Basics of International Taxation

電気通信利用役務の提供とは

海外のクラウドサービス、広告配信、電子書籍。これらの消費税の扱いは、2つの定義語で決まります。「電気通信利用役務の提供」と「事業者向け電気通信利用役務の提供」です。似ていますが、別物です。

その前に、「国外事業者」の定義を押さえてください。消法2条1項4号の2It is.

国外事業者 所得税法……第二条第一項第五号(定義)に規定するNon-residentである個人事業者及び法人税法……第二条第四号(定義)に規定するforeign corporationをいう。

外国法人の日本支店は、その外国法人の一部なので、国外事業者として扱われます。一方、日本法人の海外支店は、その日本法人の一部であり、国外事業者ではありません。海外子会社は支店とは別です。日本の親会社とは別法人で、本店又は主たる事務所が国外にある海外子会社は外国法人に当たり、国外事業者です。以下の8号の4・8号の5は、いずれも「国外事業者が行う」ことを要件にしています。

電気通信利用役務の提供(消法2条1項8号の3)

電気通信利用役務の提供 資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物……の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話、電信その他の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除く。)であつて、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいう。

読むべき点が3つあります。

1. 著作物の提供は例示です。「その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供」が本体で、著作物の提供と利用許諾はその一例です

2. 通信の媒介は除かれます。電話・電信そのものは入りません。回線を「使って」提供する役務が対象で、回線を「貸す」役務は対象外です

3. 付随的な役務は除かれます。他の資産の譲渡等の結果の通知など、本体の取引に付随して行われるものは入りません

内外判定が「受ける側」で決まる

これがこの定義語の実質です。消費税法第4条第3項。

資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める場所が国内にあるかどうかにより行うものとする。

One資産の譲渡又は貸付けである場合 当該譲渡又は貸付けが行われる時において当該資産が所在していた場所……

Two役務の提供である場合(次号に掲げる場合を除く。) 当該役務の提供が行われた場所……

three電気通信利用役務の提供である場合 当該電気通信利用役務の提供を受ける者の住所若しくは居所(現在まで引き続いて一年以上居住する場所をいう。)又は本店若しくは主たる事務所の所在地

取引類型 内外判定の基準
資産の譲渡・貸付け 資産の所在地
一般の役務提供 役務の提供が行われた場所
電気通信利用役務の提供 役務の提供を受ける者の住所・居所・本店等の所在地

役務を提供した側がどこにいるかは関係ありません。受け手が日本にいれば国内取引です。国外事業者が日本の顧客に配信すれば、日本の消費税の対象になります。

3号には「居所」の定義括弧が入っており、「現在まで引き続いて一年以上居住する場所」とされています。

「事業者向け」は、さらに絞り込んだ別の定義(消法2条1項8号の4)

事業者向け電気通信利用役務の提供 国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいう。

要件が2つ増えています。

電気通信利用役務の提供 事業者向け電気通信利用役務の提供
提供者 誰でもよい(内国・国外を問わない) 国外事業者に限る
相手方 問わない 役務の性質又は取引条件等から通常事業者に限られる

「相手が事業者だった」では足りません。役務の性質又は取引条件等から、通常事業者に限られるものである必要があります。消費者向けと同じ条件のまま法人が買っただけでは、事業者向けにはなりません。

ただし「又は」です。性質としては消費者も使えるサービスでも、個別に取引条件を定めて提供している場合は、「取引条件等から通常事業者に限られる」に当たり得ます。サービスの種類だけで切らないでください。

3つ目の定義語 ── 特定資産の譲渡等

消法2条1項8号の2。

特定資産の譲渡等 事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供をいう。

「特定役務の提供」は8号の5で、「資産の譲渡等のうち、国外事業者が行う演劇その他の政令で定める役務の提供(電気通信利用役務の提供に該当するものを除く。)」です。その政令=消費税法施行令第2条の2(特定役務の提供の範囲)は、こう絞っています。

映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業として行う役務の提供のうち、国外事業者が他の事業者に対して行う役務の提供(当該国外事業者が不特定かつ多数の者に対して行う役務の提供を除く。)

