暗号資産の税務

暗号資産FAQの改訂史 ― 平成29年から令和7年までの10版
暗号資産FAQの歴代の資料を比較し改訂の歴史をたどる切り絵

この記事の位置づけ

国税庁は、暗号資産の税金の取扱いをまとめた文書を、平成29年12月から令和7年12月までに10回公表しています。一般に「暗号資産FAQ」と呼ばれている資料です。この記事は、その10版がいつ・何を変えてきたのかを一覧するためのものです。

形の上で、少し注意の要るところがあります。各版は「情報」という事務連絡の形式で出されていて、その別添として「FAQ」が付いています。そのため、国税庁の索引ページに並ぶリンクの文言は「…(情報)」で終わり、PDF内の別添の表題は「…(FAQ)」となっています。この記事では、索引ページのリンク文言のほうを表題として扱います。

版を追う意味は2つあります。1つは、問の番号が版によってずれることです。手元の資料が「問30」を引いていても、それがどの版の30なのかで中身が変わります。もう1つは、過去の年分をあとから検討するときに、その時点で国税庁が何を書いていたかが手掛かりになることです。

暗号資産の税金そのものの全体像は暗号資産の税金、何を見ればいいのかで扱っています。

骨格

公表日 表題(索引ページのリンク文言) 問の数 この版の主な変化
平成29年12月1日 仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報) 9 初版です。税目別の章立てはなく、1〜9の通し番号を付けた9つの問が並びます。
平成30年11月21日 仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報) 21 税目別の章立てが入り、通し番号は1〜21へ増えました。相続税・贈与税、源泉所得税、消費税、法定調書の各関係が加わります。
令和元年12月20日 仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報) 32 法人税関係が独立した章として立ちました。所得税関係も8問から13問に増えています。
令和2年12月18日 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報) 32 問の数と構成は前の版と同じで、用語が「仮想通貨」から「暗号資産」に置き換わりました。
令和3年6月30日 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報) 33 消費税関係に「30 暗号資産の貸付けにおける利用料」が加わりました。10版のうち、年の途中に公表されたのはこの版だけです。
令和3年12月22日 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報) 33 6と25の見出しが変わりました。問の数は動いていません。
令和4年12月22日 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報) 34 番号が通し番号から章番号-枝番に変わりました。「1-7 非居住者又は外国法人が行う暗号資産取引」が加わります。
令和5年12月25日 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報) 45 法人税関係が暗号資産関係と電子決済手段関係に分かれ、11問増えました。目次の各行に更新・追加の注記が入ります。
令和6年12月20日 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報) 47 「1-4 暗号資産による寄附を行った場合」と「3-1-11 特定譲渡制限付暗号資産に該当する暗号資産」が加わり、以降の番号が繰り下がりました。
令和7年12月26日 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和7年12月) 47 索引ページのリンク文言に「等」が付きました。PDFの表題には令和5年・令和6年版にも「等」があります。今回の更新の注記が付いた問は2-2の1問だけです。

10版を通して問はどう増えたのか

問の数を公表の順に並べると、9、21、32、32、33、33、34、45、47、47となります。初版の9問から、最新版の47問へ。5倍以上になりました。

ただし、増え方は一定ではありません。初版の後の9回の改訂のうち、問が10問以上増えたのは3回です。残りの回の増加は0〜2問で、令和6年12月版では45問から47問へ2問増えました。

大きく増えた版 問の数の動き 増えた中身
平成30年11月21日版 9問から21問へ 相続税・贈与税関係、源泉所得税関係、消費税関係、法定調書関係の章が並び、扱う税目そのものが広がりました。
令和元年12月20日版 21問から32問へ 法人税関係が独立した章になり、6問が立ちました。所得税関係も8問から13問になっています。
令和5年12月25日版 34問から45問へ 法人税関係が「3-1 暗号資産関係」と「3-2 電子決済手段関係」に分かれ、前者に7問、後者に4問が加わりました。

逆に、問の数がまったく動かなかった版も3回あります。令和2年12月版、令和3年12月版、令和7年12月版です。数が動かない版でも、中では何かが変わっています。令和2年12月版では用語が入れ替わり、令和3年12月版では2つの見出しが書き換えられ、令和7年12月版では1問に更新の注記が付きました。問の数だけを見ていると、版の違いを見落とします。

章立てと番号の付け方はどう変わったか

10版を追うと、税目別の章立てを加えた変更と、通し番号を章番号・枝番へ変えた変更を分けて見ることができます。

初版の平成29年12月版にも、1から9までの通し番号があります。税目別の章立てが加わるのが、2版目の平成30年11月版です。≪所得税・法人税共通関係≫のような章の区切りが入り、問は1から21までの通し番号で並ぶ形になりました。

通し番号を章番号と枝番の組合せへ変えたのが、7版目の令和4年12月版です。1-1から1-7が所得税・法人税共通関係、2-1から2-13が所得税関係、3-1から3-6が法人税関係、4-1と4-2が相続税・贈与税関係、5-1が源泉所得税関係、6-1と6-2が消費税関係、7-1から7-3が法定調書関係です。

