暗号資産の税務

令和7年12月版の暗号資産FAQ ― 更新されたのは2-2の1問だけ

この版の位置づけ

令和7年12月26日、国税庁は「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しました。平成29年12月の初版から数えて10番目の版であり、これが現在の最新版です。全文は国税庁のPDFで読めますので、手元に開いてお確かめいただけます。

問の数は47問です。前の版である令和6年12月20日版と同じ数で、章立ても、問の番号の並びも変わっていません。

そして、目次に付いた注記のうち〔令和7年12月更新〕が付いているのは、2-2 暗号資産取引の所得区分の1問だけです。10回の公表を並べて見たとき、この版は最も変化の小さい改訂にあたります。

骨格

前の版からの変化 内容
公表日 令和7年12月26日です。前の版の令和6年12月20日から、ほぼ1年ぶりの改訂になります。
表題 索引ページのリンク文言が「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」となり、前の版までになかった「等」が付きました。
問の数 47問です。前の版と同じで、増えても減ってもいません。
章立て 1から7までの7章の構成は変わっていません。番号の繰り上がり・繰り下がりも起きていません。
更新の注記 〔令和7年12月更新〕が付いているのは、2-2 暗号資産取引の所得区分の1問だけです。
更新の中身 その2-2のどこがどう変わったのかは、確認できていません。前の版と読み比べる必要があります。
税制改正 令和7年度税制改正の大綱の「一 個人所得課税」と「七 納税環境整備」には、「暗号資産」の記載がありません。確認したのは、この2章だけです。

更新された問は、どこにあるのか

令和5年12月版から、目次の各行の末尾に〔令和○年○月更新〕〔令和○年○月追加〕という注記が入るようになりました。どの問がいつ手を入れられたのかが、目次を見るだけで分かる形です。

最新版の47問のうち、〔令和7年12月更新〕が付いているのは次の1問です。

  • 2-2 暗号資産取引の所得区分

残りの46問には、令和2年12月から令和6年12月までのいずれかの注記が付いたままになっています。たとえば法人税関係の3-1-2から3-1-8までは〔令和6年12月更新〕、電子決済手段関係の3-2-1から3-2-4までは〔令和5年12月追加〕のままです。

ここで気をつけていただきたいのは、この注記が示しているのは「いつ手が入ったか」であって、「何が変わったか」ではない、という点です。2-2について、前の版と比べてどの語がどう書き換わったのかは、目次からは読み取れません。それを確かめるには、令和6年12月版の2-2と令和7年12月版の2-2を並べて読み比べる必要があります。当事務所では、その読み比べまでは行っていません。この記事でお伝えできるのは、更新された問が2-2の1問だけであるところまでです。

2-2 暗号資産取引の所得区分には、何が書かれているのか

更新された1問が何を扱っている問なのかは、確かめておく価値があります。2-2は、暗号資産の取引で出た利益がどの所得に入るのかを示す問です。個人の方にとっては、暗号資産FAQ全体の中でも入口にあたるところになります。

原則は、次のように書かれています。

「暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。」

そのうえで、収入金額が一定の額を超える場合の扱いが続きます。「その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合には」という書き出しで、帳簿書類の保存があるかないかによって、次のように分かれます。

  • 「暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合・・・原則として、事業所得」に区分されます。
  • 「暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合・・・原則として、雑所得(業務に係る雑所得)」に区分されます。

つまり、300万円という収入金額の線と、帳簿書類を保存しているかどうかという2つの条件で、行き先が分かれる構造になっています。同じ取引をしていても、帳簿書類を残しているかどうかで区分が変わりますので、記録の残し方そのものが所得区分にかかわってくるということです。所得区分の考え方そのものは、個人の暗号資産の所得は、どの所得に入るのかで扱っています。

表題に付いた「等」は、何を指しているのか

この版でもう一つ目に付くのが、国税庁の索引ページに並んでいるリンクの文言です。前の版までは「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」でしたが、この版は「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」となっていて、「暗号資産」のうしろに「等」が付きました。

