株価を決める前に、株主の立場を整理
同じ会社の同じ種類の株式でも、相続税・贈与税の評価方法が取得者によって異なる場合があります。会社の業績だけで決まるのではなく、株式を取得する人が経営にどの程度の影響力を持つ立場かを確認するためです。「自分は数株しか持っていない」という理由だけで、低い評価方式を使えるとは限りません。
最初に見るのは取得後の株主構成です
取引相場のない株式は、大きく原則的評価方式と配当還元方式に分かれます。入口は、取得者とその同族関係者の議決権、中心的な株主の有無、本人の役員としての立場などです。会社の株価を一つだけ算出してから全株主に当てはめると、この分岐を見落とします。
同族株主の判定では、株主とその同族関係者が持つ議決権を合計します。原則として30%以上が一つの基準ですが、50%を超えるグループがある場合の取扱いなど、複数の条件があります。数字だけを切り取らず、財産評価基本通達188のどの区分に当たるかを順に判定します。
取得する株式を特定 → 取得後の議決権を整理 → 親族・支配する法人等の関係を確認 → 中心的な株主と役員要件を確認 → 評価方式を決定
少数の株式でも、家族の支配力が影響します
例えば、父が70%、母が20%、子が10%の議決権を持つ会社を考えます。子だけを見れば10%ですが、親族関係を含めたグループでは会社を支配しています。「10%だから少数株主」として直ちに配当還元方式へ進むことはできません。
これに対し、同じ会社の株式を創業家と関係のない人が少数保有している場合は、異なる判定になる可能性があります。ただし、その人が別の株主と同族関係にあるか、法人を通じて支配関係がつながっているかなどを確認して初めて結論を出せます。名簿上の肩書だけでは足りません。
5%未満なら必ず配当還元、ではありません
「議決権が5%未満なら配当還元」といった説明を見かけますが、5%という数字は複数ある判定条件の一つです。中心的な同族株主の有無、取得者自身が中心的な同族株主か、役員であるかなど、他の条件と組み合わせて判断します。単独の割合で結論を出さないことが重要です。
特に後継者への贈与では、贈与前には少数だった人が贈与によって持株割合を高めます。先に贈与する株数を決め、その結果としてどの区分になるかを確認する必要があります。前年の評価明細書をコピーすると、株主構成の変化が計算に反映されないことがあります。
法人株主がいるときは、その先の関係も調べます
株主名簿に資産管理会社が載っている場合、その会社を誰が支配しているかが問題になります。直接持っている株式と法人を通じて関係する議決権は、単純に同じ扱いにするものではありませんが、法人が同族関係者に該当するかを調べる必要があります。
そのため、対象会社の株主名簿だけでなく、法人株主側の株主構成が必要になることがあります。家族関係図と会社間の出資関係図を分けて作ると、誰についてどの関係を確認しているかが見えやすくなります。法人税申告書の別表二も手掛かりになりますが、それだけで課税時期の状態を確定しないようにします。
株数と議決権は必ずしも一致しません
普通株式だけで自己株式もない会社なら比較的単純ですが、議決権のない株式、種類株式、自己株式などがあると、発行済株式数をそのまま分母にできないことがあります。株券の枚数だけを数えるのではなく、定款や株主総会資料と照合します。
例えば会社が自己株式を取得すると、他の株主が持つ株数が変わらなくても議決権割合が変動する場合があります。贈与や相続の直前に自己株式取得が行われていれば、その前後の名簿を比較すると見落としを減らせます。取得日を軸に資料を並べることが有効です。
税負担だけを理由に株式を細かく分散すると、議決権の管理や将来の買取りが難しくなることがあります。評価方式の判定と経営権の設計は一緒に考えたい事項です。専門家に相談するときは、本人の持株比率だけでなく、家族・法人を含む株主全体の情報を伝えてください。
株主一覧には判定日を記載します
実務で役立つのは、氏名、保有株数、議決権数、取得者との関係、役員の有無を並べた一覧です。そこに作成時点を記載し、贈与後の案を別の列で示します。古い株主名簿と最新の役員登記を混ぜた資料では、同じ日付の状態を表していない可能性があります。相続によって株式が複数人に移る場合も、誰がどの株式を取得する案なのかを明確にして判定します。家族の呼称だけでは関係が伝わりにくいため、取得者から見た続柄を具体的に書くと確認が進みます。
参考資料
主な参考資料
法令・制度の基準日:2026年08月05日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。
ご家族と財産の状況に応じた検討を
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