Cryptoasset taxation

Cryptocurrency Taxes: What to Look At ── The Fork in the Road Between Individuals and Corporations

どこから始めるか

「この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利を表示するものを除く。」

資金決済に関する法律2条14項です。暗号資産の税金で最初に開く条文は、これです。所得税法も法人税法も消費税法も、暗号資産の定義を自前では書かず、この条文を名指しで引いているからです。定義そのものの読み方は、税法は「暗号資産」をどう定義しているのかで扱っています。

入口は一つですが、そこから先の道は二つに分かれます。個人の方は所得税法へ、法人は法人税法へ進みます。同じ銘柄を同じ日に同じ値段で売っても、読む条文は別、計算の仕方も別です。この記事はその地図で、個々の条文の中身は、それぞれの記事に譲ります。

骨格

Issue 条文の定め
定義の出発点 資金決済に関する法律2条14項です。所得税法48条の2も法人税法61条1項も消費税法施行令9条4項も、この条文を参照しています。
個人の所得区分 所得税法35条1項が雑所得を定めています。48条の2は「事業所得の金額又は雑所得の金額」と書いています。
個人の細目 所得税法48条の2と同法施行令119条の2から119条の7までが、年末の価額、評価の方法と届出、取得価額、信用取引を定めています。
法人の譲渡損益 法人税法61条1項が、譲渡利益額と譲渡損失額を、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の益金・損金に算入すると定めています。
法人の期末評価 法人税法61条2項が期末時の評価額の算定方法を、3項が評価益と評価損の益金・損金算入を定めています。
法人の細目 法人税法施行令118条の5から118条の12までが、取得価額、帳簿価額の算出方法と届出、市場暗号資産の範囲などを定めています。
消費税 消費税法別表第二第2号と同法施行令9条4項により非課税です。個人と法人で共通です。

個人と法人で、読む条文はどこで分かれるのか

個人の側の柱は、所得税法35条1項です。

「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」

雑所得を、他の9種類のどれにも当たらない所得として定義する条文です。暗号資産という言葉は出てきません。それでも入口がここになるのは、暗号資産の売買による利益が他の9種類のいずれにも当てはまりにくいためです。あわせて所得税法48条の2が「事業所得の金額又は雑所得の金額」と書いており、条文の側もこの二つを想定していることが読み取れます。詳しくはWhich category of income do individual cryptoasset earnings fall under?をご覧ください。

法人の側の柱は、法人税法61条1項です。

「内国法人が短期売買商品等(短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産として政令で定めるもの(有価証券を除く。)及び資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第十四項(定義)に規定する暗号資産(以下この条において「暗号資産」という。)をいう。以下この条において同じ。)の譲渡をした場合には、」

注意していただきたいのは、かっこの中の「及び」です。短期売買商品等は、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産と、暗号資産との、二つを並べたものとして定義されています。暗号資産は、取得の目的を問わずこの「及び」の後ろに置かれています。長期保有のつもりで取得したものであっても、法人税法61条の射程に入るということです。

細目の置き場所も分かれています。個人は所得税法施行令119条の2から119条の7まで、法人は法人税法施行令118条の5から118条の12までです。番号も条の数も並び方も一致しません。個人の記事を読んで法人の答えを出すことはできませんし、その逆もできません。

持っているだけで課税されるのか

分かれ道のうち金額として最も大きく効くのが、売っていないのに課税されるかどうか、という違いです。

法人には、その定めがあります。法人税法61条2項が期末時の評価額の求め方を定め、続く3項が、そこで生じた差額の行き先を定めています。3項の末尾です。

「……その期末時の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。」

期末に時価が上がっていれば評価益が益金に、下がっていれば評価損が損金に入ります。売っていなくても、決済していなくてもです。この評価損益は翌事業年度に反対の処理をして戻します(法人税法施行令118条の10第1項)。いわゆる洗い替えです。