問の数も章立ても変わっていませんので、この「等」は、新しい問が加わったことを示すものではありません。手がかりになるのは、2年前の令和5年12月版です。

令和5年12月版で、法人税関係が「3-1 暗号資産関係」と「3-2 電子決済手段関係」の2つに分かれ、3-2として電子決済手段の4問が新設されました。電子決済手段は、暗号資産とは別の枠組みで扱われるものです。それを扱う章が立った時点で、この資料は暗号資産だけを扱う資料ではなくなっていました。その様子は、令和5年12月版の回で扱っています。

表題に「等」が付いたことが電子決済手段を指しているのかどうかまでは、確認できていません。ただ、中身のほうは2年前から「暗号資産だけではない」形になっていて、表題がそれに追いついた形に見えます。

47問は、どの章にどう配られているのか

この版は変化が小さい版ですので、かえって全体像を確かめるのに向いています。章ごとの問の数は、次のとおりです。

問の数 問番号
1 所得税・法人税共通関係 8問 1-1から1-8まで
2 所得税関係 13問 2-1から2-13まで
3 法人税関係 18問 3-1-1から3-1-14まで、3-2-1から3-2-4まで
4 相続税・贈与税関係 2問 4-1、4-2
5 源泉所得税関係 1問 5-1
6 消費税関係 2問 6-1、6-2
7 法定調書関係 3問 7-1から7-3まで
合計 47問

47問のうち18問、およそ4割が法人税関係です。これは令和5年12月版と令和6年12月版の2回の改訂で、法人税関係にまとめて問が足された結果です。個人の方が読むところは、1章と2章の21問と、相続・贈与を扱う4章の2問が中心になります。

この改訂に税制改正は伴っていたのか

この版に反映されうるのは、令和7年度の税制改正です。その大綱について当事務所が確認したのは「一 個人所得課税」と「七 納税環境整備」の2章で、この2章には「暗号資産」の記載がありませんでした。他の章は確認していません。前の版と問の数も章立ても変わらなかったことと、あわせて読める事実です。

一方で、この版が公表された令和7年12月26日は、令和8年度税制改正の大綱が閣議決定された日でもあります。この大綱には、申告分離課税20%への移行、損失の3年繰越、支払調書などが盛り込まれています。暗号資産の課税の枠組みそのものにかかわる内容です。

ただし、その大綱に書かれた見直しが、この版のどこにどう反映されているのかは確認できていません。確かなのは、この版の目次で〔令和7年12月更新〕が付いているのが2-2の1問だけである、というところまでです。大綱の内容がFAQのどの問に現れてくるのかは、次の版以降を見ていくことになります。改訂の全体像は暗号資産FAQ改訂史に、直前の版は令和6年12月版の回にまとめています。税制そのものの成り立ちは暗号資産税制はこうしてできたで扱っています。

実務で迷いが生じるところ

  • 2-2が更新されたことは分かっても、どこがどう変わったのかは目次からは分かりません。ご自身の申告に効いてくる論点かどうかを確かめたい場合は、令和6年12月版と令和7年12月版の2-2を並べて読み比べていただく必要があります。
  • 収入金額が300万円を超えるかどうかは、利益ではなく収入金額で見ます。売却代金の合計と、手元に残った利益とを取り違えると、分岐する場所を見誤ります。
  • 帳簿書類の保存があるかないかで区分が分かれますので、申告の直前に記録をまとめようとしても間に合わない場合があります。年の途中から記録を残し始めた場合にどう扱われるのかは、この問の見出しからは読み取れません。
  • 索引ページの表題に「等」が付いたことで、電子決済手段を扱う資料を別に探す必要があると考えてしまう場合があります。電子決済手段の問は、令和5年12月版から同じ資料の3-2に入っています。
  • この版は変化が小さい版ですが、それは「読まなくてよい版」という意味ではありません。ご自身が使う問に付いている注記が令和2年12月のままなのか令和6年12月なのかで、参照すべき版は変わってきます。

出典

  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」(令和7年12月26日) PDF
  • 国税庁「過去分の情報(暗号資産関係)」 一覧

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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