条文の定義
「この法律において「特定目的会社」とは、次編第二章第二節の規定に基づき設立された社団をいう。」
特定目的会社(SPC)とは、資産の流動化に関する法律の規定に基づいて設立された社団をいいます。同法は、この特定目的会社が資産対応証券の発行や特定借入れにより得た金銭で資産を取得し、その管理及び処分により得られる金銭をもって、特定社債・特定約束手形・特定借入れ・受益証券に係る債務の履行や、優先出資に係る利益の配当及び消却のための取得又は残余財産の分配を行う一連の行為を「資産の流動化」と呼んでいます。
骨格
| 論点 | 条文の定め |
|---|---|
| 特定目的会社の定義 | 資産の流動化に関する法律の規定に基づき設立された社団(同法2条) |
| 資産の流動化の定義 | 資産対応証券の発行等により得た金銭で資産を取得し、その管理及び処分による金銭で債務の履行等を行う一連の行為(同法2条) |
| 資産流動化計画の定義 | 特定目的会社による資産の流動化に関する基本的な事項を定めた計画(同法2条) |
| 資産流動化計画の記載事項 | 計画期間、資産対応証券等に関する事項、特定資産の内容や管理及び処分の方法等(同法5条) |
| 利益の配当の損金算入 | 一定の要件を満たす特定目的会社の利益の配当を損金の額に算入できます(租税特別措置法67条の14) |
| 利益の配当に係る源泉徴収等の特例 | 特定目的会社が納付した外国法人税の額を所得税の額から控除し、配当等の金額を調整します(租税特別措置法9条の6) |
| 配当を受け取る法人側の取扱い | 受取配当等の益金不算入の規定を適用しません(租税特別措置法67条の14) |
特定目的会社と資産流動化計画とは何を指すのか
「この法律において「資産流動化計画」とは、特定目的会社による資産の流動化に関する基本的な事項を定めた計画をいう。」
記載事項について、条文は次のように定めています。
「資産流動化計画には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。」
記載事項は次のとおりです。
- 計画期間に関する事項
- 優先出資、特定社債、特定借入れなど資産対応証券及び特定借入れに関する事項
- 特定資産の内容、取得の時期及び譲渡人に関する事項
- 特定資産の管理及び処分の方法に関する事項
- 資金の借入れ(特定借入れを除く。)に関する事項
- その他内閣府令で定める事項
利益の配当を損金に算入できる特例はどのような要件で使えるのか
租税特別措置法67条の14は、一定の要件を満たす特定目的会社が支払う利益の配当の額について、次のとおり定めています。
「……当該適用事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。ただし、その利益の配当の額が当該適用事業年度の所得の金額として政令で定める金額を超える場合には、その損金の額に算入する金額は、当該政令で定める金額を限度とする。」
この損金算入は、特定目的会社そのものが満たすべき要件と、適用を受けようとする事業年度が満たすべき要件の両方を前提としています。
特定目的会社としての要件
名簿への登載に関し、条文は「……特定目的会社名簿に登載されているものであること。」と定めています。また「次のいずれかに該当するものであること。」という要件もありますが、具体的な内容は本稿の参照条文にはありません。発行した優先出資や特定出資の募集が主として国内で行われるものとして政令で定めるものに該当することも要件とされ、このほか政令で定める要件もあります。
事業年度の要件
業務面では、「……資産の流動化に係る業務及びその附帯業務を資産流動化計画に従つて行つていること。」、「……他の業務を営んでいる事実がないこと。」との要件があり、計画外の業務を行っていないことが求められます。また、特定資産を信託財産として信託し、又はその管理及び処分を他の者に委託していることも要件です。当該事業年度終了時に法人税法上の同族会社のうち政令で定めるものに該当しないこと(一定の場合を除く。)、「……無限責任社員となつていないこと。」も求められます。当該事業年度の利益の配当の支払額が、配当可能利益の額として政令で定める金額(特定社債発行時は一定額を控除)の一定割合を超えていることも要件とされます(割合は根拠条文を参照)。ほか政令で定める要件もあります。
この特例は、確定申告書等に損金算入の申告記載と計算明細書の添付があり、かつ発行の態様や国内募集の要件を満たすことを明らかにする書類の保存がある場合に限り適用されます。
配当に外国法人税が絡むとき、源泉徴収はどう調整されるのか
源泉徴収義務そのものは所得税法に定められており、租税特別措置法9条の6(特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例)はその特例であり、次のように定めています。
「特定目的会社……が納付した外国法人税の額……は、政令で定めるところにより、当該特定目的会社の利益の配当……に係る所得税の額を限度として当該所得税の額から控除する。」
この適用を受ける特定目的会社が居住者、非居住者、内国法人又は外国法人に配当を支払う場合の配当等の金額や国内源泉所得の金額は、所得税法の規定にかかわらず、同条により控除する外国法人税の額を加算した金額とする旨が定められています。
さらに、居住者・恒久的施設を有する非居住者の場合は「(当該非居住者にあつては、……国内源泉所得に該当するものの支払を受ける場合に限る。)」、内国法人・恒久的施設を有する外国法人の場合は「(当該外国法人にあつては、……国内源泉所得に該当するものの支払を受ける場合に限る。)」という限定のもとで、それぞれ読み替え規定が置かれています。非居住者・外国法人への支払の源泉徴収は非居住者・外国法人への支払と源泉徴収(20.42%)とはで扱います。
実務で迷いが生じるところ
- 配当可能利益の額に対する支払割合や同族会社非該当の判定基準は、政令(施行令)の定めを確認する必要があります。
- 資産流動化計画に従って行っている業務の範囲は、当該特定目的会社の資産流動化計画の記載内容に照らして確認する必要があります。
- 非居住者・外国法人への配当支払に係る源泉徴収額や租税条約の適用関係は、租税特別措置法9条の6の規定と所得税法上の各定義を併せて確認する必要があります。
根拠条文
- 資産の流動化に関する法律第二条第三項(定義)/引用した文言:「この法律において「特定目的会社」とは、次編第二章第二節の規定に基づき設立された社団をいう。」
