相続税の基礎知識

相続税の対象になる財産と、差し引ける債務・葬式費用

相続税の計算は、通帳の残高と不動産の価格を足して終わりではありません。家族名義の財産、死亡保険金、生前贈与が関係することがあり、反対に一定の債務や葬式費用は差し引けます。最初から税額を出そうとするより、「足すもの」「除くもの」「差し引くもの」を分けて財産表を作ると、申告が必要かどうかを検討しやすくなります。

お金に換算できる権利も確認します

相続税の対象は、現金、預貯金、土地、建物、株式などの目に見えやすい財産に限りません。貸付金、未収金、事業用の財産など、経済的価値を持つ権利も確認します。郵便物や確定申告書には、家族が知らなかった証券口座や賃貸不動産の手掛かりが残っていることがあります。

確認する基準日は原則として亡くなった日です。その後の残高だけを見ると、葬儀費用の引出しや年金・家賃の入金が混ざります。死亡日の残高と、その前後の入出金を区別してください。また、名義が家族でも、資金の出所や管理などから被相続人の財産と認められる場合は対象になります。名義だけで財産表から除かないことが大切です。

財産表は四つの欄に分けると整理しやすくなります
Distinction代表例確認する資料
本来の相続財産預金、土地、株式、貸付金残高証明、登記、契約書
税務上加わる財産等一定の保険金・退職金、生前贈与支払通知、贈与の記録
非課税財産通常の日常礼拝用の墓・仏壇など用途や取得状況が分かる資料
控除を検討する支出借入金、未払金、一定の葬式費用残高証明、請求書、領収書

死亡によって受け取るお金にも区別があります

亡くなった人が保険料を負担していた一定の死亡保険金や、死亡に伴う一定の退職手当金は、相続税法上、相続などで取得したものとみなされます。遺産分割の対象かどうかという民事上の話と、相続税の対象かどうかは同じではありません。

これらには相続人が受け取る場合の非課税枠がありますが、受取人や保険料負担者、支給の確定時期によって扱いが変わります。「死亡時に入金されたから全額相続税」「保険だからすべて非課税」と一括りにせず、保険証券と支払通知を揃えて確認します。

債務は、死亡時に存在し、確実なものが基本です

被相続人の借入金や未払金などで、死亡時に存在し、確実と認められるものは、一定の要件の下で控除できます。金融機関の借入残高だけでなく、入院費の未払いや被相続人に係る未納税金なども確認します。納付や請求が死亡後になったからといって、すべて対象外になるわけではありません。

一方、相続人が自分のために借りたお金や、非課税となるお墓の未払代金などは、同じ扱いにはなりません。控除できるかは、誰の債務か、何のための支出か、誰が負担するかによって判断します。金額の記載だけでなく、請求の内容と支払の経緯を残しておくと確認が進みます。

葬式費用は、葬儀に関する支出なら全部ではありません

国税庁の取扱いでは、葬儀や通夜、火葬・埋葬、遺体の搬送、読経料など、通常葬式に伴う一定の費用を控除対象として説明しています。これに対し、お墓の購入費、香典返し、法要の費用などは通常の葬式費用の控除に含まれません。葬儀社の一枚の請求書に複数の内容が載る場合は、内訳を見ます。

たとえば葬儀社への支払に、通夜の費用と返礼品が一緒に含まれている場合、合計額をそのまま記入するのではなく、支出の性質を確認します。領収書のないお布施などは、支払先、日付、金額、目的を控えておくと説明資料になります。ただし、メモがあるだけでどの支出も控除できるわけではありません。

金額が小さい財産も、一度一覧に載せます

小口の口座や少額の未収金を家族の判断だけで除くと、後から全体像を確認する手間が増えます。まず分かっているものを一覧にし、評価や非課税の判断を後から付けていく方法が実務的です。逆に、家族の財産まで一律に被相続人のものとする必要はなく、その人自身の収入や取得の経緯も整理します。

相続税の財産表には、生前贈与の加算や相続時精算課税の財産も関係します。手元に残っている遺産だけで基礎控除以下と判断しないようにしてください。海外居住や外国籍が関係する場合には、課税財産や債務控除の範囲が異なることがあるため、住所歴などを含めた別途の確認も必要です。

財産と支出を先に分類できれば、基礎控除との比較、特例の検討、納税資金の確認へ進めます。曖昧な項目は消してしまわず「内容確認中」と残しておくことが、申告漏れと控除漏れの両方を防ぐ助けになります。

主な参考資料

法令・制度の基準日:2026年07月26日。個別の事実関係によって結論が変わるため、具体的な取扱いは資料を確認してご検討ください。

ご家族と財産の状況に応じた検討を

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本稿は2026年10月10日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

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