着目して評価する方法です。会社の土地や内部留保を詳しく評価する原則的な方法とは考え方が異なります。ただし、税額が低くなる方を自由に選べる制度ではありません。計算より先に、取得者が対象となる株主かを確認します。
取得者の立場によって使えるかが決まります
財産評価基本通達188には、同族株主以外の株主等が取得した株式の区分が定められています。本人の議決権割合だけでなく、同族関係者を含むグループ、中心的な株主の有無、役員であるかなどを確認します。経営を担う後継者が少数の株式を受け取る場合でも、自動的に対象になるわけではありません。
対象者の判定を省いて配当だけを確認しても、正しい評価にはつながりません。株主名簿と定款、役員の情報、家族や法人との関係が入口の資料です。贈与前の持株比率と贈与後の持株比率を取り違えないよう、対象取引を明確にします。
| よくある理解 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 株数が少なければ使える | 親族等を含む議決権と役員要件を判定します |
| 配当がゼロなら株価もゼロ | 計算上の年配当金額には下限があります |
| 配当を10%で割れば完成 | 50円換算と実際の株式単位への換算が必要です |
| 原則的評価の計算は不要 | 原則的評価による価額との上限比較があります |
年配当金額を10%で還元します
基本の計算は、所定の年配当金額を10%で割り、実際の1株当たり資本金等の額と50円との比率を掛けるものです。年配当金額は通達に従って計算した50円換算の金額です。最近の配当金通知に記載された1株の配当を、そのまま式へ入れると単位が合わないことがあります。
配当の計算対象期間や、一時的な配当等の取扱いも確認します。決算書の配当総額、株主総会議事録、資本金等の額、自己株式の状況を照合すると、対象となる金額を追いやすくなります。配当を受け取った個人の預金入金額だけでは、源泉徴収などの影響もあり十分ではありません。
無配でも原則ゼロにはなりません
計算上の年配当金額が2円50銭未満の場合や無配の場合には、2円50銭を用います。例えば、1株当たり資本金等の額が5,000円の株式について、この下限を使うと、2.5円÷10%×(5,000円÷50円)=2,500円です。無配というだけで贈与価額をゼロにすることはできません。
対象株式が200株なら、上限比較前の価額は2,500円×200株=50万円となります。一方、原則的評価方式による1株の価額が1,800円であれば、配当還元方式で計算した額がそれを上回るため、通達の上限比較を行います。配当還元の式を一度計算するだけでは終わらない理由です。
配当を止めれば直ちに評価が下がるとは限りません
配当は所定の期間を基に計算するため、ある年だけ無配としたことが、そのまま当年の評価をゼロへ近づけるとは限りません。また、株主にとっては現金収入が減ります。少数株主との関係や、従来の配当方針も含めて考える必要があります。
さらに、配当を抑えた資金が会社に残れば、別の株主に適用される原則的評価の純資産などへ影響する場合があります。ある株主の評価額だけを取り出して最適化すると、会社全体の承継設計と整合しなくなることがあります。株主ごとに適用方式を整理すると、この違いが見えやすくなります。
税務評価額と実際の売却価格は区別します
配当還元方式で低い評価額が出ても、その価格で会社や他の株主に売却できるとは限りません。譲渡制限の有無、買手の意思、経営権への影響などが取引条件になります。相続税・贈与税の評価と、株式買取り交渉の価格は目的が違います。
例えば相続した少数株式を現金化したい場合、評価額を知ることと買手を確保することは別の課題です。会社の定款を確認し、譲渡の手続と税務を並行して検討します。税務上の計算だけで、家族間の買取金額を決めない方がよい場面もあります。
配当還元方式を検討するときは、対象者の判定、配当の計算、単位換算、原則的評価との比較という順序を守ります。簡単に見える式ほど、式に入る前の条件が重要です。評価資料には、その株主がなぜ対象となるかを説明できる根拠を残しておきましょう。
配当資料の不足は早めに確認します
少数株主が自分で評価を依頼する場合、会社の決算や配当の決議資料を自由に入手できないことがあります。手元の情報だけで計算できる範囲と、会社から提供を受ける必要がある範囲を先に分けます。無配であるという記憶だけで処理せず、対象期間と配当実績を資料で確認します。原則的評価との比較にも会社資料が必要になり得るため、申告の直前に不足が判明しないよう、資料収集の依頼内容を具体化することが重要です。
参考資料
主な参考資料
法令・制度の基準日:2026年08月09日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。
ご家族と財産の状況に応じた検討を
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