- 資産の流動化に関する法律第二条第二項(定義)/引用した文言:「この法律において「資産の流動化」とは、一連の行為として、特定目的会社が資産対応証券の発行若しくは特定借入れにより得られる金銭をもって資産を取得し、又は信託会社……若しくは信託業務を営む銀行……その他の金融機関が資産の信託を受けて受益証券を発行し、これらの資産の管理及び処分により得られる金銭をもって、次の各号に掲げる資産対応証券、特定借入れ及び受益証券に係る債務又は出資について当該各号に定める行為を行うことをいう。」
- 資産の流動化に関する法律第二条第四項(定義)/引用した文言:「この法律において「資産流動化計画」とは、特定目的会社による資産の流動化に関する基本的な事項を定めた計画をいう。」
- 資産の流動化に関する法律第五条第一項柱書(資産流動化計画)/引用した文言:「資産流動化計画には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。」
- 資産の流動化に関する法律第五条第一項第一号(資産流動化計画)/引用した文言:「資産流動化計画の計画期間及び計画期間に関する事項として内閣府令で定める事項」
- 資産の流動化に関する法律第五条第一項第二号柱書(資産流動化計画)/引用した文言:「資産対応証券及び特定借入れに関する次に掲げる事項」
- 資産の流動化に関する法律第五条第一項第三号(資産流動化計画)/引用した文言:「特定資産の内容、取得の時期及び譲渡人その他の特定資産に関する事項として内閣府令で定める事項」
- 資産の流動化に関する法律第五条第一項第四号(資産流動化計画)/引用した文言:「特定資産の管理及び処分の方法、管理及び処分に係る業務を行わせるために設定する信託の受託者その他の特定資産の管理及び処分に関する事項として内閣府令で定める事項」
- 資産の流動化に関する法律第五条第一項第五号(資産流動化計画)/引用した文言:「資金の借入れ(特定借入れを除く。)に関する事項として内閣府令で定める事項」
- 資産の流動化に関する法律第五条第一項第六号(資産流動化計画)/引用した文言:「その他内閣府令で定める事項」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項柱書(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「資産の流動化に関する法律(以下この項において「資産流動化法」という。)第二条第三項に規定する特定目的会社(以下この条において「特定目的会社」という。)のうち第一号に掲げる要件を満たすものが支払う利益の配当(資産流動化法第百十五条第一項に規定する金銭の分配を含む。以下この項において同じ。)の額(当該特定目的会社の法人税法第二十四条第一項第四号から第六号までに掲げる事由によりその出資者に対して交付する金銭の額が当該特定目的会社の同法第二条第十六号に規定する資本金等の額のうちその交付の基因となつた当該特定目的会社の出資に対応する部分の金額として政令で定める金額を超える場合におけるその超える部分の金額を含む。以下この項及び第四項において同じ。)で第二号に掲げる要件を満たす事業年度(以下この項において「適用事業年度」という。)に係るものは、当該適用事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。ただし、その利益の配当の額が当該適用事業年度の所得の金額として政令で定める金額を超える場合には、その損金の額に算入する金額は、当該政令で定める金額を限度とする。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第一号イ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「資産流動化法第八条第一項の特定目的会社名簿に登載されているものであること。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第一号ロ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「次のいずれかに該当するものであること。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第一号ハ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「その発行をした優先出資及び基準特定出資(特定社員(資産流動化法第二条第五項に規定する特定社員をいう。)の権利(資産流動化法第二十七条第二項各号に掲げる権利をいう。)に係る事項として財務省令で定めるものの記載がない資産流動化計画(資産流動化法第二条第四項に規定する資産流動化計画をいう。次号イにおいて同じ。)に係る特定出資(資産流動化法第二条第六項に規定する特定出資をいう。)をいう。以下この号において同じ。)に係るそれぞれの募集(基準特定出資にあつては、資産流動化法第十七条第一項第一号又は第三十六条第一項の規定による割当て又は募集)が主として国内において行われるものとして政令で定めるものに該当するものであること。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第一号ニ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「その他政令で定める要件」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第二号イ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「資産流動化法第百九十五条第一項に規定する資産の流動化に係る業務及びその附帯業務を資産流動化計画に従つて行つていること。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第二号ロ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「資産流動化法第百九十五条第一項に規定する他の業務を営んでいる事実がないこと。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第二号ハ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「資産流動化法第二百条第一項に規定する特定資産を信託財産として信託していること又は当該特定資産(同条第二項各号に掲げる資産に限る。)の管理及び処分に係る業務を他の者に委託していること。