Tax Reform Outline Review

平成25年度税制改正大綱 ── 相続税の基礎控除引下げと所得税の最高税率45%

対象時点について:本稿は2013年1月公表時の平成25年度税制改正大綱の紹介です。大綱の記載と、その後の成立・施行を区別してお読みください。

何が、いつ、誰の手で決まったのか

平成25年度税制改正の大綱は、平成25年1月29日に閣議決定されました。文書の冒頭に「平成25年1月29日」「閣議決定」と記されています。年度の税制改正の大綱は12月中に決定されるのが通例ですが、平成25年度分は年が明けた1月29日の決定です。日付の点で例外にあたります。前後の年度は平成24年度and平成26年度、近年の大綱の読み方は令和8年度税制改正大綱のポイントでご覧いただけます。

書き出しには、その年に何を目指すのかが置かれ、そのまま本文の構成に対応しています。

現下の経済情勢等を踏まえ、「成長と富の創出の好循環」の実現に向け、民間投資の喚起、雇用・所得の拡大、中小企業対策・農林水産業対策等のための税制上の措置を講ずる。また、社会保障・税一体改革を着実に実施するため、所得税、相続税及び贈与税についての所要の措置、住宅取得に係る税制上の措置等を講ずる。さらに、震災からの復興を支援するための税制上の措置等を講ずる。

大綱の柱

本文は7章です。

その章で決まったこと
個人所得課税 所得税の最高税率の見直し、金融・証券税制、住宅税制が並びます。
資産課税 相続税・贈与税の見直し、事業承継税制、教育資金の一括贈与の非課税措置が置かれています。
法人課税 民間投資の喚起と雇用・所得の拡大、中小企業対策・農林水産業対策が前に立ちます。
consumption tax 酒税や自動車重量税の特例措置の見直しと、非課税範囲の整備です。
国際課税 振替公社債等の利子等の非課税制度、移転価格税制などの見直しが置かれています。
納税環境整備 延滞税等の割合の見直しが柱で、納付が遅れたときの負担の計算方法が変わります。
関税 輸入貨物の課税標準に関する措置などです。

所得税の最高税率に45%の区分が加わる

個人所得課税の先頭は、最高税率の見直しです。

現行の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超について45%の税率を設ける。

既にある刻みはそのままに、いちばん上に区分をひとつ足す形です。適用時期は「上記の改正は、平成27年分以後の所得税について適用する。」とされています。

この最高税率の引上げが関係するのは、総合課税の課税所得が4,000万円を超える場合です。たとえば、多額の賞与や事業所得でこの水準に達する年が考えられます。土地・建物や株式等の通常の売却益は、原則として給与等と分けて申告分離課税で計算するため、ここでいう45%の適用例にはなりません。

相続税は基礎控除が下がり、最高税率が55%になる

資産課税の先頭は、相続税・贈与税の見直しです。この大綱で最も多くの方に関係する項目だと考えます。まず基礎控除が下がります。

基礎控除 現行 改正案
定額控除 50 million yen 30 million yen
法定相続人比例控除 1,000万円に法定相続人数を乗じた金額 600万円に法定相続人数を乗じた金額

税率構造も変わります。現行は3億円超の金額に50%をかけるのが最高でしたが、改正案では2億円以下の金額に40%、3億円以下に45%、6億円以下に50%、6億円超に55%となり、上の階段が2段増えます。

小規模宅地等の特例は広がる

負担が増える方向ばかりではありません。大綱は「特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積を330㎡(現行240㎡)までの部分に拡充する。」としています。あわせて、一棟の二世帯住宅で構造上区分のあるものと、老人ホームに入所したことにより居住の用に供されなくなった家屋の敷地の取扱いも定められました。

贈与税と相続時精算課税も動く

贈与税の税率構造は、20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産と、それ以外の財産とで別の刻みに分かれます。いずれも最高税率は55%です。相続時精算課税制度は「受贈者の範囲に、20歳以上である孫(現行 推定相続人のみ)を加える。」「贈与者の年齢要件を60歳以上(現行 65歳以上)に引き下げる。」とされました。適用は、原則として平成27年1月1日以後に取得する財産にかかる税です。

教育資金の一括贈与に、1,500万円の非課税枠ができる

祖父母や親が孫や子の教育資金をまとめて出す場合の贈与税を、一定の枠まで課さない措置が新設されました。

信託受益権の価額又は拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1,500万円(学校等以外の者に支払われる金銭については、500万円を限度とする。)までの金額に相当する部分の価額については、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に拠出されるものに限り、贈与税を課さないこととする。

受贈者は30歳未満の者に限られ、資金は信託会社、銀行等または金融商品取引業者に信託等をします。手元で渡すのではなく、金融機関を通す仕組みです。受贈者は教育資金非課税申告書(仮称)を金融機関を経由して税務署長に提出し、払い出した金銭を教育資金に充てたことを証する書類を出します。