この形は、翌年もう一段深くなります。令和5年12月版で法人税関係が2つに分かれたため、3-1-1のように数字が3つ並ぶ番号が現れました。

結果として、同じ見出しの問が、版ごとに違う番号を持つことになります。

  • 「財産債務調書への記載の要否」は、平成30年11月版では19、令和元年12月版と令和2年12月版では30、令和3年の2つの版では31、最新版では7-1です。
  • 「暗号資産の貸付けにおける利用料」は、新設された令和3年6月版では30、最新版では6-2です。
  • 「暗号資産を低額(無償)譲渡等した場合の取扱い」は、令和3年6月版では16、最新版では2-10です。

古い解説記事が問番号だけを引いている場合、それがどの版の番号かを確かめないと、別の問に行き着くことがあります。

用語が変わったのは1度だけ

表題に使われている語は、令和2年12月版を境に「仮想通貨」から「暗号資産」に変わりました。10版を通して、この入れ替わりは1回だけです。初版から令和元年12月版までの3版が「仮想通貨」、令和2年12月版から最新版までの7版が「暗号資産」です。

この入れ替わりの背景は、税制改正の側にあります。令和2年度の税制改正の大綱(令和元年12月20日閣議決定)に、初めて「暗号資産」という語が現れます。ただし、この大綱の中には「仮想通貨」という語も残っています。資金決済法等改正法の施行に伴うもので、大綱には「暗号資産デリバティブ取引に係る雑所得等」という書き方が現れています。

日付を見比べると、順序が分かります。令和2年度の大綱が閣議決定された令和元年12月20日は、FAQの3版目が公表された日と同じ日です。ところが、その3版目の表題は「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報)」のままでした。大綱の言葉が変わってから、FAQの言葉が変わるまでに1年かかっています。

なお、索引ページのリンク文言には令和7年12月版から「等」がありますが、PDFそのものの表題には令和5年・令和6年版にも「等」があります。索引の表記とPDF内の表題を混ぜないことが必要です。暗号資産という語が税法上どう定義されているかは、税法は「暗号資産」をどう定義しているのかで扱っています。

税制改正があった年と、無かった年で改訂はどう違うのか

税制改正の大綱に「仮想通貨」または「暗号資産」の語が出てくる年度と、出てこない年度があります。平成30年度、令和3年度、令和4年度の大綱には、どちらの語も1回も現れません。令和7年度の大綱についても、確認できた範囲(一 個人所得課税と七 納税環境整備の2章)には記載がありませんでした。

大綱に記載があった年度の翌年の版では、法人税関係の問が増えています。

  • 平成31年度の大綱は、法人が事業年度末に有する仮想通貨のうち活発な市場が存在するものについて時価評価により評価損益を計上することなどを定めました。これに対応して、令和元年12月版で法人税関係の章が立ちました。この時価評価の枠組みは法人は、持っているだけで課税されるのかで扱っています。
  • 令和5年度の大綱は、自己が発行し発行の時から継続して保有し、かつ譲渡制限が行われている暗号資産を、時価評価の対象から除外することを定めました。令和5年12月版で「3-1-9 特定自己発行暗号資産に該当する暗号資産」が新設されています。
  • 令和6年度の大綱は、譲渡についての制限その他の条件が付されている市場暗号資産について、原価法と時価法から選定できることなどを定めました。令和6年12月版で「3-1-11 特定譲渡制限付暗号資産に該当する暗号資産」が新設されています。

一方、大綱に記載がなかった年に出た版は、動きが小さくなります。令和3年6月版と令和3年12月版、令和4年12月版がそれに当たり、問の数は33、33、34でした。ただし、令和4年12月版はこの間に番号体系を組み替えています。法令が動かない年の改訂は、問を増やす方向ではなく、見出しの言い換えや構成の整理に向かっています。

最新の令和7年12月版は、令和8年度の大綱が閣議決定された令和7年12月26日と同じ日に公表されました。この版で更新の注記が付いた問は、2-2の1問だけです。大綱の内容が織り込まれているかどうかは、この記事では確認していません。

実務で迷いが生じるところ

  • 問の数が同じ版が3組あります。32問(令和元年12月版と令和2年12月版)、33問(令和3年6月版と令和3年12月版)、47問(令和6年12月版と令和7年12月版)です。数だけでは見分けが付きません。
  • 32問どうしは、用語で見分けられます。「仮想通貨」と書いてあれば令和元年12月版です。
  • 33問どうしは、6の見出しで見分けられます。「マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合」となっていれば令和3年12月版です。
  • 47問の2版は、PDF冒頭の公表日で見分けます。令和6年12月20日版と令和7年12月26日版です。どちらもPDFの表題に「等」があるため、その有無だけでは区別できません。
  • 令和3年だけは、1年のうちに2版が公表されています。「令和3年版」という言い方では、6月30日版と12月22日版のどちらを指すのかが決まりません。
  • 令和5年12月版から、目次の各行に〔令和○年○月更新〕〔令和○年○月追加〕という注記が入っています。最新版の目次を開けば、どの問がいつ動いたかを1画面で確認できます。それ以前の版には、この注記がありません。
  • 過去分のPDFは、最新版の索引ページではなく過去分のページに置かれています。リンクは下の出典に挙げました。

各版の中身は、それぞれの記事で扱っています。所得区分の考え方は個人の暗号資産の所得は、どの所得に入るのかをご覧ください。

出典

  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和7年12月)」(令和7年12月26日) PDF
  • 国税庁「過去分の情報(暗号資産関係)」 一覧

補足の根拠・出典

上記資料の確認日:2026年9月7日。

本稿は2026年9月7日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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