何が、いつ、誰の手で決まったのか
平成21年度税制改正の大綱は、平成20年12月19日に財務省が公表した政府の大綱です。原文の表題の右肩には「20.12.19 財 務 省」とだけ記されています。この大綱がどういう状況で書かれたかは、前文の一文にはっきり示されています。
現下の経済金融情勢を踏まえ、景気回復の実現に資する等の観点から、住宅・土地税制、法人関係税制、中小企業関係税制、相続税制、金融・証券税制、国際課税、自動車課税等について所要の措置を講ずることとし、次のとおり税制改正を行うものとする。
景気回復を正面に置いた大綱ですので、負担を増やす項目はほとんど見当たりません。並ぶのは、支出や投資の判断に直結する分野の措置です。近年の大綱の読み方は令和8年度税制改正大綱のポイントもあわせてご覧ください。
大綱の柱
大綱は九つの章からできています。章の名前と、その章で決まったことは次のとおりです。
| 章 | その章で決まったこと |
|---|---|
| 住宅・土地税制 | 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除が5年延長されます。長期優良住宅と改修工事の税額控除、土地の1,000万円特別控除も創設されます。 |
| 法人関係税制 | エネルギー需給構造改革推進設備等について取得価額まで特別償却ができることとされ、資源生産性革新設備等の特別償却も設けられます。 |
| 中小企業関係税制 | 年800万円以下の所得に対する法人税の軽減税率が18%に引き下げられ、欠損金の繰戻しによる還付制度も適用できるようになります。 |
| 相続税制 | 取引相場のない株式等に係る相続税と贈与税の納税猶予制度が創設され、農地等に係る納税猶予制度も見直されます。 |
| 金融・証券税制 | 上場株式等の配当所得と譲渡所得等に対する軽減税率が見直され、確定拠出年金の拠出限度額が引き上げられます。 |
| 国際課税 | 外国子会社から受ける配当等を益金に算入しない制度が導入され、間接外国税額控除は廃止されます。 |
| 自動車課税 | 環境性能の高い検査自動車について、自動車重量税が免除または軽減されます。 |
| 納税環境整備 | 支払調書の対象や届出書類の記載事項が見直され、電子証明書を有する個人の電子申告に係る税額控除は2年延長されます。 |
| その他 | 農地制度の見直しに伴う手当てのほか、定額給付金には所得税を課さないことが定められます。 |
大綱には「平成21年度の税制改正(内国税関係)による増減収見込額(概算)」が添えられています。合計は平年度で6,850億円の減収、初年度で4,690億円の減収です。減収額がいちばん大きいのは中小企業関係税制の2,220億円(平年度)で、住宅・土地税制の1,770億円が続きます。前年の平成20年度税制改正の大綱、翌年の平成22年度税制改正の大綱と並べて読むと、この年の力点が見えます。
住宅ローン控除の拡充と、新しい税額控除
住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除は、適用期限が5年延長されます。あわせて、平成21年から平成25年までの間に居住の用に供した場合の控除期間、年末残高の限度額、控除率が次のとおり定められます。
| 居住年 | 控除期間 | 住宅借入金等の年末残高の限度額 | 控除率 |
|---|---|---|---|
| 平成21年 | 10年間 | 50 million yen | 1.0% |
| 平成22年 | 10年間 | 50 million yen | 1.0% |
| 平成23年 | 10年間 | 4,000万円 | 1.0% |
| 平成24年 | 10年間 | 30 million yen | 1.0% |
| 平成25年 | 10年間 | 2,000万円 | 1.0% |
認定長期優良住宅の新築等をして同じ期間に居住した場合は、別に特例が設けられます。控除期間は同じく10年間で、年末残高の限度額は平成21年から平成23年までが5,000万円、平成24年が4,000万円、平成25年が3,000万円、控除率は平成21年から平成23年までが1.2%、平成24年と平成25年が1.0%とされます。
借入れがなくても使える税額控除も創設されます。認定長期優良住宅の新築等をして居住した場合は、標準的な性能強化費用相当額(1,000万円が限度)の10%を所得税額から控除します。既存住宅の改修では、一定の省エネ改修工事について工事費用の額と標準的な工事費用相当額のいずれか少ない金額(200万円、太陽光発電装置を設置する場合は300万円が限度)の10%、一定のバリアフリー改修工事について200万円を限度とした金額の10%を控除します。いずれも合計所得金額が3,000万円を超える年は適用されません。耐震改修に係る税額控除も5年延長されます。
中小企業の法人税を軽くする2つの措置
ひとつは税率です。中小法人等の年800万円以下の所得の金額に対する法人税の軽減税率が、22%から18%に引き下げられます。対象になるのは、平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度です。協同組合等または特定医療法人が連結親法人である場合の税率も、年800万円以下の金額について23%から19%に引き下げられます。
ここでいう中小法人等とは、各事業年度終了の時において資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下である普通法人などのほか、公益法人等、協同組合等、人格のない社団等をいいます。
