Startup basics

Decide which businesses to grow and which to discontinue through budget-to-actual management.

数字を報告しても、配分が変わらなければ意味がない

「売上は計画の90%でした。来月は頑張ります」。予算と実績を比べる会議が、この報告で終わっていないでしょうか。予実管理で決めるべきなのは、次のお金と人をどこに使うかです。IPOやM&Aを目指す会社なら、成長を続ける事業と、役割を終えた事業を説明できるようにしたいものです。

日本政策金融公庫の経営改善計画の記入例も、計画との差を売上、材料費、外注費などに分け、原因と対応を記載する構成です。「未達」という結果から、変えられる原因まで下りていくことが出発点になります。

固定費は、売上が落ちても一緒には減らない

仕入れや販売手数料のように、販売量などに応じて増減する費用が変動費です。これに対し、事務所の賃料、固定給、月額のシステム利用料など、短期には売上の増減にかかわらず発生する費用が固定費です。費目名だけで決まるわけではなく、外注費でも月額保証があれば固定的な部分があり、人件費にも歩合など変動する部分があります。

固定費の怖さは、売上の予想が外れても、支払の約束は残ることです。採用、長期の賃貸契約、設備投資は、調子がよいときほど増やしやすい。しかし、売上が下がった翌月から、給与や賃料を同じ割合だけ減らせるわけではありません。契約期間、変更できる時期、解約に必要な費用まで確認する必要があります。

限界利益率は、固定費を支える力を示す

限界利益=売上高−変動費。限界利益率=限界利益÷売上高です。難しい名前ですが、売上から、その売上を得るために増えた費用を引き、固定費の支払と利益のためにいくら残るかを見るものです。

以下は全て月次の仮例です。売上1,000万円、変動費600万円なら限界利益400万円、限界利益率40%。固定費300万円を引くと利益100万円が残ります。固定費と変動費に全ての対象費用を分けた単純なモデルで、税金などは省略しています。

限界利益と、決算書の粗利益(売上総利益)は必ずしも一致しません。粗利益は売上から売上原価を引いた金額です。原価に固定的な工場人件費が含まれたり、販売管理費に売上連動の手数料が含まれたりするため、ここでは費用を改めて変動費・固定費に分けます。

利益がゼロになる売上を損益分岐点売上高といい、固定費÷限界利益率で求めます。算式は中小機構の損益分岐点の解説でも確認できます。この仮例では300万円÷40%=750万円。売上が750万円を下回ると赤字になります。変動費率が一定で、固定費が変わらない範囲での計算です。

売上が20%落ちると、利益が80%消える

月次・単位万円、仮例 計画 売上20%減 売上30%減
売上 1,000 800 700
変動費(売上の60%) 600 480 420
限界利益(売上の40%) 400 320 280
固定費 300 300 300
利益 100 20 −20

売上が20%減ると、利益は100万円から20万円へ、80%減ります。「売上が2割減っただけ」とは済みません。変動費は減っても固定費が残るため、売上減少が利益に大きく響くのです。反対に、同じ条件で売上が20%増えて1,200万円なら、利益は180万円になります。固定費は成長時の利益を伸ばす力にもなりますが、需要が下がったときには逆に働きます。

採用や契約の追加で固定費を月100万円増やすなら、限界利益率40%では、同じ利益を保つために100万円÷40%=月250万円の追加売上が必要です。限界利益率20%なら月500万円です。新しい固定費が発生する時期と、それに見合う売上が立つ時期を並べて確認します。

値引きにも注意が必要です。10万円の商品で変動費が6万円なら限界利益は4万円、率は40%。価格だけを9万円へ下げれば限界利益は3万円、率は約33.3%です。固定費300万円を賄う売上は、750万円から900万円へ上がります。固定費を増やしていなくても、限界利益率が下がれば、必要な売上は増えるのです。

赤字額だけでなく、支払を続けられる月数を見る

固定費の管理では、利益と現金も分けます。減価償却費は当月の支出とは限らず、借入元本の返済は費用ではなくても現金を減らします。売掛金の回収、在庫の仕入れ、税の支払によっても、赤字額と現金の減少額は違います。

例えば、売上500万円を同月に全額回収し、変動費300万円と固定的な支払300万円を同月に払い、ほかの入出金がないなら、毎月100万円ずつ現金が減ります。自由に使える現金が300万円なら、同じ状態を支えられるのは単純計算で3か月分です。ただし、月内の支払が入金に先行すれば、実際に資金不足になる日は早まります。次の調達や売上回復を期待するだけでは、支払期限は延びません。