ただし、法人が持つ暗号資産のすべてが時価評価されるわけではありません。61条2項1号は、時価法の対象を「市場暗号資産」に限っています。その中身は法人税法施行令118条の7第1項が3つの要件で定めており、「活発な市場が存在する暗号資産」とは何かで扱っています。市場暗号資産に当たっても、特定自己発行暗号資産と特定譲渡制限付暗号資産は同号から除かれます。前者は自分で発行したトークンに、含み益課税はかかるのか、後者は他社が発行したトークンでも、譲渡制限があれば時価評価を外せるをご覧ください。全体の流れは法人は、持っているだけで課税されるのかにまとめています。

では個人はどうか。年末の価額を扱っている条文は、所得税法48条の2です。

「……その算定の基礎となるその年十二月三十一日において有する暗号資産の価額は、その者が暗号資産について選定した評価の方法により評価した金額(評価の方法を選定しなかつた場合又は選定した評価の方法により評価しなかつた場合には、評価の方法のうち政令で定める方法により評価した金額)とする。」

この条文が定めているのは、必要経費に算入する金額を算定する場合の、その算定の基礎となる価額です。評価益や評価損をその年の総収入金額や必要経費に算入する、という文言は、この条文にはありません。個人の側には、法人税法61条3項に当たる定めが置かれていません。

7つの論点は、どこで分かれるのか

主な論点を一覧にします。

Issue 個人 法人
所得区分・損益の計上 所得税法35条1項の雑所得が原則で、48条の2は事業所得の金額または雑所得の金額を想定しています。 法人税法61条1項により、譲渡利益額または譲渡損失額を、譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の益金・損金に算入します。所得を区分する定めは、この条文にはありません。
期末(年末)の評価 所得税法48条の2により、必要経費に算入する金額の算定の基礎となる12月31日の価額を評価します。評価益・評価損を所得に算入する定めは置かれていません。 法人税法61条2項・3項により、市場暗号資産は時価法で評価し、評価益・評価損を益金・損金に算入します。翌事業年度に洗い替えます。
評価方法とその届出 総平均法と移動平均法から選び(所得税法施行令119条の2第1項)、種類ごとに確定申告期限までに届け出ます(同令119条の3)。届出がなければ総平均法です(同令119条の5第1項)。 移動平均法と総平均法から選び(法人税法施行令118条の6第1項)、申告書の提出期限までに届け出ます(同条5項)。届出がなければ移動平均法です(同条8項)。
取得価額 所得税法施行令119条の6が、購入したもの、自己が発行したもの、それ以外のもの、贈与・相続・遺贈により取得したものに分けて定めています。 法人税法施行令118条の5が、購入したもの、自己が発行したもの、それ以外のものに分けて定めています。
信用取引 所得税法施行令119条の7が、売付けと買付けにより決済した場合に必要経費に算入する金額を定めています。期末の未決済分をみなし決済とする定めは置かれていません。 法人税法61条7項により、事業年度終了の時に決済されていないものは、その時に決済したものとみなして損益を計上し、翌事業年度に洗い替えます。
損失の扱い 所得税法69条1項が挙げる損益通算の対象は、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の損失です。雑所得はこの列挙に含まれていません。 法人税法61条1項の譲渡損失額も、3項の評価損も、損金の額に算入され、その事業年度の所得の金額の計算に取り込まれます。
消費税 消費税法別表第二第2号と同法施行令9条4項により非課税です。 個人と同じ条文によります。

評価の方法と届出は、どう違うのか

表の3行目には落とし穴があります。選べる方法が総平均法と移動平均法の二つで、どちらも届出が要る点は同じです。違うのは、届け出なかったときにどちらになるかです。個人は所得税法施行令119条の5第1項が定めています。

「法第四十八条の二第一項(暗号資産の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)に規定する政令で定める方法は、第百十九条の二第一項第一号(暗号資産の評価の方法)に掲げる総平均法により算出した取得価額による評価の方法とする。」

法人は、法人税法施行令118条の6第8項です。

「法第六十一条第一項第二号に規定する政令で定める方法は、第一項第一号に掲げる移動平均法とする。」

届け出なかった場合、個人は総平均法、法人は移動平均法です。逆になっています。届出の期限も、個人は確定申告期限まで、法人は申告書の提出期限までと、条文の書き方が違います。個人の側の手続は総平均法と移動平均法──個人の暗号資産の評価方法とその届出で、取得価額の決まり方は個人が持つ暗号資産の取得価額は、どう決まるのかで扱っています。

