暗号資産の税務

令和3年12月版の暗号資産FAQ、ステーキングとレンディングが入る

この版の位置づけ

令和3年12月22日、国税庁は「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」を公表しました。暗号資産FAQとしては6番目の版にあたります。前の版が公表されたのは同じ年の6月30日ですから、間隔は半年に満たない改訂です。

問の数は33問です。半年前の令和3年6月30日版と同じ数で、≪所得税・法人税共通関係≫から≪法定調書関係≫までの章立ても変わっていません。前の版からの変化は、2つの問の見出しだけです。

ただし、そのうちの1つは、見出しが変わっただけとは言いにくい変化を含んでいます。マイニングだけを想定していた問が、ステーキングとレンディングまで受け止める問に広がりました。この記事は、その1問を読むためのものです。

骨格

前の版からの変化 内容
問の数 33問のままです。増えても減ってもいません。
章立て 変わっていません。番号の繰り上がり・繰り下がりも起きていません。
変わった見出し(1つ目) 問6が「暗号資産をマイニングにより取得した場合」から「マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合」になりました。
変わった見出し(2つ目) 問25が「暗号資産信用取引に係る期末みなし決済損益」から「暗号資産信用取引に係るみなし決済損益額」になりました。
直前の版との関係 令和3年6月30日版は、消費税関係に問30「暗号資産の貸付けにおける利用料」を新設した版です。
税制改正 伴っていません。令和3年度・令和4年度の税制改正の大綱には「仮想通貨」「暗号資産」の語が1回も現れません。

問6の見出しは、何から何に変わったのか

変わる前の見出しは「暗号資産をマイニングにより取得した場合」でした。変わったあとの見出しは「マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合」です。

この2つを並べると、変わったところが3つあります。

  • 取得の手段が1つから3つになりました。マイニングに、ステーキングとレンディングが加わっています。
  • 「など」という語が入りました。3つを挙げて閉じる書き方ではなく、挙げたもののほかにもある、という書き方になっています。
  • 語の順序が入れ替わりました。前の見出しは「暗号資産を」で始まり、取得の手段は途中に置かれていました。あとの見出しは取得の手段が先に来て、「暗号資産を取得した場合」が後ろに回っています。見出しの主題が、暗号資産そのものから、取得の入口のほうへ移った形です。

ステーキングは、暗号資産を保有したまま預け入れ、その見返りとして報酬を受け取る形です。レンディングは、暗号資産を貸し付けて、その利用料を受け取る形です。どちらも、暗号資産を手放して対価を受け取るのではなく、持ち続けたまま、あるいは返してもらう約束のもとで、新たに暗号資産が増える点が共通しています。

この問は≪所得税・法人税共通関係≫に置かれています。個人にも法人にも共通してかかわる入口の問が、この改訂で広がったということです。マイニングで取得した場合の考え方そのものは、マイニング等で暗号資産を取得したときにまとめています。

買ったのでも、自分で発行したのでもない取得が増えたということ

暗号資産が手元に増える道筋は、大きく3つに分けて考えられてきました。買って手に入れた場合、自分で発行した場合、そのどちらでもない場合です。取得価額の決め方も、この3つの区分に沿って組み立てられています。詳しくは個人が持つ暗号資産の取得価額は、どう決まるのかをご覧ください。

マイニングも、ステーキングも、レンディングも、この3つ目に入ります。誰かから買ったわけではなく、自分で発行したわけでもないのに、暗号資産が増えます。この版より前の問6は、その3つ目の入口のうち、マイニングという1つの形だけを見出しに掲げていました。

この改訂で起きたのは、その3つ目の入口に、名前の付いた形が2つ増えたということです。しかも「など」が入っていますから、名前が挙がっていない形もこの問が受け止める構えになっています。暗号資産の増え方が、売買と発行だけでは説明しきれないところまで広がっていた、という事実が見出しに現れた版だと読めます。

