類似業種比準方式は、事業内容が似た上場会社のデータを基に、自社の配当、利益、帳簿上の純資産を比較して株価を求める方法です。「同業の上場会社と同じ株価を使う」という意味ではありません。比較の単位をそろえ、自社と類似業種の比率を計算し、会社規模に応じた係数などを反映します。
三つの要素を同じ単位で比較します
比較するのは1株当たりの配当金額、利益金額、純資産価額です。ただし、実際に発行されている株式の単位のまま比較すると会社ごとに条件が違うため、資本金等の額を基に50円単位へ換算します。計算後には実際の1株に戻す調整が必要です。
| 比較要素 | 見る内容 | Points to note |
|---|---|---|
| dividend | 所定の期間の配当実績 | 通常の配当以外の取扱いも確認 |
| 利益 | 通達に従って調整した利益 | 損益計算書の当期利益をそのまま使わない |
| net assets | 所定の帳簿価額による純資産 | 土地等を評価し直す純資産価額方式とは別 |
三つの比率を平均し、類似業種の株価と会社規模に応じた係数を掛けるのが基本構造です。利益だけが高い会社、配当をしていない会社、資産が厚い会社では、それぞれ違う数字の組合せになります。会計利益が下がったという一事だけで株価が何割下がるとはいえません。
単純化した例で計算の流れを確認します
説明のため、50円換算後の配当・利益・純資産の比率がすべて1.0、採用する類似業種株価が500円、中会社の係数が0.6、実際の1株当たり資本金等の額が5,000円とします。比率の平均は1.0ですから、500円×1.0×0.6×(5,000円÷50円)=3万円となります。
これは類似業種比準価額そのものの例です。中会社の最終的な評価では、別に計算した純資産価額との併用を検討します。例えば純資産価額が7万円、併用割合Lが0.75なら、3万円×0.75+7万円×0.25=4万円です。比準価額を計算しただけで作業が終わるとは限りません。
業種の選び方が結果を左右します
類似業種は社名や定款の目的だけで決めません。実際の事業別取引金額を基に、どの業種に該当するかを判定します。製造と卸売を兼ねる会社、複数のサービスを提供する会社では、売上の内訳が必要になります。判断の根拠が分かる集計表を用意します。
該当する小分類とその属する中分類など、通達で認められた選択肢がある場合は比較します。ただし、株価が低いという理由だけで関係のない業種を選ぶことはできません。比較可能な候補と、採用できない候補を分けて検討することが大切です。
公表データと自社の対象期間をそろえます
国税庁が公表する類似業種の株価や比準要素は、対象年分を確認して使用します。株価にも課税時期の属する月等を踏まえた選択ルールがあるため、手元にある最新の表を無条件に使うのではありません。前年の贈与に今年のデータを当てはめることもできません。
贈与の計画段階で必要な月のデータがまだ公表されていない場合、概算と確定計算を区別します。「現時点で公表済みの資料による見込み」と明示し、必要なデータがそろってから確定させる運用にすれば、見込み額の独り歩きを防げます。
株価を下げるための支出は、会社の現金も減らします
利益が評価に関係すると聞くと、支出を増やせばよいと考えがちです。しかし、事業上不要な支出は会社の資金を失わせます。税務上の損金になるかどうかも別の問題です。将来の投資や運転資金を犠牲にしてまで評価額を下げることが、後継者の利益になるとは限りません。
例えば設備の購入が必要でも、その代金全額が直ちに利益計算へ反映されるとは限りません。資産計上や減価償却の取扱いにより、現金の減少と評価要素の変化は一致しません。株価だけでなく、会社の資金繰りと翌期以降の業績も並べて試算することが必要です。
評価明細書を受け取ったら、業種、使用年分、三要素の計算根拠、50円換算と実株への換算を確認しましょう。数字の大小より、何が株価を動かしているかを理解すると、承継時期を検討するための資料として活用しやすくなります。
利益の調整表を確認しましょう
税務申告上の所得と、評価に用いる利益金額は、どの項目を調整したかが分かる形にしておきます。多額の固定資産売却や保険金の受取りがあった年などは、通常の収益と同じように扱ってよいかを確認する場面があります。担当者が変わっても追えるよう、決算書のどの欄から始め、どの根拠で調整したかを記録します。前年の株価と比べるときも、最終額の増減だけでなく、この利益調整と業種データの変化を分けると、説明が具体的になります。
参考資料
主な参考資料
法令・制度の基準日:2026年08月07日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。
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