もうひとつは欠損金の繰戻しによる還付です。中小法人等の平成21年2月1日以後に終了する各事業年度において生じた欠損金額については、欠損金の繰戻しによる還付制度を適用できることとされます。赤字が出た年に、前の事業年度に納めた法人税の還付を求める道が開きます。
自社株を引き継ぐときの納税猶予の創設
取引相場のない株式等、つまり非上場会社の株式を引き継ぐ場面について、相続税と贈与税の納税猶予制度が創設されます。相続の場合は、経営承継相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した議決権株式等に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。対象は、相続開始前から既に保有していたものを含めて、その会社の発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分に限られます。
贈与の場合は、猶予される割合が違います。経済産業大臣の確認を受けた後継者が、代表者であった者からその保有株式等の全部(発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分)を贈与により取得し、その会社を経営していく場合には、その贈与に係る贈与税の全額の納税が猶予されます。贈与者が亡くなったときは、後継者がその株式等を相続により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合算して相続税額を計算します。
大綱は「経営承継相続人」を、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の規定に基づき経済産業大臣の認定を受ける一定の非上場会社の代表者であった者の後継者と説明しています。
土地を取得したとき、譲渡したときの特例
平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した国内の土地等について、その年1月1日において所有期間が5年を超えるものを譲渡した場合、その年の長期譲渡所得の金額から1,000万円を控除する特別控除が創設されます。この特別控除は法人も同様とされます。
先行して土地を買う場合の措置も設けられます。事業者が同じ期間内に国内にある土地等を取得し、取得の日を含む事業年度の確定申告書の提出期限までに届出書を提出している場合、その事業年度終了の日後10年以内に他の土地等を譲渡したときは、その譲渡益の100分の80相当額を限度に圧縮記帳ができます。平成22年中に取得した土地等については、100分の60相当額が限度です。
登録免許税も据え置かれます。土地の売買による所有権の移転登記等について、平成21年4月1日以後に引き上げることとしていた税率が2年間据え置かれ、平成23年3月31日までは1,000分の10のままです。その後は平成23年4月1日から1,000分の13、平成24年4月1日から1,000分の15とされています。
外国子会社からの配当を益金に算入しない
国際課税では、仕組みが入れ替わります。内国法人が外国子会社から受ける配当等の額について、その事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととする制度が導入されます。これに伴い、間接外国税額控除制度は、所要の経過措置等を講じた上で廃止されます。
ここでいう外国子会社とは、内国法人が外国法人の発行済株式等の25%以上の株式等を、配当等の支払義務が確定する日以前6月以上引き続き直接に有している場合の、その外国法人をいいます。
益金に算入しない際には、配当等の額の5%に相当する金額をその配当等の額から控除します。また、その配当等の額に課される外国源泉税等の額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入せず、外国税額控除の対象にもしません。この改正は、内国法人の平成21年4月1日以後に開始する事業年度に受ける配当等の額から適用されます。
ご自身に関係があるかを見分けるには
- 平成21年以後に住宅の新築や取得を予定している方は、住宅・土地税制の章をご覧ください。認定長期優良住宅かどうかで、年末残高の限度額と控除率が変わります。
- 住まいの省エネ工事、バリアフリー工事、耐震改修を考えている方も、同じ章の税額控除をご覧ください。工事の内容と工事費用の額に要件が付いています。
- 資本金1億円以下の会社を経営している方は、中小企業関係税制の章をご覧ください。軽減税率の引下げと繰戻し還付は、適用の始まる時期が別々です。
- 非上場会社の株式を後継者に引き継ぐことを考えている方は、相続税制の章をご覧ください。相続と贈与のどちらで渡すかによって、猶予される税額の考え方が違います。
- 上場株式等をお持ちの方は、金融・証券税制の章をご覧ください。平成21年1月1日から平成23年12月31日までの間の配当所得および譲渡所得等に対する税率は、7%(住民税とあわせて10%)の軽減税率とされています。
- 車の買い替えを検討している方は、自動車課税の章をご覧ください。平成21年4月1日から平成24年4月30日までの間に受ける新規・継続検査等の際の自動車重量税は、電気自動車などが免除、環境性能に応じて75%または50%の軽減とされています。
- 海外に子会社を持つ会社を経営している方は、国際課税の章をご覧ください。平成21年4月1日以後に開始する事業年度から、配当と外国税額控除の扱いが変わります。
出所
- 財務省「平成21年度税制改正の大綱」(平成20年12月19日)
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
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