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第二号ニ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「当該事業年度終了の時において法人税法第二条第十号に規定する同族会社のうち政令で定めるものに該当するもの(前号ロ(1)又は(2)に該当するものを除く。)でないこと。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第二号ホ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「当該事業年度に係る利益の配当の支払額が当該事業年度の配当可能利益の額として政令で定める金額(当該特定目的会社が特定社債を発行している場合には、当該金額から政令で定める金額を控除した金額)の百分の九十に相当する金額を超えていること。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第二号ヘ(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「資産流動化法第百九十五条第二項に規定する無限責任社員となつていないこと。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第一項第二号ト(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「その他政令で定める要件」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第四項(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「法人が特定目的会社から支払を受ける利益の配当の額については、法人税法第二十三条第一項の規定は、適用しない。」
- 租税特別措置法第六十七条の十四第六項(特定目的会社に係る課税の特例)/引用した文言:「第一項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする事業年度の確定申告書等に、同項の規定により損金の額に算入される金額の損金算入に関する申告の記載及びその損金の額に算入される金額の計算に関する明細書の添付があり、かつ、同項第一号ロ及びハに掲げる要件を満たしていることを明らかにする書類を保存している場合に限り、適用する。」
- 租税特別措置法第九条の六第一項(特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例)/引用した文言:「特定目的会社(資産の流動化に関する法律第二条第三項に規定する特定目的会社をいう。以下この条において同じ。)が納付した外国法人税の額(法人税法第六十九条第一項に規定する控除対象外国法人税の額をいう。以下第九条の六の四までにおいて同じ。)は、政令で定めるところにより、当該特定目的会社の利益の配当(所得税法第二十四条第一項に規定する利益の配当をいう。以下この条において同じ。)に係る所得税の額を限度として当該所得税の額から控除する。」
- 租税特別措置法第九条の六第二項(特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例)/引用した文言:「前項の規定の適用を受ける特定目的会社が居住者、非居住者、内国法人又は外国法人に対し利益の配当の支払をする場合における所得税法第百八十二条第二号に規定する配当等の金額、同法第二百十三条第一項第一号に規定する国内源泉所得の金額又は同条第二項第二号に規定する配当等の金額は、これらの規定にかかわらず、これらの金額に前項の規定により控除する金額を加算した金額とする。」
- 租税特別措置法第九条の六第三項(特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例)/引用した文言:「居住者又は恒久的施設を有する非居住者が特定目的会社の利益の配当の支払を受ける場合(当該非居住者にあつては、所得税法第百六十四条第一項第一号イに掲げる国内源泉所得に該当するものの支払を受ける場合に限る。)において、当該利益の配当に係る特定目的会社分配時調整外国税相当額(当該特定目的会社が納付した外国法人税の額で第一項の規定により当該利益の配当に係る所得税の額から控除された金額のうち当該居住者又は恒久的施設を有する非居住者が支払を受ける利益の配当に対応する部分の金額として政令で定める金額に相当する金額をいう。)があるときは、当該居住者又は恒久的施設を有する非居住者に対する同法の規定の適用については、同法第九十三条第一項及び第百六十五条の五の三第一項中「の収益の分配」とあるのは「の収益の分配又は租税特別措置法第九条の六第一項(特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例)に規定する特定目的会社の同項に規定する利益の配当」と、「同項」とあるのは「第百七十六条第三項」と、「金額(」とあるのは「金額及び同法第九条の六第三項に規定する特定目的会社分配時調整外国税相当額(」とする。」
- 租税特別措置法第九条の六第四項(特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例)/引用した文言:「内国法人又は恒久的施設を有する外国法人が特定目的会社の利益の配当の支払を受ける場合(当該外国法人にあつては、法人税法第百四十一条第一号イに掲げる国内源泉所得に該当するものの支払を受ける場合に限る。)において、当該利益の配当に係る特定目的会社分配時調整外国税相当額(当該特定目的会社が納付した外国法人税の額で第一項の規定により当該利益の配当に係る所得税の額から控除された金額のうち当該内国法人又は恒久的施設を有する外国法人が支払を受ける利益の配当に対応する部分の金額として政令で定める金額に相当する金額をいう。)があるときは、当該内国法人又は恒久的施設を有する外国法人に対する同法及び地方法人税法の規定の適用については、法人税法第六十九条の二第一項及び第百四十四条の二の二第一項中「の収益の分配」とあるのは「の収益の分配又は特定目的会社の租税特別措置法第九条の六第一項(特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例)に規定する利益の配当」と、「同項又は同法」とあるのは「所得税法第百七十六条第三項又は」と、「金額(」とあるのは「金額及び租税特別措置法第九条の六第四項に規定する特定目的会社分配時調整外国税相当額(」とする。」
本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

