自社株評価でいう「大会社」「中会社」「小会社」は、普段の会話で使う会社の大小と同じではありません。資本金が少ないから小会社、地域で有名だから大会社、という決め方はできません。相続税・贈与税の評価では、従業員数、帳簿上の総資産、取引金額を通達の基準に当てはめます。
会社規模は評価方式を決めるための区分です
一般的な会社について原則的評価方式を使う場合、大会社は類似業種比準方式、小会社は純資産価額方式、中会社は両者の併用が基本です。いずれも一定の選択が認められています。なお、配当還元方式の対象となる株主や、特定の評価会社に当たる場合は、通常の規模区分だけで結論を出せません。
| 規模区分 | 基本となる評価 | 主な選択肢 |
|---|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額 | 純資産価額を選択可能 |
| 中会社 | 類似業種比準と純資産の併用 | 純資産価額による評価も検討 |
| 小会社 | 純資産価額 | 原則的評価の範囲で50%ずつの併用を選択可能 |
従業員数は名簿の人数を写すだけでは足りません
判定に用いる従業員数が70人以上である会社は大会社に区分されます。ただし、ここでいう人数には独自の計算があります。継続勤務の状況や労働時間を確認し、一定の役員を除き、継続勤務従業員以外の年間労働時間を換算する取扱いがあります。
パートや季節雇用が多い会社では、給与台帳に登場する人数と評価上の従業員数に差が出ることがあります。単に期末時点の在籍者を数えるのではなく、直前期末以前1年間を対象として資料をそろえます。勤務形態が多様な会社ほど、集計根拠を残すことが大切です。
総資産と売上は業種別の基準に当てはめます
規模判定では、卸売業、小売・サービス業、それ以外という業種区分があり、基準額が異なります。総資産の基準には従業員数の条件が組み合わされ、取引金額側の基準も別に確認します。総資産だけ、売上だけを見て小会社と決めないようにします。
また、規模判定の総資産は原則として直前期末の帳簿価額です。純資産価額方式で土地などを評価し直す際の金額とは用途が異なります。二つの数字を同じ表に置く場合は、「帳簿価額」と「相続税評価額」を明確に分けると、転記ミスを防ぎやすくなります。
併用割合が変わると評価額も変わります
中会社の計算は、類似業種比準価額にLを掛け、純資産価額に1−Lを掛けて合計します。Lは規模に応じて0.90、0.75、0.60です。次の例では、各価額は既に必要な調整を終えた1株当たりの金額とし、特定の評価会社には当たらないものとします。
類似業種比準価額が4万円、純資産価額が10万円で、Lが0.75なら、4万円×0.75+10万円×0.25=5万5,000円です。Lが0.60なら、4万円×0.60+10万円×0.40=6万4,000円になります。規模の区分を一段誤るだけでも、100株では90万円の差になります。
もっとも、類似業種比準価額が必ず純資産価額より低いわけではありません。両者の大小が逆なら、併用割合の変化が評価額に及ぼす方向も変わります。「会社を大きくすれば株価が下がる」という単純な理解ではなく、会社自身の数字で比較することが必要です。
通常の規模判定に進めない会社もあります
土地や株式の保有割合が高い会社、開業後3年未満の会社などには、特定の評価会社として別の取扱いがあります。現金や不動産を持つ資産管理会社は、最初にその該当性を確認します。通常の中会社の式を完成させてから例外に気付くと、評価をやり直すことになります。
事業を売却したり、多額の土地を購入したりした年は、前年と同じ区分とは限りません。事業内容と資産構成に大きな変化がなかったかを、決算書だけでなく取引の経緯と合わせて確認します。年次比較表には、株価だけでなく規模区分と採用方式を記載しておくと変動理由を説明しやすくなります。
依頼する際は、直前期の決算書、売上内訳、従業員の勤務状況、資産明細を用意します。会社規模の判定は計算の前提です。最終的な1株の金額だけでなく、どの基準によりその区分となったかを確認できる評価資料を残しておきましょう。
規模の変更と業績の変更を分けて記録します
前年との比較では、従業員数、総資産、取引金額、Lの値を横に並べます。株価が上がった理由が利益の増加なのか、会社規模が変わって純資産の比重が増えたためなのかを区別できます。会社の成長に伴う採用や設備投資は、本来の事業計画を基に判断するものです。評価区分だけを目的に人員や資産を動かすと、経営上の費用が評価上の効果を上回ることもあります。実行前の試算では、株価と会社の現金残高を同時に確認することが有用です。
参考資料
主な参考資料
法令・制度の基準日:2026年08月06日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。
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