Tax Reform Outline Review

平成22年度税制改正大綱で決まったこと、扶養控除の見直しとたばこ税

何が、いつ、誰の手で決まったのか

平成22年度税制改正大綱は、平成21年12月22日に公表された、政府が決定した大綱です。表題には「~納税者主権の確立へ向けて~」という副題が添えられています。その年度に変える項目を並べる前に、税制改正の考え方そのものを長く述べているところが、この年の大綱の特徴です。

大綱は「はじめに」で環境の変化を五つ挙げ、第1章で税制改革の視点を示します。出発点は次の一文です。

特に税制は「代表なくして課税なし」の言葉に象徴されるように、議会制民主主義の根幹をなすものであり、そのあり方については主権者たる国民、すなわち納税者にとって納得できるものでなければなりません。

ここから、大綱は「公平・透明・納得」の三原則を基本に置くと述べます。近年の大綱の読み方は令和8年度税制改正大綱のポイントもあわせてご覧ください。

大綱の柱

大綱は「はじめに」と五つの章、六つの別紙、参考資料からできています。

その章で決まったこと
はじめに 我が国を取り巻く五つの環境変化と、これまでの政府の対応、鳩山政権での対応が述べられます。
第1章 税制改革に当たっての基本的考え方 「公平・透明・納得」の三原則を基本とすることをはじめ、重点を置く五つの視点が示されます。
第2章 新しい税制改正の仕組み 政府に新しい税制調査会を設置したことと、租税特別措置を見直す「ふるい」の導入が述べられます。
第3章 各主要課題の改革の方向性 納税環境整備、個人所得課税、法人課税、資産課税、消費税など九つの分野について、中長期的な方向性が示されます。
第4章 平成22年度税制改正 この年度に実際に講じる措置が並びます。扶養控除の見直し、たばこ税の引上げ、租税特別措置等の見直しなどです。
第5章 今後の進め方 専門家委員会を近日立ち上げ、税制抜本改革実現に向けての具体的ビジョンとして工程表を作成することが述べられます。

第4章の冒頭は、一体として講じる措置を次のように挙げています。

「控除から手当へ」等の観点からの扶養控除の見直し、国民の健康の観点を明確にしたたばこ税の税率の引上げ、「新しい公共」を支える市民公益税制の拡充、納税者の視点に立った租税特別措置等の見直しその他の各般の税目にわたる所要の措置を一体として講じます。

前年の平成21年度税制改正の大綱、翌年の平成23年度税制改正大綱と並べると、この年に構成が変わったことが分かります。

「公平・透明・納得」と、租税特別措置の「ふるい」

第2章は、税制改正の決め方から書き起こしています。それまでの税制改正は与党と政府の税制調査会でバラバラに議論され、実質的な意思決定は法的な権限や責任を有しない与党の税制調査会で行われてきた、と大綱は指摘します。そのうえで、両者の機能を一元化し、政治家から構成される「税制調査会」を政府に新しく設置したと述べています。審議の模様はインターネット中継で配信することとされました。

もうひとつの柱が、租税特別措置の見直しです。特定の政策目的により税負担の軽減等を行う「政策税制措置」は国税で241項目、地方税で286項目あり、そのすべてを「ふるい」にかけて今後4年間で抜本的に見直すとされています。初年度となる平成22年度税制改正では、国税で82項目、地方税で90項目を見直し、国税で41項目、地方税で57項目を廃止又は縮減することとされました。

適用実態を明らかにする仕組みも用意されます。法人税関係の租税特別措置について「適用額明細書」の提出を求め、適用実態調査の結果を国会へ報告する「租特透明化法(仮称)」の制定を目指すとされています。納税者の権利については、第3章で「納税者権利憲章(仮称)」を早急に制定するとされ、課税庁の増額更正の期間制限が3~7年であるのに対して更正の請求の期間制限が1年であることは早急に見直す必要がある、と述べられています。

扶養控除の見直し ―「控除から手当へ」

納税者にとっていちばん影響が大きいのは、扶養控除の見直しです。大綱は、同じ38万円の所得控除でも高所得者が10万円を超える減税になるのに対して低所得者では2万円の減税にもならないという例を挙げ、所得控除は高所得者に有利な制度になっていると説明します。そのうえで、子ども手当の創設とあいまって0歳から15歳までの子どもを控除対象とする扶養控除を廃止し、高校の実質無償化に伴い16歳から18歳までの特定扶養親族に対する控除の上乗せ部分も廃止するとしています。

Target 所得税 個人住民税
年少扶養親族(16歳未満) 扶養控除を廃止します。 扶養控除を廃止します。
特定扶養親族のうち16歳以上19歳未満 上乗せ部分(25万円)を廃止し、扶養控除の額を38万円とします。 上乗せ部分(12万円)を廃止し、扶養控除の額を33万円とします。
適用時期 平成23年分以後の所得税に適用します。 平成24年度分以後の個人住民税に適用します。

