海外移住のとき、所得税とは別に確認が要るのが住民税です。所得税とは判定の仕組みがまったく違います。
所得税は住所・居所の実態でその都度判定され、年の途中で居住者から非居住者に切り替わります。住民税は1月1日という一点で決まります。
賦課期日は1月1日
地方税法第39条(道府県民税)と第318条(市町村民税)。
個人の道府県民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
個人の市町村民税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。
誰が納税義務者か
地方税法第24条第1項第1号(道府県民税)、第294条第1項第1号(市町村民税)。
一 道府県内に住所を有する個人
一 市町村内に住所を有する個人
この「住所を有する個人」について、第24条第2項・第294条第2項が、住民基本台帳法の適用を受ける者については住民基本台帳に記録されている者をいうと定めています。
1号だけではありません。同項第2号は「道府県内(市町村内)に事務所、事業所又は家屋敷を有する個人で、そこに住所を有しない者」を挙げており、この者には均等割が課されます。日本に家を残して出国する場合、住所がなくても均等割の対象になり得ます。
課税されるのは「前年の所得」
所得割については、地方税法第32条第1項・第313条第1項。
所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。
ただし退職手当等に係る所得割は例外です。地方税法第50条の2・第328条(いずれも見出しは「退職所得の課税の特例」)が、他の所得と区分し、その支払を受けるべき日の属する年の1月1日現在の住所所在の道府県・市町村において課すると定めています。退職金は、翌年ではなく支払時の課税です。
この2つを重ねると、住民税の構造が見えます。
| 内容 | |
|---|---|
| いつの状況で判定するか | その年の1月1日 |
| 所得割は何に対して課税するか | 前年の所得(退職手当等は例外) |
| 均等割はどうか | 住所のほか、事務所・事業所・家屋敷があれば課され得る |
つまり、1月1日に日本に住所がある人は、前年の所得に対する所得割を、その年に納めることになります。所得を稼いだ年と、納める年がずれます。
見落とすと事故になる点 ── 住民票を抜いても終わりではない
地方税法第294条第3項。
市町村は、当該市町村の住民基本台帳に記録されていない個人が当該市町村内に住所を有する者である場合には、その者を当該住民基本台帳に記録されている者とみなして、その者に市町村民税を課することができる。
住民票の異動だけで決まるわけではありません。実際に住所があると見られれば、記録がなくても課税し得るという規定です。所得税の住所判定と同じく、事実関係で見られます。
このみなしは市町村民税だけの話ではありません。第24条第2項の括弧書きが「第二百九十四条第三項の規定により当該住民基本台帳に記録されているものとみなされる者を含み、同条第四項に規定する者を除く」としており、道府県民税にも及びます。なお第294条第4項は、3項により課税された者について、住民基本台帳のある市町村の側は課税できないとしています。
もう1つ。市町村内に住所等を有しない場合の納税管理人の規定が、地方税法第300条(市町村民税の納税管理人)に置かれています。国税の納税管理人(国税通則法117条)とは別の手続です。同条第2項に、徴収の確保に支障がないことについて市町村長の認定を受けたときの定めがあります。
実務で迷いが生じるところ
- 年末に出国するのと年始に出国するのとで、何が変わるのか。賦課期日が1月1日であることの意味を確認する必要があります
- 住民票を抜けば住民税は課されないのか。294条3項があります
- 出国した年の前年分の住民税はどうなるのか。課税標準が前年所得であることから考えることになります
- 出国後の納付はどうするのか。地方税法300条の納税管理人と、給与からの特別徴収の扱いが問題になります
- 国民健康保険料や介護保険料はどうなるのか。住民税とは別の制度ですが、住所を基準にする点は共通します
- ふるさと納税の扱いはどうなるのか。適用の前提が住民税の課税であることから考えます
「所得税では非居住者になったから、住民税もかからない」ではありません。判定の仕組みが別だからです。
移住の時期を決める前に、所得税・住民税・社会保険の3つを並べてご相談ください。
根拠条文
- 地方税法第24条(道府県民税の納税義務者等)・第294条(市町村民税の納税義務者等)
- 地方税法第39条(個人の道府県民税の賦課期日)・第318条(個人の市町村民税の賦課期日)
- 地方税法第32条・第313条(所得割の課税標準)
- 地方税法第50条の2・第328条(退職所得の課税の特例)
- 地方税法第300条(市町村民税の納税管理人)
- 国税通則法第117条(納税管理人)
- 所得税法第2条第1項第3号・第5号(居住者・非居住者)
条例による定めや個別の判定には確認が必要です。
本稿は2026年8月31日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。
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