半年前の改訂と、どうつながっているのか

この版の1つ前、令和3年6月30日版で新設されたのは、消費税関係の問30「暗号資産の貸付けにおける利用料」でした。貸し付けて利用料を受け取る、というレンディングの形が、まず消費税の側から問として立てられたことになります。

そして半年後のこの版で、所得税・法人税共通関係の問6が、ステーキングとレンディングを見出しに載せました。貸して増えるという同じ場面を、消費税の側から扱った半年後に、所得の側から扱った、という順序で読めます。

暗号資産を譲渡した場合の消費税については、暗号資産を売っても消費税はかからないで扱っています。令和3年の2回の改訂は、この2本立てのどちらにも手が入った年だった、という見方ができます。

問25の見出しの変化は、扱いを変えたのか

もう1つの変化は、法人税関係の問25です。「暗号資産信用取引に係る期末みなし決済損益」から「暗号資産信用取引に係るみなし決済損益額」になりました。

落ちたのは「期末」で、付いたのは「額」です。「期末」を落として「額」を付けたことで、見出しは、いつの時点かを示す語を外し、計算して出てくるものが金額であることを示す語を加えた形になりました。用語の整理であって、扱いそのものを変える改訂ではありません。信用取引の考え方は、暗号資産の信用取引で扱っています。

なお、最新の令和7年12月版の目次で〔令和3年12月更新〕の注記が付いているのは、1-7と3-1-13の2問です。1-7は問6が番号体系の変更を経て移った先ですが、3-1-13は「暗号資産信用取引の譲渡損益の計上時期」であり、みなし決済損益額の問(3-1-14)には別の年の注記が付いています。この注記と、この版で見出しが変わった2問との対応関係までは、確認できていません。

この改訂に税制改正は伴っていたのか

伴っていません。税制改正の大綱を平成22年度から順に見ていくと、「仮想通貨」「暗号資産」の語が1回も現れない年度があります。令和3年度と令和4年度は、そのどちらも語が現れない年度です。

つまり、この改訂は、法令が変わったことを受けて問を書き換えたものではありません。法令の側は動いていないのに、実際に起きている取引の形のほうが先に増えていて、その増えた形を既にある問で受け止めた、という改訂です。

暗号資産FAQには、税制改正を受けて大きく組み替わる版と、そうでない版があります。改訂の全体像は暗号資産FAQ改訂史に、直前の版は令和3年6月版にまとめています。次の令和4年12月版では、問の通し番号が章番号と枝番の組み合わせに変わり、番号の見え方が大きく変わります。

実務で迷いが生じるところ

  • ステーキングやレンディングで受け取った暗号資産について、いつの時点の価額で考えるのかは、受け取った日を特定できるかどうかにかかってきます。取引所の履歴に報酬の付与日が残っているかを、先に確かめておく必要があります。
  • 報酬が日々こまかく付与される形の場合、1件ずつの記録が膨大になります。年間取引報告書に載る形で受け取っているのか、自分で記録を残す必要があるのかで、手間がまったく違ってきます。
  • 「など」に何が入るのかは、見出しからは読み取れません。名前の付いていない新しい形で暗号資産を受け取ったときは、マイニング・ステーキング・レンディングのどれに近い形なのかを、契約の中身から整理しておくことになります。
  • レンディングは、所得の側と消費税の側で別々の問が立っています。片方だけを見て済ませると、もう片方の検討が抜けます。
  • 問25の見出しの変化は用語の整理ですが、法人が期末に持っている未決済の信用取引をどう扱うかという論点そのものは残っています。見出しが変わったことと、扱いが変わったことを取り違えないようにする必要があります。

出典

  • 国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」(令和3年12月22日) PDF
  • 国税庁「過去分の情報(暗号資産関係)」 一覧

本稿は2026年9月6日時点の法令に基づく一般的な解説です。実行の前に必ず個別にご相談ください。

記載には注意を払っていますが、誤りにお気づきの際はお問い合わせよりご一報いただけると幸いです。

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