資産と負債を整理し、一株の価値へ
純資産価額方式は、会社の資産と負債を相続税評価の考え方で確認し、株式の価額を求める方法です。決算書の純資産を株数で割るだけではありません。土地や有価証券などの評価替えにより、帳簿の数字から大きく変わることがあります。2026年は、評価差額に対する法人税額等相当額の割合にも改正があります。
2026年4月1日以後の取得には38%を使います
国税庁の2026年3月25日付の改正により、評価差額に対する法人税額等相当額の算定割合は37%から38%へ変わりました。適用対象は2026年4月1日以後に相続、遺贈または贈与により取得した取引相場のない株式等です。会社の決算月だけで新旧の割合を決めるものではありません。
この38%は、会社の全資産や全純資産から一律に引く率ではありません。相続税評価額による純資産と、所定の帳簿価額による純資産との差額がプラスになる場合に、その差額を基に計算する率です。実際にその会社が払う法人税の税率を直接当てはめるわけでもありません。
各資産を評価 → 控除できる負債を確認 → 評価差額を求める → 法人税額等相当額を計算 → 控除後の金額を対象株式数で割る
評価差額が2,000万円ある場合の例
2026年7月の贈与を想定し、相続税評価後の総資産が1億円、負債が3,000万円、所定の帳簿価額による純資産が5,000万円、自己株式を除く発行済株式数が1,000株とします。取得者グループの議決権は50%を超え、その他の特殊な調整はない例です。
相続税評価による純資産は1億円−3,000万円=7,000万円です。帳簿純資産との差額は2,000万円で、その38%は760万円となります。したがって控除後は6,240万円、1株当たりでは6万2,400円です。古い37%を使うと6万2,600円となり、1株200円の違いが出ます。
土地の評価替えには例外もあります
会社が昔から所有する土地に含み益がある場合、帳簿価額と評価額の差が株価に影響します。ただし、課税時期前3年以内に取得・新築した土地等や家屋等については、純資産価額方式の計算上、通常の取引価額による取扱いがあります。購入直後の不動産を当然に路線価等へ置き換えられるとは限りません。
不動産を持つ会社では、所在や面積だけでなく、取得日、取得価額、利用状況、建物の新築日を一覧化します。同じ土地評価の資料でも、個人が直接相続する土地と、会社の株式評価に組み込む土地とでは、確認すべきルールが異なります。
負債も決算書の全額を無条件に引くわけではありません
会計上の引当金などは、そのまま評価上の負債になるとは限りません。課税時期に実際に存在する債務か、通達上どのように扱うかを項目ごとに確認します。逆に、決算日後に発生した確定債務を見落とさないことも大切です。
役員から会社への借入金がある場合、会社側の負債だけでなく、役員個人が有する貸付金という別の財産にも目を向けます。会社の負債が増えて株価が下がっても、個人の貸付金が同額残っていれば、相続財産全体が同じように減るとは限りません。
子会社株式と持株割合にも注意します
会社が別の非上場会社の株式を持つと、評価が一段深くなります。その株式の純資産価額を計算する場面では、法人税額等相当額を重ねて控除しない取扱いがあるため、単純に評価書の最終金額を転記できない場合があります。会社間の出資関係を先に整理すると作業範囲が見えます。
また、取得者と同族関係者の議決権合計が50%以下である場合の80%評価は、適用される計算や会社の区分を確認する必要があります。「非上場株はいつも20%引き」という制度ではありません。本稿の数値例では、この調整を適用しない前提としています。
純資産価額方式の検算では、総額、1株当たり、取得株数を掛けた価額を行き来して確かめます。改正年は計算ソフトだけでなく、前年の表計算や手作業の様式に旧率が残っていないかも確認してください。取得日、資産の取得履歴、負債の根拠がそろって初めて、株価の説明に耐える評価になります。
基準日の残高をそろえることが大切です
贈与日が決算日から離れている場合、決算書の残高と課税時期の残高に差が生じます。預金や借入金だけを新しくし、資産の売却や配当を反映していない表では、数字の時点が混在します。課税時期の試算表や重要な取引の一覧を用意し、どの情報を反映したかを確認します。評価のために調整した金額は会社の会計帳簿をそのまま変更するという意味ではないため、帳簿と評価計算を別々に管理しておくと照合しやすくなります。
参考資料
主な参考資料
法令・制度の基準日:2026年08月08日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。
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