Tax Reform Outline Review

平成27年度税制改正大綱で決まったこと、法人税率23.9%への引下げ

何が、いつ、誰の手で決まったのか

平成27年度税制改正の大綱は、平成27年1月14日に閣議決定された政府の大綱です。原文の表題の下には「平成27年1月14日 閣議決定」とだけ記されています。年末ではなく年明けの日付で決定された大綱です。狙いは冒頭の前文にまとめられています。

現下の経済情勢等を踏まえ、デフレ脱却・経済再生をより確実なものにしていくため、成長志向に重点を置いた法人税改革、高齢者層から若年層への資産の早期移転を通じた住宅市場の活性化等のための税制上の措置を講ずる。地方創生に取り組むため、企業の地方拠点強化、結婚・子育ての支援等のための税制上の措置を講ずる。さらに、経済再生と財政健全化を両立するため、消費税率の 10%への引上げ時期の変更等のための税制上の措置を講ずる。

近年の大綱の読み方は令和8年度税制改正大綱のポイントもあわせてご覧ください。

大綱の柱

本文は7つの章に分かれます。

その章で決まったこと
個人所得課税 未成年者口座の非課税措置と、国外転出をする場合の課税が創設されます。
資産課税 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置が創設されます。
法人課税 法人税率が引き下げられ、欠損金の繰越控除等が見直されます。
consumption tax 10%への引上げ時期が変わり、国境を越えた役務の提供が課税対象になります。
国際課税 外国子会社配当益金不算入制度が見直されます。
納税環境整備 財産債務明細書が財産債務調書として整備されます。
関税 暫定税率の適用期限が延長されます。

内国税関係の増減収見込額は、合計で平年度1,080億円の減収です。法人税率の引下げが平年度6,690億円の減収でいちばん大きく、欠損金の繰越控除制度の見直しが平年度3,970億円の増収とされています。前年の平成26年度税制改正の大綱、翌年の平成28年度税制改正の大綱と並べて読むと、この年の力点が見えます。

法人税率を下げ、課税の裾野を広げる

法人課税の先頭が「成長志向に重点を置いた法人税改革」です。税率を下げる一方で控除の範囲を絞り、外形標準課税を広げる組み合わせになっています。

税率は23.9%、欠損金の控除限度額は段階的に下がる

法人税の税率が23.9%(現行25.5%)に引き下げられ、平成27年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。中小法人の軽減税率の特例、すなわち所得のうち年800万円以下の部分に対する税率を19%から15%とする措置は、適用期限が2年延長されます。

欠損金の繰越控除は、控除限度額が段階的に下がります。平成27年4月1日から平成29年3月31日までの間に開始する事業年度は繰越控除前の所得の100分の65(現行100分の80)、平成29年4月1日以後に開始する事業年度は100分の50です。ただし中小法人等については、現行の控除限度額が残されます。一方で繰越期間は10年(現行9年)に延び、帳簿書類の保存期間や更正の請求期間も10年になります。

受取配当等の益金不算入は持株割合で四つに分かれる

受取配当等の益金不算入制度は、区分が組み替えられます。

Distinction 不算入割合
完全子法人株式等(保有割合100%) 100分の100です。
関連法人株式等(保有割合3分の1超) 100分の100です。
その他の株式等 100分の50です。
非支配目的株式等(保有割合5%以下) 100分の20です。

現行は保有割合25%以上が100分の100の対象でしたので、線が3分の1超へ引き直されます。その他の株式等と非支配目的株式等は負債利子控除の対象からも外れます。

外形標準課税が広がる

地方税では、資本金の額が1億円超の普通法人について法人事業税の標準税率が組み替えられます。付加価値割は0.48%から平成27年度0.72%、平成28年度以降0.96%へ、資本割は0.2%から0.3%、0.4%へと上がります。逆に所得割は下がり、年800万円超の所得に対する税率は7.2%から6.0%、4.8%となります。

消費税率10%への引上げを平成29年4月1日にする

消費課税の章の先頭は、引上げ時期の変更です。

消費税率(国・地方)の 10%への引上げの施行日を平成 29 年4月1日とする。

これに伴い、請負工事等に係る適用税率の経過措置の指定日は平成28年10月1日とされます。工事の請負契約は契約の時期で適用税率が変わりますので、この指定日が実務上の分かれ目です。

国境を越えた役務の提供に消費税をかける

電子書籍・音楽・広告の配信等の、電気通信回線を介して行われる役務の提供が「電気通信役務の提供」と位置付けられます。国内取引かどうかの判定基準は、役務の提供に係る事務所等の所在地から、役務の提供を受ける者の住所地等に見直されます。国外から日本の利用者に配信されるサービスが、日本の消費税の対象に入ります。