売ったときと、損が出たときはどうなるのか

法人が売ったときの損益は、法人税法61条1項により、引渡しの日ではなく、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度に計上します。詳しくは法人が暗号資産を売ったとき、損益はいつ計上するのかで扱っています。

損が出たときの扱いも、個人と法人で違います。個人の側は、所得税法69条1項です。

「総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。」

他の所得から控除できる損失として挙げられているのは、この4つです。雑所得の金額の計算上生じた損失は、列挙に含まれていません。純損失の繰越控除を定める所得税法70条も、その対象を純損失の金額としています。

法人の側は、61条1項の譲渡損失額も3項の評価損も、損金の額に算入されて、その事業年度の所得の金額の計算に取り込まれます。なお、法人の欠損金の繰越しについては、本記事が根拠とした条文に含まれていないため立ち入りません。信用取引の扱いは暗号資産の信用取引で、個人と法人を並べて整理しています。

なお、ここに書いたのは現在の条文の定めです。個人の課税の仕方については見直しが取り上げられていますので、令和8年度税制改正大綱のポイントとあわせてご覧ください。ここまでの制度がどの順番でできてきたのかは、暗号資産税制はこうしてできたにまとめています。

消費税は、個人と法人で違うのか

違いません。ここだけは道が合流します。消費税法別表第二第2号が非課税となる譲渡として支払手段等を挙げ、その「その他これに類するものとして政令で定めるもの」の中身を、消費税法施行令9条4項が書いています。

「法別表第二第二号に規定する支払手段に類するものとして政令で定めるものは、電子決済手段、資金決済に関する法律第二条第十四項に規定する暗号資産及び国際通貨基金協定第十五条に規定する特別引出権とする。」

ここで引かれているのも資金決済に関する法律2条14項です。売り手が個人でも法人でも、暗号資産の譲渡そのものに消費税はかかりません。詳しくは暗号資産を売っても消費税はかからないをご覧ください。

実務で迷いが生じるところ

  • 個人で扱っていた暗号資産を、法人を設立して移した場面です。適用される条文がまるごと入れ替わりますので、期末評価も届出も、あらためて確認することになります。
  • 法人が長期保有のつもりで取得した暗号資産をお持ちの場面です。法人税法61条1項は暗号資産を「及び」で並べており、短期売買の目的の有無で射程が変わる書き方をしていません。
  • 個人と法人の両方で暗号資産をお持ちの場面です。同じ銘柄でも届出は別々に必要で、届け出なかったときの方法も逆になります。
  • 法人の期末が近づいている場面です。売っていなくても、市場暗号資産に当たれば期末の時価で評価益・評価損が立ちます。
  • 個人の方が、年末に含み損を抱えている場面です。含み損を年内の所得から差し引く定めは所得税法48条の2にはなく、雑所得の損失は所得税法69条1項の列挙にも含まれていません。
  • お持ちのトークンに譲渡制限が付いている場面です。法人であれば法人税法61条2項1号の除外に関わりますが、個人の側の条文にはこれに対応する区分が置かれていません。
  • そもそも暗号資産に当たるかどうかが定まらない場面です。この地図はすべて資金決済に関する法律2条14項に当てはまることが前提ですので、まずそこから確認することになります。