これに伴い、同居の特別障害者である場合に扶養控除又は配偶者控除の額に加算する措置は、特別障害者控除の額に加算する措置に改められます。国民健康保険料や保育料等への影響については、制度の所管府省が適切な措置を講じることとされています。

大綱はこの先も見据えています。配偶者控除は今後見直しに取り組むとされ、給与所得控除については上限を設けるなどの見直しが必要だと述べられています。控除しきれない額を現金で給付する「給付付き税額控除」の導入も考えられるとしています。

会社の税制 ― グループ内の取引と、一人オーナー会社の制度廃止

特殊支配同族会社の制度は廃止

いわゆる一人オーナー会社について、業務主宰役員の役員給与の一部を損金不算入とする制度が設けられていました。大綱は、この制度が「二重控除」の問題に対処するために設けられたとしつつ、是正の手法として適当かといった批判があるとして、廃止するとしています。平成22年4月1日以後に終了する事業年度から適用されないこととされ、抜本的措置は平成23年度税制改正で講じるとされています。

完全支配関係にあるグループの取引

100%グループ内の内国法人間で一定の資産の移転を行ったことにより生ずる譲渡損益は、その資産のグループ外への移転等の時に、移転を行った法人において計上する制度に改められます。100%グループ内の内国法人間の寄附金は、支出法人において全額損金不算入とするとともに、受領法人において全額益金不算入とされます。

中小企業向けの特例にも線が引かれます。資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人に係る軽減税率、特定同族会社の特別税率の不適用、貸倒引当金の法定繰入率は、資本金5億円以上の法人等の100%子法人には適用しないこととされました。

たばこ税の引上げと、暫定税率の廃止

たばこ税は、国民の健康の観点から引き上げられます。たばこの消費を抑制するため将来に向かって税率を引き上げていく必要があるとされ、平成22年度において1本あたり3.5円の税率引上げ(価格上昇は5円程度)を行うとされています。旧3級品以外の製造たばこの税率は、1,000本につき国と地方の合計で7,924円から11,424円になります。適用は平成22年10月1日からで、手持品課税も行われます。

揮発油税、地方揮発油税及び軽油引取税に係る現行の10年間の暫定税率は廃止されます。ただし、当分の間、揮発油税と地方揮発油税は両税計53,800円/kl、軽油引取税は32,100円/klという現在の税率水準を維持することとされました。あわせて、原油価格の異常な高騰が続いた場合には、本則税率を上回る部分の課税を停止できるような法的措置を講ずるとされています。

自動車重量税と自動車取得税も、現行の10年間の暫定税率が廃止されます。自動車重量税は、当分の間の措置として電気自動車などに本則税率を適用する見直しが行われ、いわゆる「エコカー減税」は仕組みが維持されます。地球温暖化対策のための税は、平成23年度実施に向けて更に検討を進めるとされています。

相続・住宅・寄附で変わること

相続税では、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例が見直されます。相続人等が相続税の申告期限まで事業又は居住を継続しない宅地等は、適用対象から除外されます。この宅地等は、現行では200平方メートルまで50%の減額の対象です。適用は平成22年4月1日以後の相続又は遺贈により取得する小規模宅地等からです。

住宅の資金を援助してもらう場面は、逆に広がります。直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、非課税限度額が現行の500万円から、平成22年中の贈与は1,500万円、平成23年中の贈与は1,000万円に引き上げられます。適用対象は贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下の者に限定され、適用期限は平成23年12月31日までとされます。

寄附については、所得税の寄附金控除の適用下限額が現行の5千円から2千円に引き下げられ、平成22年分以後の所得税に適用されます。

ご自身に関係があるかを見分けるには

  • 16歳未満のお子さんを扶養している方は、諸控除の見直しをご覧ください。扶養控除は廃止され、所得税は平成23年分以後、個人住民税は平成24年度分以後に適用されます。
  • 16歳以上19歳未満のお子さんを扶養している方も、同じ項目をご覧ください。上乗せ部分が廃止され、扶養控除の額は所得税で38万円、個人住民税で33万円になります。
  • ご自身が一人で会社を経営している方は、法人課税の項目をご覧ください。業務主宰役員給与の損金不算入制度は、平成22年4月1日以後に終了する事業年度から適用されないこととされています。
  • 自宅や事業用の土地を相続で引き継ぐ見込みのある方は、資産課税の項目をご覧ください。申告期限まで事業又は居住を継続するかどうかで、特例の対象になるかが変わります。
  • 親や祖父母から住宅資金の援助を受ける予定のある方も、同じ項目をご覧ください。贈与を受ける年と、その年の合計所得金額が要件になります。
  • 寄附をしている方、たばこを吸う方、車をお持ちの方は、それぞれ市民公益税制、たばこ税、車体課税の項目をご覧ください。適用の始まる時期は項目ごとに違います。

出所

  • 「平成22年度税制改正大綱 ~納税者主権の確立へ向けて~」(平成21年12月22日)

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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