終わり方も決められています。受贈者が30歳に達した場合、拠出された金額から教育資金として払い出した金額を差し引いた残額には、その日に贈与があったものとして贈与税が課されます。使い切れなければ課税される、ということです。受贈者が死亡した場合の残額には課されません。

個人の金融所得は、非課税口座と公社債の2方向で動く

金融・証券税制には、大きな見直しが2つ並びます。ひとつは非課税口座です。大綱は「非課税口座を開設することができる期間を、平成26年1月1日から平成35年12月31日まで(現行:平成26年1月1日から平成28年12月31日まで)とする。」としています。各年分の非課税管理勘定に受け入れられる上場株式等は取得対価の額の合計額が100万円を超えないものとされ、非課税の期間は勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までです。

もうひとつは、公社債等に対する課税の組み替えです。大綱は「特定公社債等の利子等については、20%源泉分離課税の対象から除外した上、次の措置を講ずる。」とし、平成28年1月1日以後に支払を受けるべきものを20%(所得税15%、住民税5%)の税率による申告分離課税の対象としました。譲渡所得等も非課税の対象から除外され、同じく申告分離課税です。上場株式等の譲渡損失及び配当所得の損益通算の特例の対象にも加えられ、損失は翌年以後3年間の繰越控除ができます。国債や社債をお持ちの方は、利子も、売却も、損が出たときの扱いも、まとめて変わります。

設備投資と給与の引上げに、税額控除がつく

法人課税の最初の柱は、民間投資の喚起と雇用・所得の拡大です。新しい制度が3つ立ちました。

1つめは国内設備投資を促進するための措置です。青色申告書を提出する法人が平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度に取得等をした国内の生産等設備について、その取得価額の合計額が一定の金額を超える場合に、機械装置を国内の事業の用に供したときは「その取得価額の30%の特別償却とその取得価額の3%の税額控除との選択適用ができることとする。」とされています。控除税額の限度は当期の法人税額の20%です。本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設等は生産等設備に該当しません。

2つめは給与を増やした場合の措置です。国内雇用者への給与等の支給額の増加額が基準となる年度の支給額に対して5%以上であるときに、「その雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができることとする。」とされました。控除税額の限度は当期の法人税額の10%、中小企業者等は20%です。

3つめは、商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等が、指導及び助言を受けて行う店舗の改修等に伴い器具備品及び建物附属設備を取得等した場合の、30%の特別償却と7%の税額控除の選択適用です。

中小企業対策では、交際費の扱いが変わります。大綱は「定額控除限度額を800万円(現行600万円)に引き上げるとともに、定額控除限度額までの金額の損金不算入措置(現行10%)を廃止する。」としています。枠が広がるだけでなく、枠の中の1割を損金にできなかった部分もなくなります。

住宅ローン控除は4年延長され、限度額が上がる

住宅税制では、いわゆる住宅ローン控除が「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について適用期限(平成25年12月31日)を平成29年12月31日まで4年延長する」とされ、あわせて限度額が引き上げられます。

居住年(一般の住宅) 借入限度額 控除率 各年の控除限度額 10年間の最大控除額
平成26年1月~3月 2,000万円 1.0% 20万円 2 million yen
平成26年4月~平成29年12月 4,000万円 1.0% 400,000 yen 400万円

認定長期優良住宅と認定低炭素住宅をいう認定住宅は、平成26年4月以後が借入限度額5,000万円で最大控除額500万円です。

読み落としやすい条件が付いています。平成26年4月以後の欄の金額は、住宅の対価の額または費用の額に含まれる消費税等の税率が8%または10%である場合の金額であり、それ以外の場合の借入限度額は一般の住宅で2,000万円、認定住宅で3,000万円です。買う時期だけでなく、その取引にかかる消費税等の税率によって上限が変わります。

ご自身に関係があるかを見分けるには

  • 総合課税の課税所得が4,000万円を超える年がある方は、「所得税の最高税率の見直し」をご覧ください。平成27年分以後の所得税が対象です
  • 以前に相続税の試算をされたことがある方、自宅の敷地を相続する見込みのある方は、「相続税・贈与税の見直し」と小規模宅地等についての特例をご覧ください
  • お子さんやお孫さんの学費を援助しようとお考えの方は、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」をご覧ください
  • 国債や社債をお持ちの方、証券口座で投資をされている方は、「金融・証券税制」をご覧ください
  • 設備投資や給与の引上げを検討している会社、交際費の支出が多い中小法人は、「民間投資の喚起と雇用・所得の拡大」と「中小企業対策・農林水産業対策」が該当します
  • 平成26年以降に住宅の取得を予定している方は、「住宅税制」をご覧ください。消費税等の税率によって限度額が変わります
  • 国税を延納している方、納税の猶予を受けている方は、「延滞税等の見直し」が関係します

出所

  • 「平成25年度税制改正の大綱」(平成25年1月29日 閣議決定)

訂正にあたり確認した資料

本稿は平成25年度税制改正大綱を扱う過年度記事です。2026年9月7日、所得税の最高税率に関する例示と税目表示を訂正しました。現在の取引への適用は現行の法令等をご確認ください。

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