ただし、全てを外注や従量課金へ変えればよいという話でもありません。固定費を抑える代わりに1件当たりの費用が増えれば、限界利益率は下がります。人材、設備、品質を社内に持つ価値もあります。固定費を増やす前に、売上未達のケース、限界利益率、毎月の現金、契約から戻れる時期を並べる。予実管理は、その判断を毎月更新するために行います。

まず、数量・単価・費用に分ける

以下の数字は全て仮例です。売上計画1,000万円に対して実績900万円でも、顧客数が予定より少ない場合と、値引きで単価が下がった場合では打ち手が違います。納品が翌月にずれただけなら、需要不足とは区別します。広告、採用、価格、工程のどこを変えるかを決めてから、次の見込みを作ります。

例えば計画を「100件を1件10万円で販売する」、1件当たりの変動費を6万円とします。売上から変動費を引いた限界利益は400万円です。90件しか売れず単価が10万円なら、この利益は360万円。100件売れても単価を9万円へ下げたなら300万円になります。どちらも売上900万円ですが、固定費を賄うために残る金額は違います。

この計算では、変動費の単価は一定、固定費も同じという仮定を置いています。値引きによって追加受注が増えたか、数量減少で仕入単価まで上がったかなど、実際の変化を確認したら、その条件を計算に加えます。「売上が100万円足りない」という報告だけでは、必要な改善策が見えない理由です。

さらに事業別に見るときは、費用の配り方に注意が必要です。本社の家賃や管理部門の費用を各事業に配分すると、赤字に見える事業が出ることがあります。しかし、その事業をやめても本社費が残るなら、配分後の赤字額がそのまま改善額になるわけではありません。

月次・単位万円、仮例 A事業 B事業
売上 600 500
売上に伴う変動費 300 350
停止すれば減らせる専属固定費 150 100
配分した本社共通費 100 100
配分後の事業利益 50 −50

Bをやめると売上500万円を失い、変動費350万円と専属固定費100万円が減ります。本社共通費が全額残るなら、全社利益は月50万円悪化します。「赤字事業を切れば利益が増える」とは、この例ではいえません。ここでは撤退費用はなく、他事業の売上や費用も変わらないと仮定しています。

残す判断にも、期限と条件を付ける

だからBを永久に残す、という話でもありません。担当者をAへ移せば、追加でいくら利益が増えるか。Bの設備を売却できるか。契約終了や顧客への引継ぎにいくら必要か。今後の現金の増減を、継続、縮小、撤退のそれぞれで比べます。会計上の費用が減る時期と、支払いが減る時期も同じとは限りません。

新規事業は、現在の赤字だけで止めると、将来の収益源まで失いかねません。東証の成長可能性の開示に関する留意事項は、先行投資について、投資の狙いと進捗に応じた継続判断の考え方を示すよう求めています。赤字を容認するなら、何を確かめるための支出かを明確にする必要があります。

例えば「今後3か月、追加支出の上限300万円で有料導入を試す。期間末に継続契約が5社に届かなければ、商品を変更するか終了する」と決めます。これも仮の基準です。業種ごとの検証期間に合わせ、途中で資金不足になる計画は避けます。過去に使った開発費を惜しむだけでは、次の支出の理由になりません。

期限が来たとき、結果だけで機械的に決めるのも避けたいところです。仮に有料契約が4社でも、残り1社の契約手続だけが遅れているのか、試した顧客の大半に購入を断られたのかで意味が違います。延長するなら、新しく分かった事実、追加で必要な金額、次の判定日を残します。「もう少し待てば」と期限だけを動かすこととは区別します。

伸ばす事業も、前月に黒字だったからというだけでは決めません。追加の担当者を採用した場合の売上見込みと人件費、教育期間を計画に入れ、その仕事を既存の人員で引き受ける案とも比べます。人を他事業へ移すなら、移した先にも給与が残るので、元の事業の人件費削減と二重に数えないようにします。

元の計画と、最新の見込みを両方残す

月次会議の最後に「何を増やすか、減らすか、誰がいつまでに実行するか」を残すことを勧めます。実績を見て将来の見込みは更新しますが、最初の予算を上書きして差を消してはいけません。予測が外れた原因と、その後の判断を追えることに意味があります。

翌月は、決めた施策を実行したか、その結果が数字に出たかを分けて確認します。営業先の変更をまだ行っていないなら、売上が伸びない理由を、その施策の失敗と評価することはできません。実行の遅れと、実行した仮説の外れを分けることで、会議が責任追及だけになるのを避けられます。

IPOでは投資家への説明に、M&Aでは買い手が事業を引き継ぐ判断に、この記録が使えます。続ける根拠も、やめる根拠も、社長の気分ではなく事業の数字で示す。予実管理を、そのための毎月の意思決定に変えてください。

This manuscript is a general explanation based on laws and regulations as of September 9, 2026. Please obtain advice on your individual circumstances before taking action.

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