根拠条文

  • 資金決済に関する法律 第2条第14項(定義)/引用した文言:「この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利を表示するものを除く。」
  • 所得税法 第35条第1項(雑所得)/引用した文言:「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」
  • 所得税法 第48条の2第1項(暗号資産の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)/引用した文言:「その算定の基礎となるその年十二月三十一日において有する暗号資産の価額は、その者が暗号資産について選定した評価の方法により評価した金額(評価の方法を選定しなかつた場合又は選定した評価の方法により評価しなかつた場合には、評価の方法のうち政令で定める方法により評価した金額)とする。」
  • 所得税法 第69条第1項(損益通算)/引用した文言:「総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。」
  • 所得税法 第70条(純損失の繰越控除)/繰越控除の対象を純損失の金額としている条文です。本記事では、その要件には立ち入っていません。
  • 所得税法 第37条第1項(必要経費)/所得税法48条の2が必要経費に算入する金額の算定について参照している条文です。
  • 所得税法施行令 第119条の2第1項(暗号資産の評価の方法)/選定できる評価の方法として総平均法と移動平均法を掲げています。
  • 所得税法施行令 第119条の3(暗号資産の評価の方法の選定)/引用した文言:「暗号資産の評価の方法は、その種類ごとに選定しなければならない。」
  • 所得税法施行令 第119条の4(暗号資産の評価の方法の変更手続)/評価の方法の変更に税務署長の承認を要すると定めています。
  • 所得税法施行令 第119条の5第1項(暗号資産の法定評価方法)/引用した文言:「法第四十八条の二第一項(暗号資産の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)に規定する政令で定める方法は、第百十九条の二第一項第一号(暗号資産の評価の方法)に掲げる総平均法により算出した取得価額による評価の方法とする。」
  • 所得税法施行令 第119条の6(暗号資産の取得価額)/購入した暗号資産、自己が発行することにより取得した暗号資産、それ以外の暗号資産、贈与・相続・遺贈により取得した暗号資産に分けて取得価額を定めています。
  • 所得税法施行令 第119条の7(信用取引による暗号資産の取得価額)/暗号資産信用取引の決済を行った場合に必要経費に算入する金額を定めています。
  • 法人税法 第61条第1項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)/引用した文言:「内国法人が短期売買商品等(短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産として政令で定めるもの(有価証券を除く。)及び資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第十四項(定義)に規定する暗号資産(以下この条において「暗号資産」という。)をいう。以下この条において同じ。)の譲渡をした場合には、」
  • 法人税法 第61条第2項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)/期末時における評価額の算定方法を、短期売買商品等の区分に応じて定めています。暗号資産については市場暗号資産に限って時価法とし、特定譲渡制限付暗号資産と特定自己発行暗号資産を除いています。
  • 法人税法 第61条第3項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)/引用した文言:「その期末時の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。」
  • 法人税法 第61条第7項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)/引用した文言:「その時において当該暗号資産信用取引を決済したものとみなして」
  • 法人税法施行令 第118条の5(短期売買商品等の取得価額)/購入した短期売買商品等、自己が発行することにより取得した短期売買商品等、それ以外のものに分けて取得価額を定めています。
  • 法人税法施行令 第118条の6第8項(短期売買商品等の一単位当たりの帳簿価額の算出の方法及びその選定の手続等)/引用した文言:「法第六十一条第一項第二号に規定する政令で定める方法は、第一項第一号に掲げる移動平均法とする。」
  • 法人税法施行令 第118条の7第1項(市場暗号資産等の範囲)/活発な市場が存在する暗号資産として政令で定めるものの要件を定めています。
  • 法人税法施行令 第118条の8(短期売買商品等の時価評価金額)/時価法による評価額の計算方法を定めています。
  • 法人税法施行令 第118条の10第1項(短期売買商品等の評価益又は評価損の翌事業年度における処理等)/引用した文言:「当該事業年度の翌事業年度の所得の金額の計算上、損金の額又は益金の額に算入する。」
  • 法人税法施行令 第118条の12第1項(未決済暗号資産信用取引に係る利益相当額又は損失相当額の翌事業年度における処理等)/未決済の暗号資産信用取引について益金または損金に算入した金額を、翌事業年度に洗い替えることを定めています。
  • 消費税法 別表第二 第2号/引用した文言:「その他これに類するものとして政令で定めるもの」
  • 消費税法施行令 第9条第4項/引用した文言:「法別表第二第二号に規定する支払手段に類するものとして政令で定めるものは、電子決済手段、資金決済に関する法律第二条第十四項に規定する暗号資産及び国際通貨基金協定第十五条に規定する特別引出権とする。」

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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