納税義務者は相手方によって分かれます。役務の性質や契約条件等から相手方が事業者であることが明らかなものは「事業者向け電気通信役務の提供」とされ、納税義務が役務の提供を受ける事業者に転換されます。これがリバースチャージ方式です。これに当たらない「消費者向け電気通信役務の提供」では、国外事業者のほうが納税義務者になります。

経過措置も置かれます。国外事業者から受けた消費者向けの役務は、当分の間、仕入税額控除が認められません。ただし国税庁長官の登録を受けた登録国外事業者から受けたものは、登録番号等が記載された請求書等の保存等を要件として控除が認められます。適用は平成27年10月1日以後の取引からです。

1億円以上の有価証券を持って国外に出るときに課税する

個人所得課税では「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例」が創設されます。国内に住所及び居所を有しないこととなる居住者が有価証券等や未決済のデリバティブ取引等を有している場合に、その国外転出の時に譲渡や決済をしたものとみなして所得を計算する仕組みです。

対象は、二つの要件をどちらも満たす居住者です。一つは、みなし譲渡等の対象となる金額の合計額が1億円以上であること。もう一つは、国外転出の日前10年以内に、国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年超であることです。金額は、確定申告書の提出時までに納税管理人の届出をした場合は国外転出の時の価額、そうでない場合は予定日の3月前の日の価額で判定されます。

戻った場合の救済もあります。国外転出の日から5年を経過する日までに帰国し、その時に有していた有価証券等を引き続き有していたときは、課税を取り消すことができます。取消しには、帰国の日から4月を経過する日までに更正の請求が必要です。

結婚・子育て資金と住宅資金の贈与を後押しする

直系尊属からの贈与に関する非課税措置が二つ動きます。一つ目は創設で、「結婚・子育て資金」の一括贈与に係る贈与税の非課税措置です。20歳以上50歳未満の受贈者のために直系尊属が金銭等を拠出して金融機関に信託等をした場合、受贈者1人につき1,000万円までの部分に贈与税を課さないこととされます。ただし結婚に際して支出する費用は300万円が限度です。対象は平成27年4月1日から平成31年3月31日までの間の拠出に限られます。

終わり方にも定めがあります。受贈者が50歳に達した場合などに管理契約は終了し、拠出額から実際に支出した額を差し引いた残額があるときは、その日に贈与があったものとして贈与税が課されます。期間中に贈与者が死亡した場合は、その日の残額が相続又は遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税価格に加算されます。

二つ目は拡充で、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置です。適用期限が平成31年6月30日まで延長され、非課税限度額が契約の締結期間ごとに定められます。取得等の対価に含まれる消費税等の税率が10%である場合は、平成28年10月から平成29年9月までの契約で「良質な住宅用家屋」3,000万円、それ以外2,500万円が上限とされ、その後は段階的に下がります。

口座と寄附と書類の見直し

未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置が創設されます。口座は1人につき1口座で、非課税管理勘定は毎年80万円を上限に上場株式等を受け入れることができます。ただし払出しには制限があり、その年3月31日において18歳である年の前年12月31日までは、課税未成年者口座以外の口座に払い出すことはできません。あわせて、NISAの各年分の限度額が120万円(現行100万円)に引き上げられます。

ふるさと納税では、特例控除額の控除限度額が個人住民税所得割額の2割(現行1割)に引き上げられます。確定申告を行わない給与所得者等のために「ふるさと納税ワンストップ特例制度」も創設されますが、確定申告を行った場合や5団体を超える団体に寄附を行った場合には適用されません。

納税環境整備では、財産債務明細書が財産債務調書として整備されます。提出基準は、現行の所得金額が2千万円超であることに加え、その年の12月31日に有する財産の価額の合計額が3億円以上であること、または国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の対象資産の価額の合計額が1億円以上であることとされます。適用は平成28年1月1日以後に提出すべきものからです。

ご自身に関係があるかを見分けるには

  • 赤字を繰り越している会社を経営している方は、法人課税の章をご覧ください。控除限度額が下がる一方、繰越期間は10年に延びます。
  • 資本金が1億円を超える会社を経営している方は、法人課税の地方税の部分をご覧ください。付加価値割と資本割が二段階で上がります。
  • 海外への移住を考えていて有価証券をお持ちの方は、個人所得課税の章をご覧ください。合計1億円以上かが分かれ目です。
  • 国外の事業者から配信サービスを受けている事業者の方は、消費課税の章をご覧ください。事業者向けかどうかで納税義務者が変わります。
  • お子さんやお孫さんの結婚・出産・子育ての費用を援助しようとお考えの方は、資産課税の章をご覧ください。結婚に際して支出する費用には別の限度があります。
  • 所得が2千万円を超える方や多額の財産をお持ちの方は、納税環境整備の章をご覧ください。提出すべき書類の範囲が広がります。

出所

  • 「平成27年度税制改正の大綱」(平成27年1月14日 閣議決定)

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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