相続税の基礎知識

毎年の自社株贈与は株価を確認してから|同じ株数でも価額は変わる

自社株を毎年少しずつ後継者へ贈与する方法では、前年と同じ株数を移しても贈与価額が同じとは限りません。会社の利益や資産、株主構成、評価に使う公表データが変わるためです。「毎年110万円以内にする」という方針を立てた場合でも、その年の株価と他の贈与を確認する作業は欠かせません。

株数固定と金額固定は違う計画です

例えば、ある年の1株評価額が1万円なら100株は100万円です。翌年に1株1万5,000円になれば、同じ100株でも150万円になります。贈与する株数を毎年固定する計画と、贈与価額の目安を固定する計画は、会社が成長するほど違いが大きくなります。

説明用の年度1株評価額100株の価額110万円以内の整数株数の例
1年目1万円100万円110株
2年目1万5,000円150万円73株=109万5,000円
3年目2万円200万円55株

表は暦年課税で他の贈与がなく、株価が確定しているという単純化した例です。実際には、受贈者がその年に他の人から受けた贈与も確認します。暦年課税の基礎控除110万円は、贈与者ごとや財産ごとの枠ではなく、受贈者について年間で判断するためです。

評価額が上がる理由を分けて確認します

株価の上昇には、利益の増加、内部留保の積み上がり、土地等の含み益、評価方式や会社規模の変化など、複数の理由があります。毎年の評価表に1株の価額だけを記録すると、なぜ変わったかが分かりません。採用方式と主な変動項目を併記すると、翌年以降の計画に使えます。

例えば大きな資産売却があった年は、現金の増加や利益への影響を確認します。赤字になった年でも、過去の蓄積や資産の含み益が残っていれば、評価額が大きく下がるとは限りません。営業利益の推移だけで贈与時期を判断しないことが大切です。

贈与の都度、株主の区分も見直します

後継者の持株比率が年々増えると、取得後の議決権に基づく判定も変わる可能性があります。前年に使った評価方式を翌年も当然に使えるとは限りません。本人の役員就任、他の家族の相続、自己株式取得なども、株主構成を見直すきっかけになります。

贈与する株数を決める際には、税額と同時に、贈与後の議決権一覧を作ります。「何年後に経営権をどこまで集めるか」という目標に対し、毎年の少額贈与だけで届くのかも確認できます。非課税の範囲にこだわるあまり、承継が必要な時期に間に合わない計画にならないようにします。

贈与したことを示す手続も残します

株価の計算が正しくても、贈与の合意や株式移転の手続が不明確なら別の問題が残ります。贈与契約、譲渡制限株式に必要な承認、株主名簿の更新など、会社の状況に合った手続を確認します。契約書だけ作り、名簿や配当の取扱いが以前のままという状態は避けたいものです。

複数年にわたり毎年一定数を渡す計画では、最初から将来の給付を約束しているのか、その都度独立して贈与を決めているのかも整理します。「日付を毎年変えれば大丈夫」といった形式的な対応ではなく、実際の合意内容に沿った書類を作成することが基本です。

暦年課税だけを前提にしない

相続時精算課税を選択している贈与者との間では、暦年課税とは異なる制度で計算します。相続時精算課税を選ぶと、その贈与者について暦年課税へ戻れません。また、生前贈与と将来の相続税との関係も確認する必要があります。目先の贈与税がゼロであれば計画が最適とは限りません。

承継の目的が経営権の集中なのか、将来の税負担の見通しなのかで、比較すべき案も違います。一括贈与、段階的贈与、相続による承継、事業承継税制の利用などを同じ前提で比較すると、毎年贈与の長所と制約が分かりやすくなります。

実務では、決算確定後に概算を更新し、贈与予定日と株数を検討し、必要な資料がそろった段階で評価と手続を確定する流れが考えられます。毎年の贈与を自動作業にせず、株価、他の贈与、議決権、資金の四点を見直す機会として活用しましょう。

年間の贈与記録を受贈者ごとに作ります

株式を渡す側は自社株だけに注目しがちですが、受け取る側には祖父母からの現金など別の贈与があるかもしれません。受贈者ごとの年間一覧に、贈与者、日付、財産、価額、適用する課税制度を記録します。株価が確定する前の計画額と、確定後の価額も区別しておきます。株式の贈与だけで基礎控除を使い切る設計では、追加の贈与によって結果が変わるため、実行前に当年の状況を家族内で確認することが有用です。

参考資料

主な参考資料

法令・制度の基準日:2026年08月10日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。

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本稿は2026年10月10日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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