この版の位置づけ
令和3年6月30日に公表された版です。国税庁の索引ページでは「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」という文言でリンクされています。問の数は33です。
前の版は令和2年12月18日の32問でした。半年余りで1問増えたことになります。増えたのは1問だけで、ほかに見出しが変わった問が1つあります。動いたのは、その2か所だけです。
この版には、内容よりも先に目に付く特徴があります。公表が6月だという点です。暗号資産のFAQは平成29年12月の初版から令和7年12月の最新版まで10回公表されていますが、年の途中に出たのは、この版だけです。
骨格
| 前の版からの変化 | 内容 |
|---|---|
| 公表の時期 | 前の版は令和2年12月18日、この版は令和3年6月30日です。10版のうち、年の途中に公表されたのはこの版だけです。 |
| 問の数 | 32問から33問になりました。 |
| 新しく立った問 | ≪消費税関係≫に「30 暗号資産の貸付けにおける利用料」が加わりました。 |
| 見出しが変わった問 | 16の見出しが「暗号資産を低額譲渡した場合の取扱い」から「暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い」になりました。 |
| 番号の繰り下がり | 30が入ったことで、≪法定調書関係≫の3問が31から33に繰り下がりました。 |
| 消費税関係の分量 | それまで1問だけだった消費税関係が、2問になりました。 |
| 税制改正との関係 | 令和3年度の税制改正の大綱には、暗号資産に関する記載がありません。法律の改正を受けて出た版ではありません。 |
なぜ12月ではなく6月なのか
10版の公表日を並べると、この版の位置がはっきりします。平成29年12月1日、平成30年11月21日、令和元年12月20日、令和2年12月18日、そしてこの令和3年6月30日、続いて令和3年12月22日、令和4年12月22日、令和5年12月25日、令和6年12月20日、令和7年12月26日です。
10版のうち9版が、11月下旬から12月下旬に集まっています。年の後半に改訂するというリズムが、初版から一貫しています。そこから外れているのが、この令和3年6月30日版です。
しかも、この年は12月にも改訂されています。令和3年12月22日版が、その半年後に出ました。令和3年だけが、1年に2回改訂された年です。
なぜ6月だったのか。国税庁は、その理由をFAQにもその後の版にも書いていません。ここは推測を避けて、事実として言えるところまでにとどめます。言えるのは、次の年に出る改訂を待たずに、この2か所だけを先に直したということです。
増えた1問は何を扱っているのか
加わったのは「30 暗号資産の貸付けにおける利用料」です。≪消費税関係≫に置かれました。
暗号資産の貸付けは、レンディングと呼ばれる取引です。持っている暗号資産を一定期間だけ他人に貸し、その対価として利用料を受け取ります。貸した暗号資産そのものは、期間の終わりに戻ってきます。売ったわけではありませんので、手放したという形にはなりません。
前の版まで、消費税関係の問は1問だけでした。「暗号資産を譲渡した場合の消費税」を扱う問で、売ったときの話です。この版で、貸したときの話が並びました。
消費税の側から見ると、この並び方には理由があります。暗号資産の譲渡が消費税の非課税とされたのは平成29年度の税制改正で、大綱には「資金決済に関する法律に規定する仮想通貨の譲渡について、消費税を非課税とする。」と書かれていました。定められたのは、譲渡についての扱いです。貸して利用料を受け取る取引は、譲渡そのものではありません。
暗号資産の消費税の枠組みそのものは、暗号資産を売っても消費税はかからないで扱っています。この版が新しく立てたのは、その枠組みの隣にある取引についての問です。
「低額(無償)譲渡等」への書き換えは何を示すのか
もう1か所の変化は、16の見出しです。「暗号資産を低額譲渡した場合の取扱い」が「暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い」になりました。
入ったのは、かっこ書きの「無償」と、末尾の「等」です。前の版の見出しは、安く売った場合を指す言葉でした。この版の見出しには、対価をまったく受け取らない場合が明記されています。
見出しの言葉が増えたという事実と、答の中身がどう変わったかは別の話です。ここでは、見出しに現れたところまでを押さえておきます。無償で渡す場面がFAQの表側に出てきた、ということです。
なお、無償で渡す場面は、その後さらに細かく分かれていきます。最新の令和7年12月版では「1-4 暗号資産による寄附を行った場合」が別の問として立っています。この問が加わったのは令和6年12月版です。
税制改正がないのに改訂されたのはなぜか
令和3年度の税制改正の大綱には、「暗号資産」も「仮想通貨」も1回も出てきません。同じことは令和4年度の大綱にも当てはまります。この版は、法律が変わったから出た版ではありません。
それまでの改訂は、税制改正と結び付いていました。平成31年度の大綱は、個人の暗号資産の評価について移動平均法または総平均法により算出した取得価額で評価すること、法人の暗号資産について時価法を導入することなどを定めています。この内容は、令和元年12月20日の版で問の数が21から32へ増えたことに対応しています。用語が「仮想通貨」から「暗号資産」に変わったのも、資金決済法等の改正を受けたものです。
この版は、その系列から外れます。法律の改正ではなく、取引の側の動きに合わせた改訂だと読めます。実際、半年後の令和3年12月22日版では、6の見出しが「暗号資産をマイニングにより取得した場合」から「マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合」に変わりました。レンディングという語が、所得を計算する側の問にも現れます。
6月の版が消費税の側から貸付けを取り上げ、12月の版が所得の側で同じ取引に言葉を与えた、という順序になっています。マイニングなどで取得したときの扱いはマイニング等で取得したときで扱っています。
実務で迷いが生じるところ
- 令和3年には版が2つあります。6月30日版と12月22日版で、問の数はどちらも33です。数が同じですので、数だけでは区別が付きません。6の見出しにレンディングの語が入っていれば12月版です。
- 問番号がずれています。30が入ったことで、財産債務調書と国外財産調書に関する3問は31から33になりました。手元の資料が「30 財産債務調書への記載の要否」と書いているなら、それは令和2年12月版までの番号です。
- 最新版とは番号の付け方そのものが違います。令和4年12月版から、通し番号ではなく章番号と枝番の形になりました。この版の16と同じ見出しは、令和7年12月版では2-10です。この版の30と同じ見出しは、6-2です。
- この版で問が立ったということは、それまで国税庁の文章になっていなかった論点だということです。答の中身は、下に挙げたPDFでご確認ください。この記事では、どの問が動いたかまでを扱っています。
- 6月に公表された版だという点は、記録の上でも意味があります。令和3年分の申告について何を見ていたかを後から振り返るときは、6月30日版と12月22日版のどちらの時点の話かを確かめる必要があります。
各版の変化を通しで追う場合は暗号資産FAQの改訂史を、前後の版は令和2年12月版and令和3年12月版をご覧ください。
出典
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
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