海外アーティスト・スポーツ選手の招へいがこちらです。ただし不特定多数向け(一般公演の興行そのものなど)は除かれます。

この「特定資産の譲渡等」が、リバースチャージの入口になります。

どちらに当たるかで、納税義務者が変わる

Distinction 消費税を納めるのは
事業者向けでない電気通信利用役務の提供(消費者向け) 役務を提供した国外事業者(国内取引として自ら申告)
同上のうち、特定プラットフォーム事業者を介して対価を収受するもの その特定プラットフォーム事業者(消法15条の2)
事業者向け電気通信利用役務の提供 役務の提供を受けた事業者(リバースチャージ。国内・国外を問わない)

同じ「海外からのサービス」でも、納税義務者が変わります。

3行目は「国内事業者」とは限りません。消法5条1項の主語は「事業者」で、国内事業者に限定していません。4条4項ただし書は、国外事業者がPEで行う特定仕入れが国内で行われたものとされる場面を予定しています。詳しくは「リバースチャージ方式とは」で扱います。

プラットフォーム課税(消法15条の2)

条見出しは「(特定プラットフォーム事業者を介して行う電気通信利用役務の提供に関するこの法律の適用)」です。

国外事業者が国内において行う電気通信利用役務の提供(事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するものを除く。……)がデジタルプラットフォーム(……)を介して行われるものであつて、その対価について当該デジタルプラットフォームを提供する事業者……のうち同項の規定により国税庁長官の指定を受けた者(……「特定プラットフォーム事業者」という。)を介して収受するものである場合には、当該特定プラットフォーム事業者が当該電気通信利用役務の提供を行つたものとみなして、この法律の規定を適用する。

消費者向けのアプリストア・配信プラットフォーム経由の取引では、納税義務者が提供者ではなくプラットフォーム事業者になります。「国外事業者が自分で申告する」で止めると答えを間違えます。指定は国税庁長官が行います(同条2項)。

表示義務が課されている

消費税法第62条。条見出しは「(特定資産の譲渡等を行う事業者の義務)」です。

特定資産の譲渡等(国内において他の者が行う特定課税仕入れに該当するものに限る。)を行う事業者は、当該特定資産の譲渡等に際し、あらかじめ、当該特定課税仕入れを行う事業者が第五条第一項の規定により消費税を納める義務がある旨を表示しなければならない。

国外事業者の側に、表示義務があります。請求書や契約書に「リバースチャージ方式の対象」と書かれているのはこの条文によります。

ただし、表示がないから対象外、とはなりません。該当性は8号の4の定義で決まります。表示は義務であって要件ではありません。

Points that require care in practice

  • クラウドの利用料はどちらか。役務の性質・取引条件等から通常事業者に限られるかを見ます
  • 広告配信は。事業者しか申し込めない設計かどうかが分かれ目です
  • 海外SaaSの請求書に何も書かれていません。62条の表示義務違反であって、該当性の判断は別です
  • 国内事業者が海外の顧客に配信したら。4条3項3号により、受け手の所在地で判定します
  • 「居所」の1年はどう数えるのか。3号の括弧書きの定義によります
  • 通信そのものを売っている場合は。8号の3の括弧書きで除かれます

海外のサービスを買っている会社は、まず契約の一覧を作るところからです。どれが電気通信利用役務の提供で、どれが事業者向けか。ここで区分を誤ると、申告の形が変わります。海外SaaSの利用が増えている会社は、一度棚卸しをご相談ください。

Legal basis

  • 消費税法第2条第1項第8号の2(特定資産の譲渡等)・第8号の3(電気通信利用役務の提供)・第8号の4(事業者向け電気通信利用役務の提供)・第8号の5(特定役務の提供)
  • 消費税法第4条第3項(資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定)
  • 消費税法第5条第1項(納税義務者)
  • 消費税法第62条(特定資産の譲渡等を行う事業者の義務)
  • 消費税法第2条第1項第4号の2(国外事業者)
  • 消費税法第15条の2(特定プラットフォーム事業者を介して行う電気通信利用役務の提供に関するこの法律の適用)
  • 消費税法施行令第2条の2(特定役務の提供の範囲)

経過措置は本稿では扱っていません。個別の判定には契約の内容と提供条件の確認が必要です。

This article is a general explanation based on laws and regulations as of September 7, 2026. Please consult us about your individual circumstances before taking action.

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