相続税の基礎知識

自社株の評価はいつ必要?相続・贈与・売買で違う確認事項

会社を売る予定がなくても、自社株の評価が必要になることがあります。後継者への贈与、経営者の相続、親族間の株式売買など、株式の持ち主が変わる場面です。設立時の払込額や資本金を株数で割った金額が、そのまま現在の株価になるわけではありません。評価を始める際は、まず「何のために、いつの株式を、誰について評価するのか」を決めます。

目的が違えば、同じ株式でも検討は変わります

相続税・贈与税では、国税庁の財産評価基本通達に沿って、取得する株主の立場、会社の規模、保有する資産などを調べます。一方、売買では売主と買主が個人か法人か、関係者同士か第三者同士かも重要です。相続税の評価明細書があるからといって、その数字をどの取引にも使えるわけではありません。

場面最初に決めること主な確認資料
相続相続開始日と取得者遺言・分割資料・株主名簿
生前贈与贈与日・株数・受贈者契約案・直近決算・持株構成
親族等への売買売主と買主、価格の根拠取引条件・当事者別の税務検討
承継の事前検討試算日と想定する承継方法複数年の決算・承継後の議決権

利益の積み重ねで、株価が想定以上になることも

例えば、設立時に1株1万円で発行した会社があるとします。長年利益を蓄積し、今回の贈与税評価で1株8万円になった場合、100株の贈与価額は800万円です。設立時の金額で考えた100万円とは700万円の差があります。これは説明用の仮定ですが、払込額と評価額を混同したまま贈与を実行する怖さが分かります。

利益が増えた会社だけが対象ではありません。帳簿上は古い取得価格のままの土地や、他社株式、保険契約などが評価に影響する場合があります。反対に、業績が悪くても直ちに株価がゼロになるとは限りません。損益計算書と貸借対照表を併せて見る必要があります。

決算日と贈与日を一緒にしない

評価には直前期末の数字を使う項目がありますが、評価の基準日は原則として財産を取得した日です。「前年の決算で計算したから、翌年も同じ株価」とは限りません。配当、増資、自己株式の取得、大きな資産売却などがあれば、その後の変化を確認します。

承継の検討段階では概算も有用です。ただし概算額を確定額のように扱わず、どの決算を使い、何を未確認とした試算なのかを残します。贈与契約や売買契約を実行する前に、対象日と対象者に合わせて評価を確定する流れが安全です。

税額と支払資金は別々に考える

株式の評価額が高くても、株主個人に現金があるとは限りません。会社の預金は会社の財産であり、株主の納税資金としてそのまま使えるものではないためです。株式を後継者に集中させる案では、他の家族に渡す財産や納税資金も並べて検討します。

例えば後継者が株式を承継し、別の相続人が現預金を取得する設計では、後継者に税負担だけが残ることがあります。評価額の計算と遺産全体の資金計画を別々の担当に任せる場合でも、前提となる株価と承継割合を共有しておくことが大切です。

相談前にそろえると役立つもの

直近数期の決算書・法人税申告書、株主名簿、定款、役員の一覧、所有不動産や有価証券の資料が出発点になります。株主名簿が古い場合は、贈与や相続の履歴も確認します。名前だけが残っている株主がいるなど、所有関係の疑問は株価計算より先に整理すべき事項です。

依頼時には、「来年までに後継者へ何割を渡したい」「相続税の概算を知りたい」など、判断したい内容を具体的に伝えると作業範囲が明確になります。最初から細かい数字をすべてそろえようとするより、目的と資料の不足を一覧にする方が進めやすい場合もあります。

自社株評価は、税額を出すためだけの作業ではありません。株式を誰に集め、どの時期に移し、資金をどう用意するかを考える土台です。本稿は一般的な相続・贈与の検討手順を示すもので、具体的な売買価格や個別の申告価額を保証するものではありません。

評価の依頼内容を一文にします

例えば「2026年8月に父から長男へ普通株式100株を贈与する場合の、贈与税申告に使う評価」と書けば、目的・日付・取得者・株数が明確になります。相続発生前の概算なら、「現在の財産と株主構成が変わらない場合の試算」として、実際の相続時には更新が必要なことを区別します。評価書を家族や金融機関へ見せる場合も、この依頼内容を添えておくと、別の目的へ転用する誤解を減らせます。検討案が複数あるときは、案ごとに誰が何株取得するかを並べて依頼しましょう。

参考資料

主な参考資料

法令・制度の基準日:2026年08月04日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。

ご家族と財産の状況に応じた検討を

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本稿は2026年10月10日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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